犬猫の洋服の必要性について考えてみた。~最近着せてる人多いけどうちも着せたほうがいいの?~

皆さんのお宅ではペットに洋服を着させていますか?近頃はステイホームが多く、ペットと触れ合う機会も増えたのでネット通販やペットショップなどでかわいい服を購入される方も多いのではないでしょうか?ファッション重視のものから機能性重視のものまで多くの種類があって選ぶのにも迷いますね。

そもそもペットに洋服を着させること事態に賛否両論があると思います。そこで今回は服のメリット・デメリットを知り、服について考えてみたいと思います。

『メリット』

⑴防寒・防暑・UV対策

犬や猫には被毛があり、人間と同じように自身で体温調整ができる恒温動物です。

近年では室内で飼育することが多くなりました。室内飼育の子は屋外飼育に比べ体温調節が上手にできない事があると言われています。また日本の気候とは違う、海外原産の品種も多く、日本の高温多湿~寒冷乾燥気候に適応しにくい場合もあります。

例えば被毛の薄い犬種・猫種は寒さに対して弱く、冷えやすいため体調を崩す場合があります。そのため冬にはボアやダウン素材のジャケットなどの暖かい素材の洋服で防寒をしてあげることが必要となります。

逆にダブルコート(上毛下毛)を持つハスキーやサモエド、マズルの短い短頭種は夏の暑さに弱いため冷却効果のあるクール素材、保冷剤をセットできるベストを着用することで熱中症対策となります。

また毛のない犬種・猫種では特に夏の強い紫外線が直にあたることで皮膚炎を起こすことがあるのでUV加工の服を着させることが良いかもしれません。

 

⑵怪我や虫からの保護

特に犬の話になりますが多くの子は外に散歩に出かけます。その際、アスファルトや草むらで怪我をしてしまう場合があるかもしれません。服や靴下を身に着けることで擦り傷を防げるでしょう。また草むらを歩くと、枯れ葉や草の種などが毛に絡みついて困った経験はありませんか?そんな時も服を着ることで付着を防げます。

さらに病気を媒介するダニやノミ、蚊は洋服を着ることで接触する機会を減らせるので有用かと思います(服だけでは完全に防げないのでノミダニ、フィラリア予防は病院できちんと行いましょう)

 

⑶抜け毛対策

柴犬や秋田犬などの日本犬をはじめとするダブルコート(上毛下毛)を持つ犬種は特に、換毛期になると抜け毛が多くなり部屋の掃除が大変となります。毎日のブラッシングを基本としたうえで洋服を着させることで部屋への抜け毛の拡散を防ぎます。また外出先でも抜け毛を抑えることが出来るのでマナーとして着せる人もいるようです。

『デメリット』

⑴着ること自体へのストレス

洋服を普段から着ていない子はある日突然服を着用させると大きなストレスとなるのでやめましょう。特にサイズの合っていない服は体に対して服が小さいと締め付け感が、逆に服が大きいと思わぬところに足が引っかかったり脱げてしまって怪我の原因となります。まずは体の大きさをしっかり計ってサイズの合った服を購入しましょう。

また最初は服に慣れさせることを目的とし、長時間の着用は控えたほうが良いでしょう。

 

⑵飾りやひもなどによる怪我・誤食

洋服にはサイズ調整のための紐が付いているもの、ボタンで止めるもの、飾りとしてもリボンが付いているものなどがあります。これらは何かの拍子に手足や首に巻き付いてしまったり、誤って食べてしまうこともあり大変危険です。紐・ボタン等の装飾が付いているものは自分のペットが飲み込んでしまわないか、怪我をしないかを考えたうえで購入しましょう。

 

⑶服の素材によるストレス、皮膚疾患

洋服の素材としてかさかさと大きな衣擦れの音がするものや匂いのある柔軟剤の使用には注意が必要です。動物は人間の嗅覚や聴覚よりもかなり敏感です。音が鳴る素材、匂いはストレスとなりうるので注意しましょう。

また皮膚や毛の薄い子は服と皮膚がこすれることで擦過傷となったりかゆみを誘発することもあります。

中~長毛種の子では服の素材によって静電気が起き、服の中で毛玉となってしまうこともあります。服を購入する際は素材にも目を向けることもポイントです。

 

⑷体温調整の妨げ

メリット⑴でも書いたように、犬も猫も自身で体温を調整できる恒温動物です。

服を着ることによって体の熱が服にこもって熱中症となることも考えられます。その場の気温や動物の状態を見て上手に着脱できるとよいでしょう。

 

『獣医師が洋服を推奨するケース』

⑴自傷行為からの保護

ペットの中にはストレス、体のかゆみ、痛み、癖などの理由で自身を引っかいたり舐めてしまう子がいます。それらの傷はやがて化膿し、症状のさらなる悪化をする悪循環をもたらします。

病院での薬の治療はもちろん、洋服で物理的に防御することで症状の安定を目指すことがあります。

 

⑵術創の保護

不妊手術などのお腹の手術をした場合、傷を舐めたり引っかいてしまうと術創が開いてしまったり、化膿してしまいます。

病院では傷口をいじらせない為の術後服というものがあります。

以前はパラボラアンテナのような形のエリザベスカラーを首に巻くことが主流でしたがこれは首周りの動きが大きく制限されストレスがかかるので、当院では術後服を使用しています(傷口の大きさ・その子の性格にもよります)。術後服は犬用、猫用、体の大きさによって、また雄用・雌用がありますので多くの子にご利用いただいてます。

また特殊なものとして、胃瘻チューブを設置した子用もあります。

 

⑶介護

シニア期のペットにおいては自身の体温調整機能が低下し体調を崩してしまう子がいます。洋服を着用することで防寒、防暑となります。

また排泄に失敗してしまう、トイレまで歩けないといった子はマナーウェア(いわゆるオムツ)を着用することで体や部屋の汚染を防ぐことが出来ます。

足腰が弱くしっかりと踏ん張って立つことが出来ない子は滑り止め付きの靴下をはかせることで規律の補助となりリハビリにも役立つのでお勧めです。

 

『まとめ』

洋服には着飾るだけでなく様々な機能があることが分かりました。メリットとデメリットを理解したうえでその場に適した洋服選びができるとよいですね。

この記事を書いた人

大森 慶子(愛玩動物看護師)
日々育児と仕事を両立するため健康管理に気を付けている。趣味はサイクリングや登山と休日もアクティブに活動。「正確な仕事は美しい環境から」をモットーに院内の環境整備やマネジメントに関して精力的に動く日々。院内のムードメーカーとしていつもみんなの笑顔の中心にいる。