愛玩動物看護師 国家資格化で変わるこれから
今年、第1回愛玩動物看護師国家試験が終了しました。
以前より動物看護師の国家資格化へ向けて各所で動きがありましたが、ついに2023年2月19日に第一回愛玩動物看護師国家試験が実施されました。
今回の試験では全国で2万人以上が受験し、受験した当院のスタッフは無事に全員合格することができました。
初めて行われる試験ということもあり、私たちはとても不安な気持ちでいました。今回はこの試験に向けての私たちの期待と葛藤、これからの愛玩動物看護師の役割についてお話したいと思います。
これまでも動物看護師の民間資格はありましたが、国家資格化されたことで新しく法律が制定され、愛玩動物看護師としての業務内容や役割が明確化されました。
診断や手術などの診療業務は獣医師にしかできませんが、愛玩動物看護師は診療補助や動物の看護などその他のすべての業務を行います。
愛玩動物看護師は動物とそのご家族により近い存在であり、獣医師と連携してより良い獣医療が提供できるように努める必要があります。
国家資格化されたことで新しくできるようになった業務には、採血やマイクロチップの挿入、投薬などがあります。
これは獣医師または愛玩動物看護師の資格を持つ者でないと行ってはいけない業務です。また、国家資格を取得していないと愛玩動物看護師またはそれに紛らわしい名称を使用することができなくなりました。国家資格になったことでこれまで以上に様々な業務を高いレベルで行うことが求められるようになります。
国家試験の内容や日程が公開されてから、私たちは業務などの合間を縫って試験対策を開始しました。
試験範囲が広いことや過去の試験の問題集がないことから、どんな問題が出るのか、難易度はどれくらいなのかを予想できない中で試験までの期間は各々が試行錯誤しながら勉強に追われていました。
時にはスタッフ同士で勉強会を開き、予想問題を出し合って、ともに勉強することもありました。
大変ありがたいことにご来院されたご家族のみなさまからも応援の声をいただき、益々頑張ろうという気持ちになり奮起することができました。
国家試験や今後の働き方に関して数名の動物看護師にインタビューしてみました。
【国家試験に向けての準備、当日の試験会場の状況に関して】
試験に向けての勉強としては参考書を読んだり、動画を見たり、予想問題を解いたりしました。わからないところをノートにまとめたり、スタッフ同士で問題を出し合ったりして各自自分に合った勉強法を工夫していました。勉強時間は通勤時間や休憩時間、休みの日などを利用しました。
試験会場は落ち着いた雰囲気でした。同僚や知人と話をしている人もいましたが、基本的には最終確認をしている人が多かった印象です。
試験の内容は予想していたものもあれば少しひねった問題もあり、牛に関する問題が多く出たことは意外でした。普段の診療では気にかけることが少ない防災についての問題や、ペットショップでの展示方法についての問題も出題されました。
【国家資格を取得した今、どのように働いていきたいか】
人医療の現場と同じように動物看護師の立場が大きく変わり、「資格持ち」となったことで社会の認知度や地位も向上してくると思います。それに見合った働き方や勉強が必要となるため責任を持って仕事に臨みたいです。
日頃の診療の中では今まで獣医のみが行うことができた採血なども行うことができるようになり仕事の幅が増えたので、知識と共に実技も身につけられるよう、積極的に行っていきたいです。
入院患者の状態に応じたケアを提供できるように試験合格後もセミナー参加等勉強に励み、よりご家族に安心していただけるような医療を提供していきます。
動物看護師の役割が明確になったことで、活躍の場が広がることを期待しています。
当院では国家資格化に伴い入院される動物たちへの看護体制、その充実を目的として看護料を設定することになりました。
動物の状態に合わせてよりきめ細やかなサービスを提供できるよう動物の重症度、看護内容により相応しいケアが行き届くようにランク分けを行っています。
例えば高齢な動物ですと寝たきりの状態だったり視力が低下していたり、排泄の介助が必要なことがあります。
その場合には床ずれやお部屋の中での怪我防止、排泄介助のために下記のような看護を行っています。
・高反発の介護マットを床に敷く
・壁や扉にタオルや緩衝材をつける
・飲食がしやすいようにお皿の種類、フードの形状や盛り付け方を工夫する
・自ら食べられないようなら食事補助をする
・定期的にドッグランに出して排泄を促す
・おむつを取り替える
・身体が汚れてしまった場合には部分的にシャンプーをする など
看護ランクが導入されたことで今まで以上に動物にとってより良い看護を提供できるようになりました。
これからの展望として、動物看護師が行える業務の幅が広がり明確化したことで活躍の場が増えることが期待されます。
各スタッフが興味のある分野を追求したり、得意なことを伸ばす好機でもあります。今まで行っていた業務を丁寧に行うことはもちろん、新しい業務に対する知識や技術の習得が必要です。
私たちは国家資格の取得はゴールではなくスタートであると感じています。知識・技術の向上を目指し日々の勉強を欠かさず、これまで以上に気を引き締めて動物看護業務に携わってまいります。