毛包虫症

毛包虫はニキビダニ、アカラスとも呼ばれ、哺乳類の皮膚に常在しているダニです。毛包虫が増殖することにより、皮膚がダメージを受ける皮膚疾患です。好発犬種や好発年齢は特になく、全ての犬種、全ての年齢で起こる疾患です。

 

症状

若齢発症型と成犬発症型に分かれており、若齢発症型では生後18ヶ月以内に発症したものを示します。

若齢発症型は成犬発症型と比較して軽度なことが多く、脱毛やフケや赤みが部分的に認められます。

若年発症型 治療前

一方、成犬型発症型では症状が部分的ではなく、広範囲に認められ、高齢犬では内分泌疾患や腫瘍などが背景に存在し重篤化することは少なくありません。四肢や体幹部、顔面などに脱毛、赤み、かさぶたなどを生じ、強い痒みや痛みなどを呈することもあります。またほとんどの場合に細菌感染を伴っており、感染が深部に達する場合もあります。

成犬発症型 治療前

 

原因

若齢発症型では、免疫力がまだ十分に備わっていないことが原因で発症します。

成犬発症型では、免疫力の低下が主な原因となります。免疫力の低下とは、年齢に伴いものや内分泌疾患(甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症など)、腫瘍など病気が伴うものがあります。また、免疫力を低下させる薬剤を長期的に使用することでは発症することもあります。

 

検査と診断

毛包虫症の検査と診断は、皮膚掻爬検査、毛検査、その他検査を実施します。検査により1匹でも毛包虫が認められれば毛包虫症と診断して良いと考えられています。

皮膚掻爬検査は鋭利なもので皮膚を削り、出血を認めるまで深く行います。

毛検査は、皮膚掻爬検査が実施困難な口唇部、指間などで実施します。

皮膚掻爬検査、毛検査どちらも1カ所でなく複数箇所実施することで検出率が上がります。

これらの検査で検出が出来ない場合には

皮膚生検が有用となり、直径1cm未満の丸いメスで皮膚を切開し病理組織学的検査を実施し毛包虫を検出します。

治療

若齢発症型では免疫力が上がるにつれて自然治癒する場合や、シャンプーのみで治癒する場合あります。

しかし、成犬発症型では重症であることが多くあります。そのため、駆虫薬として使用される注射薬や内服薬、外用薬を必要とし、さらに2次的に起こる細菌感染症や毛包虫症発症の背景に病気(内分泌疾患や腫瘍など)が存在する場合にはそれらに対する治療も必要となり、その他にも、シャンプー療法や生涯にわたる毛包虫の駆虫などが必要となる場合があります。

成犬発症型 治療前

成犬発症型 治療後

 

若年発症型 治療前

 

若年発症型 治療後

この記事を書いた人

石井 秀延(ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)
皮膚疾患に悩むご家族をはじめ、ご来院のみなさまにご相談していただきやすいような雰囲気づくりに努め二人三脚での治療をしています。2児の父で特に好きな犬種はプードル。日頃の運動不足解消のため暑さ寒さに負けず自転車通勤している。