心臓病の症状 ~失神~

心臓病は呼吸が苦しくなるだけではありません。

急にふらついたり、倒れてしまう失神があります。

心原性の失神は、循環不全により脳への血流が一過性に途絶えてしまうこと(脳虚血)で発生します。

 

<原因>

心原性の失神は、不整脈によって起こる場合と不整脈以外によって起こる場合があります。

不整脈によって失神が起こる場合は、心拍がゆっくり過ぎて血液の拍出が不十分だったり(徐脈)、心拍が早すぎて心臓に本来拍出されるべき量の血液を貯める時間が不足してしまうため血液の拍出が不十分になってしまったり(頻脈)して脳の虚血が起こってしまうことで発生します。

不整脈以外で心原性失神が起こる場合は心臓の器質的疾患(構造異常がある)や心肺疾患が考えられます。

心臓の弁が狭窄してしまい血流障害を起こしてしまう弁の狭窄疾患、不整脈を誘発してしまう心筋症、心臓の拡張が妨げられてしまい循環不全を起こす心タンポナーデなどが挙げられます。

また肺疾患が絡んでくる肺塞栓症や肺高血圧症によっても発生します。

・正常な心電図

 

・洞機能不全症候群の心電図の一部

刺激伝導系のスタート地点の洞結節からの電気信号が途絶えて血液の拍出が不十分になり脳虚血が起こり失神する。

 

<症状>

失神は一過性に意識の低下や消失を伴って姿勢を維持できなくなる状態で、自然にそして完全に意識の回復がみられます。

その程度は色々で、身体がふらつくだけの場合、身体の力が脱けてしまうような場合、パタッと倒れてしまう場合もあります。

そのほか、倒れてから痙攣を起こす場合もあります。

一般的には、回復は速やかです。

 

<治療>

不整脈が原因の場合は抗不整脈薬を用いた内科療法で治療をしていきますが、徐脈性不整脈では内科療法で効果が乏しい場合も多く、その場合はペースメーカーの埋込が適応になります。

不整脈以外が原因の場合、その原因疾患の治療と必要に応じて抗不整脈薬を併用します。

 

<見通し>

不整脈の種類や原因となった心臓疾患の重症度により変わりますが、失神は突然死とも関連性があり予後不良のことも少なくありません。

 

<予防>

はじめての失神の予防は難しいかもしれません。

失神やふらつきなどの症状が出た場合は早めに動物病院を受診し、不整脈がでているのか原因となる心臓の疾患があるのかなどを確認し、再発をできるだけ防ぐよう治療をお勧めします。

この記事を書いた人

荻野 直孝(獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。