犬の眼瞼腫瘤切除

当院で実施した外科症例について紹介します。

今回は犬の眼瞼腫瘤切除の症例です。

※術中写真が表示されますので苦手な方はご注意ください。

 

プロフィール

犬 トイプードル 避妊メス 12歳11か月

 

来院理由

増大傾向であった眼瞼腫瘤の切除および歯科処置相談

 

既往歴

歯周病、眼瞼腫瘤、気管支炎、胆泥症

 

検査

右上眼瞼に8mm大の腫瘤あり(1年半前2mm大と確認)

歯石グレード3

麻酔前の検査では血液検査にてリパーゼの軽度上昇、腹部超音波検査で胆泥症が認められているが、麻酔処置には影響はないと判断

 

以上の検査結果をふまえ、眼瞼腫瘤による症状は認められていないものの拡大傾向のため切除実施

外科手術

腫瘤周囲を毛刈り・消毒を実施後、腫瘤を囲うように楔形に切除

眼瞼縁を揃え、かつ眼瞼の裏側(結膜)に縫合糸が出ないよう縫合

黄色の丸の部分が切除する腫瘤

 

診断

霰粒腫

 

手術後の経過

手術翌日フルオレセイン染色検査にて眼球角膜への影響がないことを確認

一般状態も問題ないため退院、自宅では角膜保護のためヒアルロン酸の点眼を実施

術後2週間で抜糸し、以降状態安定

 

眼瞼腫瘤について

眼瞼(まぶた)に腫瘤が見られたとき、炎症性のものと腫瘍性のものとあります。

炎症性であげられるものは霰粒腫や麦粒腫といったもので、今回の霰粒腫は眼瞼の中にできた腫瘤でありマイボーム腺の出口が詰まり、その中におかゆのような分泌物が溜まってできた肉芽腫性の病変です。マイボーム腺は眼瞼の表面(皮膚)と裏面(結膜)の境目にあり、涙の成分である油分の分泌を担っています。

似たような病名で麦粒腫というものがあり、こちらはまつげの毛根やマイボーム腺に細菌感染による炎症が起きた病変であり、人で「ものもらい」とも呼ばれるものです。ともに炎症によるものであるため、小さいうちは内科的な管理を行いますが、大きくなり眼への不快感がある場合は外科的に切除します。

腫瘍性のものとしては犬ではマイボーム腺が腫瘍化してできるマイボーム腺腫といった良性の腫瘍であることが多いです。

主に高齢犬で発生し、小さいうちは問題ないことが多いですが徐々に大きくなることで眼の表面を傷つけたり炎症を起こしたりと悪さをします。治療は基本的に外科的切除となります。

犬でマイボーム腺腫以外では悪性黒色腫が多いとされているため、切除後は病理組織検査にて診断が必要になります。

また、猫では悪性腫瘍であることが多く、十分な外科的切除辺縁(マージン)を確保して切除する必要があります。

 

眼瞼腫瘤の切除後は縫合糸や縫合方法によって眼の表面を傷つけてしまうこともあるため、フルオレセイン検査といった角膜表面の傷を検出する検査で確認をし、術後も角膜保護のためヒアルロン酸点眼を行います。

 

今回の症例では同時に歯科処置として歯のスケーリング・抜歯を行っています。当院での歯科処置の流れや重要性についてはこちら(ハイパーリンク:犬や猫の歯のクリーニングってどうやるの?その流れや重要性について解説します!)をご覧ください。

 

眼瞼の腫瘤だけでなく、眼の異常や体表面のできものに気づいたときは動物病院にご相談ください。

この記事を書いた人

小安(獣医師)
ご家族様が相談しやすい診療を心がけ、診察受けてよかったと思えるような獣医療を提供できるよう日々邁進中。趣味は美術館、博物館に行くことで非日常感が味わえる独特な空間が好き。実家では猫を飼っていて帰省するたび猫を吸っては猫アレルギーを発症させている。