【獣医師監修】犬の食物アレルギーが引き起こす皮膚の症状とは?
「1年じゅう体を掻いている」「耳のトラブルを何回も繰り返す」その皮膚症状、もしかしたら食物アレルギーが関係しているかもしれません。今回は犬の食物アレルギーについて解説します。


和田(獣医師)
動物好きなおばあちゃんの影響で自分自身も動物に関わる仕事がしたいと思うようになり獣医師の道へ。より良い獣医療を提供できるように日々技術や知識をどんどん吸収して能力をアップデート中。短い休みの日でも体重 6 キロの愛猫〝チビ〟に会うため実家へ駆けつけています。
犬の食物アレルギーとは?
食物アレルギーとは食べ物に対して、免疫が過敏に反応し攻撃してしまうことで炎症=痒みが起き、季節関係なく痒みが出ることが特徴です。
症状を抑えるには感染症や寄生虫など他の疾患を除外した上で食事を変更する必要がありますが、犬アトピー性皮膚炎を併発していることが多いとされています。その場合食事変更だけではなく、皮膚の衛生管理や内服薬を使いつつ治療する必要があります。
犬の食物アレルギーの症状
食物アレルギーの症状は犬アトピー性皮膚炎の症状と似ています。犬アトピー性皮膚炎はダニや花粉など環境物質が要因となり痒みが起きる病気です。この2つの病気の痒みは耳・肢の先端・肘の内側・胸からお腹などで認めることが多く、肉眼のみでは見分けることは難しいとされています。
しかし、食物アレルギーに特徴的な痒みの発症部位もあります。
- ・目や口の周り
- ・肛門や会陰部
- ・背部
- ・四肢末端

痒みがあると赤みが出たり、長期間皮膚を掻くことで黒く厚くなったり部分的な脱毛が出ることがあります。
また若齢時に外耳炎を繰り返す場合には基礎疾患に食物アレルギーが隠れていることがあるため注意が必要です。

