犬猫の胃カメラ!内視鏡検査でわかること。

内視鏡とは、ヒトの医療でいうところの胃カメラのことです。

体格や内視鏡の太さによって異なりますが口から咽頭を経て気道、肺の入り口や気管支、食道や胃、十二指腸のあたりまで見ることができます。逆に肛門からアプローチして、結腸や直腸も見ることもできます。。

胃腸を調べる検査にはレントゲン検査、バリウム造影検査、超音波検査などがありますが、胃腸の内部を評価することはなかなか難しく、特にとても小さなできものだったり色や形状などはわかりにくいです。そこで内視鏡が大活躍します。

 

内視鏡検査のメリット

全身麻酔は必要ですが体の内側から直接見ることができ、手術のようにメスを入れることなく検査することができます。病理検査が必要な怪しい病変があった場合にはその場で組織を採取して検査に進むことができます。

誤って誤食してしまった異物を、おなかを切ることなく取り出すことも可能です。

手術のような大きな痛みや入院も必要ない場合が多く、動物の体への負担はかなり少ないと言えます。

内視鏡のデメリット

デメリットというべきなのか微妙なところですが、胃腸はグネグネとしているため内視鏡のスコープが入り込める部位には限度があります。

口から入れた場合は十二指腸とその先の空腸近位まで、肛門からのアプローチの場合は直腸、結腸、盲腸、場合によっては回腸の遠位までが検査の限界となってきます。

 

内視鏡で検査する症状

・嘔吐、吐血、小腸性下痢、食欲不振、体重減少などの消化器症状がみられる疾患

・原因不明の低タンパク血症(低アルブミン血症)

・レントゲンや超音波の画像で異常な所見がられる

・異物の摘出

・出血部位の特定

などです。

 

胃の検査

食道や胃の中にある異物は、それぞれの形状に合った鉗子を使って取り除きます。異物の他には、慢性胃炎、肉芽腫性胃炎、好酸球性胃炎、胃潰瘍、胃腺がん、胃がん、リンパ腫、平滑筋肉腫、良性ポリープなどが挙げられますが、腫瘍や炎症性病変は生検によりサンプリングを行い、治療の方向性を定める材料を得ることとなります。

内視鏡で検査をしている写真です。①正常な消化管 ②出血をしている部位 ③炎症を起こして赤くなっている ④内視鏡サンプリング

 

小腸・大腸の検査

腫瘍性病変の確認や炎症性腸疾患の診断がメインです。

低アルブミン血症、リンパ管拡張症、炎症性腸疾患(IBD)、リンパ形質細胞性腸炎、肉芽腫性腸炎、腸腺がん、寄生虫疾患、ポリープなどの診断材料をサンプリングすることができます。

内視鏡の検査には、ヒトの検査とは異なり、全身麻酔が必要です。また、事前の絶食(前日の夜9時~)が必要であったり、おしりからのアプローチの場合には、浣腸によって腸をからっぽにすることも必要になってきます。

検査後は、吐き気止めや消炎剤を使用して、嘔吐を予防します。

内視鏡の検査は消化器疾患に対してとても有用な検査になりますが、他の検査方法では確定診断がつかない場合の最終手段的な検査とも言えます。IBDに関しては生検と病理検査での唯一の診断方法でもあるため、慢性的な劇や嘔吐、原因がわからない消化器症状が続く場合には獣医師と相談の上、一度検査を受けられることをお勧めします。

この記事を書いた人

荻野 直孝(獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。