犬や猫も家族!みんなで考える、グリーフケアってなんだろう?

みなさんはグリーフケアという言葉をご存知でしょうか。

グリーフ=『悲嘆』という意味であり、その人や動物にとって大切なものを失った時や失いそうな時に起こる、ごく自然な心と体の反応を指します。

今回、当院では日本獣医生命科学大学の小野沢先生にグリーフケアについて講義をしていただきましたので、皆様にセミナー受講の報告も兼ねて概要をお伝えします。

 

☆ペットの存在

犬猫も人と同様に高齢化が進んでいます。それはつまり、「ご家族と一緒に過ごす時間が長い」ということでもあります。健康に過ごせることが一番ですが、病気になることも十分に考えられます。

グリーフは必ずしも「死」に対してのみ起こるものではなく、不安や緊張など日常の変化から起こります。例えば年1回の健康診断を行った際に重篤な病気が見つかったとします。病気に関する説明や今後の治療方針、投薬、生活環境の変化、余命宣告など…日々の状況が一転した時ご家族の頭の中は不安や恐怖でいっぱいのはずです。

これはあくまでも一例です。病気やケガ、重篤度などに関係なく、いつでもグリーフは発生する可能性があります。

ペットがご家族にとってかけがえのない存在であるからこそ、グリーフを感じる場面は誰にでも起こり得るのです。

 

☆グリーフを動物目線で考える

動物が抱えるグリーフはどんなものなのでしょうか。

体調や成長に合わせた身体の変化、人間の緊張感、家族を失う、ごはんの種類が変わる、投薬、引っ越しなど・・・動物にとって当たり前だった日常に何か変化が起きた時、動物もグリーフを抱えています。

動物目線で見える景色を想像してみると沢山の情報が出てきます。動物病院でのグリーフケアはグリーフを感じるのは人だけではないという点がとても重要となります。

診察台の上に乗るだけでも緊張感でいっぱいの状況で保定や採血をされる、ほかの動物の声やにおいがするのは怖いはずです。怖いと感じるレベルにも、もちろん個体差があります。処置時の環境選択、優しい声掛け、おやつを使う、鎮静をかける…ご家族とその子に合った最適な方法を探すことが必要となります。

普段と異なる環境での診察や投薬、手術など、動物病院は動物がグリーフを抱えやすい場所であるからこそ、スタッフは日々、来院時に患者動物の情報を集め、個別性を考慮した診療・看護を提供することが大切だと考えています。

 

☆動物病院スタッフが抱えるグリーフ

この文章のはじめに、グリーフはごく自然な心と身体の反応とお話しました。

これは私たち動物病院スタッフも同じです。

後悔や無力感を感じる場面も多く存在します。命と向き合う現場であるからといって、対応するスキルは持っていても慣れることはありません。

それでも、「少しでも長くこの子と過ごせてよかった」 「やっぱり動物と暮らすのが好き」 「この動物病院に通えてよかった」 「また診てもらいたい」…そんな風に思っていただけるような病院を私たちは目指していきたいと考えています。

『動物が最後に目を閉じるその瞬間、

どんな景色を見ていたいか、どんな声を聞いていたいか

安心して目を閉じることができる環境づくり』

今回のセミナーに出ていた小野沢先生のことばです。

このことばのように、ご家族とペットの暮らしをより豊かにするお手伝いができるよう今回の講義を通して学んだことを活かし、個々に寄り添ったさらに深いケアについてスタッフ全員で考えていきたいと思います。

この記事を書いた人

藤咲 舞(愛玩動物看護師)
当院の看護主任として日々奮闘中。責任感が強く真面目な性格と自負しており、ご家族からも頼られることが多い。小学校などで子供たちと犬との触れ合いの場を設ける動物介在教育にも力を入れており、休日には愛犬とともに参加している。ご家族やペットのお名前を覚えるのが得意で、スタッフからも「人間カルテ」と言われる記憶力が自慢。