先天性心疾患

心臓やその周囲の血管は受精卵からその体が少しずつ出来上がっていく過程で形作られ、出生後に一部の血管や孔が機能停止して正常な心血管の構造となります。先天性心疾患はこの心臓が形作られる過程に異常があったり、出生後に機能停止するはずの血管や孔がそのまま存在したりすることを言います。
先天性心疾患は個体によって程度が異なり、さらに他の先天性心疾患と一緒に起こることも稀でないため、見える症状や治療などの対応は個体によって異なります。

 

(上記は先天性心疾患でも比較的多くみられるものをあげているが他にも多くの先天性心疾患は存在する)

原因

遺伝的な要因が関わっていると推測され、各先天性心疾患で好発品種が存在します。

好発品種

症状

異常が軽度の場合には無症状の場合もあります。
心室流出路障害では重度になると、運動不耐性、呼吸促迫、失神などがみられます。
短絡性心疾患では重度になると、運動不耐性、呼吸困難、チアノーゼ、失神などがみられる場合があります。
房室弁異形成では僧帽弁異形成では運動不耐性や呼吸困難などの左心不全症状が、三尖弁異形成では腹水の貯留など右心不全症状が主となります。

治療

異常が軽度の場合、経過観察のみとすることもありますが、すでに有症状の場合や突然死のリスクのある場合には治療の対象となり症状の緩和や状態の維持を目指し内科治療を行います。
また、先天性心疾患の種類やその子の状態にもよりますがより大きな改善や根治を目指し外科手術を行う場合もあります。

見通し

先天性心疾患の種類とその子の状態により様々です。
一般的には心室流出路障害では狭窄の程度が重度になると突然死のリスクが上昇するとされています。
短絡性心疾患では短絡孔の大きさと位置(直接肺動脈に負担がかかりやすいか否か)が病気の見通しを変えると言います。
房室弁異形成についても狭窄や逆流の程度により病気の見通しは異なります。

予防

残念ながら先天性の異常なので病気を予防することはできません。
お家に子犬・子猫を迎い入れた際にはしっかりと健康診断を受け、先天的な異常が疑われた場合には検査を受けましょう。

この記事を書いた人

荻野 直孝(獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。