犬・猫・人に共通する『血液』 その働きとは?

皆さんが『血液』と聞いてイメージするものはなんでしょうか。健康診断で検査をしたり、献血であったり、最近では血液を題材にした漫画やアニメの印象が強い方もいるかと思います。

今回は血液とはどういったもので何をしているのかをお話したいと思います。

血液とは?

血液は、以下の役割を担っています。

・全身を循環し酸素や栄養素、水分の運搬

・二酸化炭素や老廃物の回収

・体温調節

・ホルモンや酵素の運搬による臓器間の情報伝達

・免疫

これらの働きを血液中の細胞で役割を分担しながら体を正常に保っています。

では、血液がどのようにして全身を回っているかを解説します。

➀心臓の左心室から送り出された赤血球は脳に行く血管と下半身に向かっていく血管に分かれます。

②小腸の壁を通り栄養分を吸収します。あるいは色々な臓器で出来た老廃物を腎臓に送り、尿として体外に排泄します。また肝臓を通ってアンモニアなどの有毒な物質や薬剤を中和し、産生されたたんぱく質などを受け取ります。

③心臓に戻る時には二酸化炭素や老廃物を取り込んでから心臓に戻ります。

④心臓の右心房に戻ると右心室を通って肺へ行きます。取り込んでいた二酸化炭素と酸素を交換し心臓の左心房から左心室を通ってまた全身を循環します。

血液の成分とは?

血液の成分は血球と血漿にわけることが出来ます。

血液中の35~65%が赤血球や白血球、血小板などの細胞成分である血球成分で構成され、それ以外の45~65%が水分やタンパク質や酵素、ミネラルなどが溶けた液体成分を「血漿」といいます。

 

次に血球の種類について詳しく説明します。

(1)赤血球

赤血球は血液検査ではRBCと表記されています。骨髄で生まれ、血管を通って酸素や栄養を全身に運ぶこと役割を担っています。

形態的な特徴として真ん中がくぼんでいる赤い細胞で、細胞の核がないため真ん中がくぼんでいます。このため表面積が大きくなり、より多くの酸素を運ぶことができるようになっています。

赤い色の理由は鉄を含むヘモグロビンという赤い色素が含まれており、これと繋げることで酸素を運んでいます。

またカブトガニやイカは赤くない血液を持つ動物です。ヘモグロビンの代わりに銅を含むヘモシアニンという青色の色素を持ち青い血液で、赤い血液と違い医療に役立つ特性があります。

(2)白血球

白血球は血液検査ではWBCと表記され、たくさんの種類があります。赤血球と同じく骨髄で生まれ、血管やリンパ管などで協力し身体を守っています。この身体を守る機能を「免疫」といいます。死んでしまった血球は身体の表面の傷ではかさぶたになります。

また血液検査では身体の中で免疫が起きている時に上昇するため、その程度や何から守っているのかを判断する数値になります。

白血球の種類についても解説します。

『好中球』

白血球の中では一番数が多く全体数の40~70%を占めます。体内に異物が侵入した場合、いち早く対処をしてくれています。

血液検査で好中球が高い場合は? 比較的急激な感染を起こしており、主に細菌感染を疑います。

『好酸球』

白血球中0∼5%を占めます。主に寄生虫除去やアレルギー反応に関わっています。

血液検査で好酸球が高い場合は? 寄生虫感染やアレルギーを起こすもの(ハウスダストや花粉)を起こしている可能性があります。

『好塩基球』

白血球中0∼2%を占めます。主に即時型アレルギー反応に関わっています。

血液検査で好塩基球が高い場合は? 一般的にはほぼ見られないケースが多いので、見られた場合にはかゆみなどのアレルギー症状や一部の骨髄の病気が疑われます。

『単球』

白血球中2∼10%を占めます。白血球の中で最も大きい細胞で、血液中から組織内に入るとマクロファージになり、強い貪食機能を持ちます。

血液検査で単球が高い場合は? 持続的な炎症や壊死、感染症を起こしている可能性があります。

『リンパ球』

成長の違いからBリンパ球、Tリンパ球、それ以外の未成熟なリンパ球に分けられます。抗原物質が侵入するとBリンパ球とTリンパ球が協力して攻撃し無毒化します。

血液検査でリンパ球が高い場合は? 慢性的な炎症で主に上昇しますが、一部の腫瘍などでも異常にあがることがあります。また、猫の場合は過度なストレスがかかると一時的に上昇することがあります。

