自宅でもできる犬や猫の吸入治療(ネブライザー療法)を解説します。

ヒトの医療領域では耳鼻咽喉科や小児科などで、鼻炎や喘息の治療に用いられることの多い吸入療法。

今回はこの吸入療法(ネブライザー療法)のあれこれをお伝えしていきます。

「ネブライザー」とは医療機器である吸入器を指す呼称です。

身近なところではインフルエンザ治療薬として用いられる、粉末吸入剤(ドライパウダー吸入)も吸入療法のひとつです。

ネブライザー療法は液体の薬剤をネブライザーにより霧状にし、これを吸入させることで気管支や肺に薬剤を直接送り込むことができます。

ちなみに、霧化することは「エアロゾル化」するともいいます。昨今話題の新型コロナウイルス感染症のニュースでも耳にしたエアロゾル。これは空気中に長時間浮遊する粒子のことを指します。

 

ネブライザー療法の特徴

ネブライザー療法のメリットは少量の薬剤でも、直接標的部位に到達させることができることに加えて、内服薬と比較して即効性があることです。

自身で呼吸をしている状態(自発呼吸)であれば、投薬を嫌がってしまう子でも実施することができます。

薬剤の粒子はその大きさによって到達する部位が異なり、粒子が小さいほど下部気道や肺まで到達しやすくなります。

なお下部気道とは気管、気管支を指し、上部気道とは鼻腔、咽頭、喉頭を指します。

ネブライザー療法では気道や肺などの限られた部位で薬剤を吸収するため、血液中の濃度は内服薬や注射薬に比べて低くなります。

そのため糖尿病や腎臓病などの基礎疾患により投薬に制限がある場合でも、ネブライザー治療ならば可能となることがあります。

一方でネブライザー療法のデメリットは、機器が必要になりますしその衛生管理と定期的なメンテナンスが必要です。

ご自宅でも行えますが、吸入のための環境を整備する必要があって少し手間がかかります。

 

適応となる症例

では、ネブライザー療法はどのような病気や症状に適応しているのでしょうか?

この他に、鼻腔や咽頭の手術後の周術期(術前~術後までの一連の期間)管理にも適応されます。

また、気道内が加湿されることで、粘膜の働きを助け、ウイルスや細菌の感染を防ぐ効果も期待できます。

一方で、間質性肺炎や肺水腫、重度の細菌性気管支肺炎などは、状態を悪化させる可能性が高いため、適応ではありません。

呼吸器のしくみについてはこちらをご参照ください。

先ほどあげた病気や症状であってもご自宅での実施には制限がある場合がありますので、必ず獣医師の指示や処方のもと使用することが大切です。

 

ネブライザーの種類

ネブライザーにはいくつか種類がありますが、このうち超音波式とジェット式をご紹介します。

・超音波式ネブライザー

超音波振動を利用して、薬液をエアロゾル化するタイプです。

機器の構造が複雑であるためメンテナンスに手間がかかりますが、微細かつ均一にエアロゾル化できることと大量の霧を作り出せるのが特徴です。

しかし中には超音波によって薬剤自体が変化してしまうなど、使用できないものがあります。

・ジェット式ネブライザー

圧縮空気による圧を利用して、薬液をエアロゾル化するタイプです。

超音波式と比較すると産生される粒子がやや大きいですが、メンテナンスがしやすく、ほとんどの薬剤を使用することができます。

圧縮空気を送り出すためのコンプレッサーにより、作動音が大きいというデメリットがあります。

様式によって使用できる薬剤や適応する病気や症状は異なります。どのタイプが適しているのか、獣医師に確認をしてご準備いただくとよいでしょう。

 

ネブライザー療法のやり方と注意点

ネブライザーによってエアロゾル化した薬剤は、マスクやケージを用いて吸引させます。

犬や猫の場合にはじっとしていることが難しいため、マスクでの吸引よりケージなどを用いた方法が多く取り入れられています。

ミストサウナのようにケージ内に薬液の霧を充満させて、およそ15~30分吸入を行います。

吸入時間は症例や使用薬剤、機器によって異なります。

病院では密閉ケージにホースを取り付けて薬液を送って吸入します。この時呼吸が苦しくならないよう、酸素も一緒に流入します。

 

自宅で行う場合には衣装ケースや簡易ケージ、クレートを用いて専用のお部屋を準備しましょう。

・衣装ケースを使用する場合

衣装ケースの上部に穴を開け、霧を送るためのホースを接続できるようにします。

完全に密閉してしまうと呼吸が苦しくなってしまう可能性があるので、逃げ出さない程度に隙間をあける、あるいは空気穴を作ってあげましょう。

・簡易ケージやクレートを使用する場合

網目などからエアロゾルが流出するのを防ぐためにビニールなどでカバーをかけ、ネブライザーのホースが上部にくるよう設置します。

カバーは中の様子が見える透明、あるいは半透明のものがおすすめです。

衣装ケース使用時と同様に、カバーにはいくつか空気穴を作ってあげましょう。

衣装ケースやクレートの大きさは体の大きさに合わせて準備しましょう。

目安としては体のおよそ1.5倍程度、少し動ける広さがあると良いでしょう。逆に広すぎてしまうと落ち着いて吸入できない可能性があります。

薬液の霧は空気よりも重いため下へ落ちていきますので、どちらの場合も大事なポイントは、ホースを上部へつなげて、霧が上部から降って出るように工夫することです。

ご自宅でネブライサー療法を実施する際には、処方された用法用量を必ず守って行いましょう。機器や薬剤の誤った使用は、機器の破損や症状の悪化を招く可能性があります。

症状がひどく感じられる場合や吸入中に異変を感じた場合には、病院までご連絡ください。

また、使用前には機器や吸入する設備に問題がないかをチェックしてから吸入を行いましょう。

カバーかける際、齧って誤食してしまうことがあるかもしれません。吸入中、吸入後もよく様子をみてあげることが大切です。

また前述したとおり、ネブライザーは衛生管理と定期的なメンテナンスが必要です。特に衛生管理を怠ると雑菌などが繁殖し、感染症の原因になる可能性があります。使用後は洗浄してしっかり乾燥させて保管しましょう。

長期に使用しない場合や久々に使用する場合は煮沸消毒などを行ってから使用することも有効です。煮沸消毒を行う際は、煮沸できないパーツがないか確認をして実施しましょう。

また、ネブライザー本体同様に、衣装ケースやクレートも使用後は薬剤を拭き取るなどして、消毒・感想を行い清潔にしておくことが大切です。

カバーを使用する場合は、定期的な交換をおすすめします。

 

ネブライザー療法についてお話してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。気になることがあれば、お気軽にスタッフへお尋ねください。

この記事を書いた人

舘野(愛玩動物看護師)
ご家族から声をかけていただきやすい雰囲気作りを心がけています。現在は整形外科部門を中心に強化に精を出している。シェルティが大好きで好きなところを語り始めると止まらなくなる一面も。趣味は推理小説を読むこと。個人的に好きな作家は赤川次郎と西村京太郎。