咳が出るのはなぜ?

犬も猫も人と同じく咳をすることがあります。ホコリなどの異物や刺激物によって起きる生理現象だったり、気道が狭く、水を飲みこんだ拍子にむせたりすることがあります。

その他にも、リードを引っ張った時に出る乾いた咳や、興奮時に出る咳なども一時的な咳として見られます。また、くしゃみでも吸い込むようなくしゃみ「逆くしゃみ」というのもあります。これも生理現象の1つです。

しかし、このような生理現象で起こる咳とは異なり、病気が原因で咳が出る場合もあります。では、どのような咳が病気のサインなのでしょうか?詳しく解説していきます。

 

呼吸器のしくみ

私たち動物は、生命を保つために絶えず呼吸しています。呼吸によって鼻や口から吸いこんだ空気は、気管を通って肺に送られます。この空気の出し入れを行っている器官を呼吸器と呼びます。

呼吸器は上部気道と下部気道、肺の3つに大きく分かれます。

上部気道は鼻腔、咽頭、喉頭までを指し、下部気道は気管と気管支を指します。肺は気管支以降の細い気管と肺胞で構成されています。

上部気道も下部気道も役割は似ており、主にガスの運搬と異物の除去を行っています。肺では細い気管でガスの運搬がされ、肺胞でガスの交換を行っています。

この上部気道と下部気道、そして肺とそれぞれで出る症状が違いますので症状によって疾患の鑑別を行います。

 

咳の原因と症状

咳は、主に気道と肺に問題が生じることによって引き起こされます。上部気道、下部気道、肺、その他に分けて説明していきます。

上部気道( 鼻腔 咽頭 喉頭 )

組織の腫れや腫瘍によって気道の形が変わることで、気道の閉塞や狭窄が起こり、ガスの運搬に影響が起きることによって咳などが生じます。

また、先天的な疾患である軟口蓋が長すぎることでも気道が狭窄し、ガスの運搬に影響が出ます。

症状としては、肩や胸が大きく動く努力性呼吸や開口呼吸の他にも、「ぜえぜえ」、「ヒューヒュー」という呼吸の喘鳴(ぜんめい)やくしゃみ、鼻汁、鼻出血が認められます。

原因となる疾患として気管虚脱や短頭種気道症候群がよく見られます。

下部気道( 気管 気管支 )

上部気道とは違い、気管の壁にある気管軟骨によって形状を保っていますが、外傷や腫瘍による圧迫などにより気管が狭窄あるいは閉塞し、ガスの運搬が妨げられてしまうことがあります。また、気管支の粘膜が炎症や感染を引き起こすことで腫れあがり、ガスの運搬が出来なくなることがあります。

症状としては、努力性呼吸や呼吸困難、喘鳴、咳が認められます。

原因となる疾患として、気管支拡張症や猫喘息が挙げられます。

炎症や腫瘍による変質、肺に水がたまる水腫、肺の中の空気が減少した状態の虚脱や圧迫などにより、ガスの交換とガスの運搬の両方が妨げられ、呼吸がしづらくなります。

症状としては、ガスの交換が障害されることによって血中の酸素濃度が低下してしまい、呼吸回数の増加や努力性呼吸、開口呼吸、皮膚や粘膜が青紫色になるチアノーゼといった呼吸困難が認められます。

原因となる疾患として、肺炎や肺腫瘍、気胸があります。

その他

胸水や腫瘤などによる胸腔内の病変や腹腔内の病変により、肺の動きや横隔膜の動きが妨げられてしまうことで咳などの症状が生じることがあります。また心臓や血管の変形などにより気管や気管支が圧迫され、その刺激によって呼吸器症状が認められる場合もあります。咳が主な症状として認められるわけではありませんが、症状の1つとして認められることもあります。

原因となる疾患として、胸水や横隔膜ヘルニアなどがあります。

以上のように咳の原因や症状は様々あります。これらの原因を見極めるためには、咳の種類と咳に繋がる疾患を知ることが重要です。

 