食物アレルギーは、嘔吐や軟便などの消化器症状も認められます。特に嘔吐は原因の食べ物を口にした1~2時間以内に起こるとされています。また食べ物を排泄しようとする消化管の動きが活発になるため排便回数も多いことが特徴です。成犬で1日3回以上の排便があると食物アレルギーを疑う1つの判断基準となります。
犬の食物アレルギーの原因
食物アレルギーは原因となる食べ物を口にしてしまうことで痒みが起きます。痒みの出やすい食べ物として報告が多いのは主に動物性/植物性タンパク質です。
新しいフードやおやつを食べてから症状が出た場合には特に注意が必要です。
また痒みの原因は食べ物だけではなく、以下の要因が重なることで発症します。
- ・消化管のバリア機能の低下
- ・遺伝
犬アトピー性皮膚炎との違い
食物アレルギーと犬アトピー性皮膚炎は見た目や症状が似ているだけではなく、併発して発症するパターンがあります。その中でも原因物質や痒みの部位の特徴、治療法の違いについて紹介します。
食物アレルギーであれば原因物質は主に食べ物ですが、犬アトピー性皮膚炎の場合には以下のような環境物質が影響するとされています。
- ・ダニ
- ・花粉
- ・カビ
- ・ハウスダスト
痒みは体全体に出やすいですが、特に食物アレルギーは目や口の周り、肛門や会陰、背部、四肢末端などに出やすく、季節関係なく発現します。
犬アトピー性皮膚炎は耳や脇の下、大腿部内側など皮膚の柔らかい部分に出やすく、季節や天候に伴い痒みが発現することもあります。
食物アレルギーの治療は原因となる食材を避けることがメインであり、原因食材を見つけるために除去食試験が必要となります。しかし痒みが強くある場合には内服薬や保湿剤などのスキンケアで皮膚の衛生管理を行う必要があります。犬アトピー性皮膚炎の場合は環境の管理をしつつ食物アレルギーと同様に内服薬やスキンケアを使いながらの治療が必要になります。しかし食物アレルギーと犬アトピー性皮膚炎の両方を併発しているケースでは食事管理+薬物療法+スキンケアを組み合わせながら治療実施します。犬アトピー性皮膚炎についてはこちらで詳しく解説しています。
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食物アレルギーを発症しやすい犬種や年齢
食物アレルギーを発症しやすいのは以下の犬種が多いと言われていますが、免疫を介する病気のためどの犬種にも発症する可能性はあります。
- ・フレンチブルドッグ
- ・シーズー
- ・ダックスフンド
- ・柴犬
生後1歳未満の時期から顔や体全体を痒がる、外耳炎を繰り返している場合には食物アレルギーが潜んでいる可能性があり注意が必要です。
また若齢時だけではなく7歳以降で発症することもあるため、シニア期の犬でも油断はできません。
犬の食物アレルギーの検査と治療
食物アレルギーの診断において大切なことは問診です。
普段の食事内容と症状の関連性、今までの疾患を聴取することで痒みの原因を考えていきます。問診では現在の食事の原材料やおやつ・サプリメントの有無、発症時期と痒みの持続期間、症状の内容と場所、季節性の有無などを聞いて、他の疾患がないか、食物アレルギーの特徴とリンクする箇所があるかを調べていきます。痒みが出ている部位の皮膚の状態を確認し、様々な皮膚検査を使い分けて実施します。
検査
痒みがある場合まずは皮膚そのものを検査して行きます。皮膚押捺塗沫検査・毛検査・ウッド灯検査・皮膚掻爬検査など用途によって使い分け実施します。
皮膚症状が出ていても、ホルモン疾患や胃腸疾患などほかの疾患が要因となる場合があるため血液検査を実施し異常がないか確認します。またアレルギー検査をすることで確定診断はできませんが原因となるアレルゲンの予測を行い、アレルゲン以外のフードを選択しやすくなります。
除去食試験と食物経口負荷試験
「除去食試験」とは食物アレルギーの判断に用いられる試験です。原因となる食物アレルゲンを含まないフードを与えて、試験中の2か月間は皮膚の症状の改善を評価します。除去食試験には原因と思われる食物成分と違うものを選択したフード(牛→サーモンなど)を用いて行います。
除去食試験中には除去食以外のフードを与えてはいけないため注意が必要です。
除去食試験で症状が改善された場合には次に食物経口負荷試験を実施します。
「食物経口負荷試験」とは除去食試験で皮膚症状改善があった場合に、以前の食事に戻し皮膚症状の発現を確認します。症状の有無で以前の食事に対する食物アレルギーを診断することができます。また除去食試験で使用したフードに疑わしい食物成分を1つずつ添加していくことで真のアレルゲンとなる食物成分を特定することも可能です。食物負荷試験での皮膚症状の発現は2週間以内に認められることが多いとされています。
治療について~薬物、食事、外用、二次感染の予防~
治療は適正な食事、外用薬、内服薬を組み合わせて行うことが一般的です。フードは除去食試験の結果に基づき適切な系統を選択し、原因食物を避ける必要があります。市販の選択したフードを食べない場合にはホームメイド食を用いることがありますが栄養バランスが偏ってしまうため注意が必要です。
また始める際には他のフードやおやつを与えてしまうと犬も食べなければ他のものがもらえると学習してしまうため根負けしないことも大切です。
食事を変更することで内服薬などが休薬できた場合、食物アレルギーのみによる皮膚トラブルであったと診断できます。


まとめ
食物アレルギーの子には最初は療法食以外のものをなるべく与えないようにし、「何を与えてよいか・いけないか」を家族全員で共有し、ルールを統一するようにしましょう。
除去食試験によって原因が明らかになった後は、食べられる食材を少しずつ増やしながら痒みなどの症状が出ないか確認することで食事の幅を広げることが可能です。焦らずにその子にあった食事を見つけていきましょう。
加えて食事面だけでなくシャンプーや保湿を同時に行い皮膚の衛生管理を行うことも大切です。
犬の皮膚トラブルはアレルギーや感染症など様々な要因が重なり合うことが多く、治療自体も時間がかかりますが適切な治療をすることで痒みの症状を軽くすることができます。もし皮膚でお悩みがあればお気軽にご連絡ください。
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