肝臓機能の重要な役割をになう胆のう。そんな大事な臓器である犬や猫の胆のうの働きについて解説します。

胆のうは、肝臓で作られた胆汁を濃縮し貯蔵する器官です。十二指腸に食べ物が到着すると胆のうが収縮し十二指腸に胆汁が分泌されます。

胆汁は脂肪の消化を助け、消化・吸収しやすくするために働いています。

胆汁の成分は主に水、ビリルビン、胆汁酸、胆汁色素、コレステロール、です。脂肪の消化・吸収だけでなく、肝臓の持つ解毒作用にも働き老廃物を体外へ排出する機能もあります。

ビリルビンは血液成分の一つである赤血球が役目を終えて肝臓で破壊された色素成分です。

コレステロールは、悪者扱いされがちですが、3大栄養素の一つである脂質のひとつです。体内で合成されるコレステロールは主に肝臓で作られますが、小腸、副腎皮質、筋肉でも少量が作られています。

ビリルビンもコレステロールも胆汁に含まれて最終的に便として体外へ排出されます。

 

栄養素の吸収が低下したり老廃物の排泄が正常に行われない状態は非常に危険です。

肝臓や胆のうの異常により胆汁の分泌が低下すると、以下のような症状が出てきます。

・便が白っぽくなる

・皮膚や白目が黄色くなる

・尿がオレンジ色になる

これは胆汁排泄が大部分を占めるビリルビンが体外へ排出されずに体内にとどまることで目に見えて症状が現れてきます。

他にも、元気、食欲がなくなるなどの症状も起こります。

→詳しくは胆のうの病気のページコチラも一緒にご覧ください。

 

では、胆のうを切除してしまうと何が起こるのでしょうか?

胆のうの病気(胆石症、胆のう粘液腫、腫瘍など)でやむを得ず胆のうを切除する場合があります。

胆のうを切除しても症状を出さない動物も多くいますが、胆汁を貯蔵することができなくなりますので、食べ物の消化吸収から排便までの流れに影響が出ることがあります。

前述した通り、胆汁は脂肪を分解する酵素が含まれ消化吸収を助けます。

胆汁が貯蔵できなくなると脂肪の消化吸収がうまくできず、下痢や軟便、排便回数の増加がみられることがあります。

症状が出た場合は、低脂肪食や内服薬で経過観察していくことになります。

 

臓器がなくなることには怖さがありますが、なくなっても生活への影響は大きな問題にはならないことが多いです。

 

胆のうは肝臓に囲まれた臓器です、実はなくなっても大丈夫なんてびっくりですよね。

重症化する前に、日常の変化に気付いてあげられるようにしておきましょう。

この記事を書いた人

荻野 直孝(獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。