咳の種類と診断

咳は性質と状態によって、乾性と湿性の2つに分類できます。

乾性の咳は、痰が少なく、「コホコホ」といった高く響くような特徴があります。一方で、湿性の咳は痰が絡んだような咳で、音量は小さくこもったように聞こえるのが特徴です。連続する咳の後に、吐くような動作を伴うこともあります。また、「ぜえぜえ」と苦しそうな息づかいも見られます。

犬や猫の場合、人とは違い本人に咳の感覚を直接聞くことはできないため、咳の鑑別は難しいですが、視診や触診、聴診でまずは判別していきます。

視診では呼吸状態や呼吸音、可視粘膜、くしゃみや鼻汁の確認をします。また触診では、気管や胸郭の圧迫による咳の誘発(カフテスト)をし、過敏に咳を起こしているかどうか確認を行います。さらに聴診では、心音や肺音を聞き、異常な音が鳴っていないか確認をします。

正常な呼吸音は息を吸い込むときに「サー」と聞こえますが、異常な場合は呼吸時に「ブツブツ」、「プチプチ」、「ヒューヒュー」、「ズズッ」などの副雑音(ラッセル音)が聞こえます。これらの異常音が聞こえた場合、それぞれ疑うべき疾患があります。

この他にも、血液検査や胸部レントゲン検査、超音波検査、CT検査、内視鏡検査など行うことでより詳細に疾患の鑑別を行うことが出来ます。

 

治療

治療としては、主に酸素療法、薬物療法、吸入療法があります。

酸素療法

原因によらず、呼吸困難や努力性呼吸、チアノーゼといった重度の症状が見られた場合は、酸素の供給が必要になります。まずは酸素室で高濃度の酸素を吸わせることで、低酸素状態になっている組織に酸素を供給して、「息苦しい」という症状を和らげます。また、同時に温湿度管理も行います。

酸素ボンベや酸素ハウスのレンタルを行っている業者さんがありますので、獣医師の指示の元、自宅で酸素療法を行うこともできます。自宅で行う場合は、酸素ケージの中の酸素濃度や温度、湿度が適切に保たれるかどうかが大変重要なポイントです。設置に当たり、ご不明な点はきちんと確認するようにしましょう。

薬物療法

気管支拡張剤や鎮咳剤、去痰剤、ステロイドを含む抗炎症剤などを使用して呼吸が楽になるようにお薬を処方します。お薬を飲めない場合は注射をすることもあります。息苦しさを緩和させるために鎮静剤を使用する場合もあります。

吸入療法

気管支拡張薬や抗炎症薬などの薬剤をネブライザーという機械を用いて、霧状にして吸入させます。人で言う耳鼻科に行った時にマスクから吸う煙のようなものです。犬や猫の場合はじっとしていることが難しいので、密閉されたケージで30分程吸入させます。その際は酸素管理も大事になってきます。

上記以外にも、胸腔内の液体を抜く処置をすることがあります。

 

最後に

咳が止まらない、繰り返し咳き込む、咳以外の症状を伴う場合などは何らかの病気にかかっている可能性があるため、動物病院で診察を受けるようにしましょう。呼吸困難を起こしている場合は、なるべく体勢を変えないように持ち上げ、胸を押さえないように抱きかかえるようにしましょう。また、呼吸困難を起こしている姿に気が動転してしまうかもしれませんが、なるべく興奮させないよう落ち着いて対処するようにして下さい。

単なる咳だと思い放置してしまうと命に関わる可能性もあるので、夜間や休日であっても対応している動物病院に連絡をした上で、獣医師の指示に従い病院で処置を受けるようにして下さい。

また、スマートフォンなどで動画を撮ってきていただくと、実際の胸の動きと音を確認することができるので、症状を特定する際に非常に参考になるケースが多いです。撮影が難しい場合もありますが、「何かいつもと様子が違うけど、症状を説明するのが難しい」などの際は、動画撮影をしていただき診察時にお見せ下さい。「いつもと違う」時は一度獣医師に相談してみることをお勧めいたします。