★免疫とは

先ほど白血球は分担して免疫を行っている、とお話しましたが具体的に『免疫』とはなんでしょうか。

端的に言えば「体内に侵入してきた異物への防御機能」です。侵入してきた異物をまず好中球が攻撃します。また他の白血球と協力するために、異物が何であるのかを伝えることができます。これを抗原提示、ここまでの仕組み全体を自然免疫と言います。

この知らせを受けてリンパ球が動き出します。過去に似た異物が来ていればそれに対応した抗体をもって異物のいる所に向かいます。新規の異物であれば記録も行います。これを獲得免疫と言います。ワクチンを打つことで免疫が獲得できるのはこのためです。ワクチンを打つと具合が悪くなることがありますがこれは体内で白血球が免疫を獲得するために頑張ってくれているからなのです。

(3)血小板

血小板は血液検査ではPLTと表記されています。フィブリンという物質を使うことで止血を行います。核を持たない小さな細胞です。大きな細胞から分離して生まれ、血小板になります。

★止血機能

止血とは血管が破れたときにその傷口をふさぐための機能です。血が止まる仕組みは「一次止血」と「二次止血」に分けられます。

『一次止血』

血管が破けると血管が収縮して傷口を小さくします。次に血液中の血小板が集まり、のりの様に働くタンパク質で繋がることで傷口をふさぎます。

『二次止血』

血小板のみの血栓ではもろくすぐに壊れてしまいます。そこで一次止血に引き続き、ネットの役割のたんぱく質の膜が血栓全体を覆い固めて止血が完了します。

 

(4)血漿

次は液体成分である『血漿』について紹介します。血漿の中には、以下の成分が含まれます。

・水

・たんぱく質

・酵素

・ミネラル

・栄養素

ここでのたんぱく質は血小板が止血を行う時に使用しているのりやネットの役割を持つものや、体内の浸透圧を保つ機能を持つもの、免疫の助けになるものなどがあります。

 

☆くじらやいるかが長時間潜っていられるわけ☆

くじらやいるかなど海に生息する哺乳類の中には1時間以上潜水できる種がいます。人と同じ肺呼吸なのになぜでしょうか。理由は酸素を筋肉中に貯めておくことができ、血液中の酸素が足りなくなれば放出されるためです。貯めておくのはミオグロビンというタンパク質で人の筋肉中にも存在しています。くじらやいるかの筋肉中には人より多くのミオグロビンが存在しています。また酸素を多く取り込む他にも、心拍数を下げたり、組織への血液量を少なくすることで酸素の消費を抑え長時間の潜水ができる種もいます。

 

簡単に血液の話をしましたがいかがでしたか?中学校の理科や高校の生物のイメージもあり難しそう、と思う方も多いと思います。言葉を話せない犬や猫にとって全身状態の把握に血液検査は重要です。今回の記事で少しでも理解して頂ければ、興味をもって頂ければ幸いです。

この記事を書いた人

鈴木 唯奈(動物看護助手)
ご家族と他愛のない世間話をするのが好き。特にゲームの話題になるとマシンガントークが炸裂する。一緒に暮らしている猫2匹は元保護猫でスタッフの縁でお迎え。子猫の頃に比べると大きく成長したが、甘えん坊な性格は変わらず。HPに載せている画像にもたまに登場している。