犬と猫も予防が必要。当院のワクチネーションプログラムを解説します!

接種の目的

ワクチンを接種することで重篤な疾患にかかるリスクを少なくすることを目的としています。

また、皆様がワクチンの接種をすることでその動物自身の予防だけでなく、他の犬や猫に疾患を移さないようにできます。それにより地域の感染頭数が減り感染症の流行を抑えることができます。

予防できる病気

犬猫のワクチンにはコアワクチンとノンコアワクチンがあります。

コアワクチン:すべての犬猫に接種することが強く推奨される

ノンコアワクチン:住んでいる地域やライフスタイルによって接種が推奨される

<犬のコアワクチン>

・犬ジステンパーウイルス感染症

感染経路:感染した動物が咳やくしゃみをし、その飛沫を吸い込むことで感染します。

症状:発熱、咳やくしゃみが出る、元気がなくなる、食欲が落ちる、嘔吐や下痢などの消化器症状やけいれん、四肢の麻痺などの神経症状を引き起こすこともあり様々な症状が起こります。発生率は12.2%で、死亡率が高い病気です。特に若い犬だと症状が重くなりやすいため注意が必要です。また、回復した後も約50%の確率でけいれん、発作などの後遺症が残ります。

犬の代表的な伝染性の呼吸器系疾患、いわゆる犬風邪と呼ばれるケンネルコフの原因の一つになります。

・犬伝染性肝炎 犬アデノウィルス(1型)感染症

感染経路:感染した動物の唾液、尿、便を介して口から感染します。

症状:発熱、元気がなくなる、食欲がなくなる、嘔吐や下痢を引き起こすなどの症状が現れます。また、呼吸が早くなる、脈が速くなる、水のような鼻水が出るなどの症状がみられることもあり、特に若い犬で死亡率が高い病気のため注意が必要です。発生率は5%程度と知られています。

・犬アデノウイルス(2型)感染症

感染経路:感染した動物が咳をし、その飛沫を吸い込むことで感染します。

症状:発熱、食欲が落ちる、乾いた咳が出るなどの症状です。感染率が高い病気ではあるものの、比較的症状は軽いことが多い病気です。また、ケンネルコフの原因の一つです。

・犬パルボウイルス感染症

感染経路:感染した動物の便を介して口や鼻から感染し、致死率が高い病気です。

症状:発熱、元気がなくなる、食欲が落ちる、嘔吐をするなどの症状が現れ、ケチャップのような真っ赤な下痢も出ることがあります。脱水症状の進行や白血球が無くなってしまうことが特に危険な病気で発生率は36.2%で若い犬ほど死亡率が高い病気です。

<犬のノンコアワクチン>

・犬パラインフルエンザ

感染経路:感染した動物がくしゃみや咳をし、それの飛沫を吸い込むことで感染します。

症状:発熱、くしゃみや咳が出るなどの症状が出ます。感染力は非常に高い病気ですが症状は比較的軽い場合が多く、ケンネルコフの原因の一つです。

・犬コロナウイルス感染症

感染経路:感染した動物の唾液や血液などの体液を介して口や鼻から感染します。

症状:嘔吐、オレンジ色の水のような下痢をすることがあります。この犬コロナウイルスは犬特有のもので、現在人の間で感染が拡大している新型コロナウイルス(COVID-19)とは異なるウイルスです。基本的に症状は軽い場合が多い病気で、1週間から10日ほどで回復することが多いです。

・犬レプトスピラ症

感染経路:ネズミなどの感染動物の尿で汚染された水を飲んだり、川で泳いだり、直接触れたりすることで口や皮膚から感染します。

症状:発熱、白目からの出血、嘔吐、下痢などの症状が現れます。症状が急速に進行し、急に亡くなってしまうケースもある危険な病気です。また、腎臓や肝臓の機能が低下することがあり、回復した後も機能が低下した状態が続くこともあります。レプトスピラ症はネズミの尿から感染することが多いため、ネズミが生息する山や川など自然豊かな場所で感染することが多いです。また、人にも感染する人獣共通感染症です。

<猫のコアワクチン>

・猫汎白血球減少症 猫パルボウイルス感染症

感染経路:感染した動物の便を介して口や鼻から感染し、致死率が高い病気です。

症状:発熱、元気がなくなる、嘔吐や下痢をするなどの症状が現れ、白血球の減少が認められます。感染力が高い病気で、若い猫ほど症状が重くなりやすく、呼吸困難や急性心不全により突然亡くなることもあります。

・猫カリシウイルス感染症

感染経路:感染した動物がくしゃみや咳をし、それの飛沫を吸い込むことで感染します。

症状:発熱、食欲が落ちる、元気がなくなる、鼻水や涙や涎がでるなどの症状がみられ、口の中に潰瘍ができることがあります。猫の代表的な伝染性の呼吸器系疾患、いわゆる猫風邪と呼ばれる猫の上部気道感染症候群の原因の一つになります。感染率が高いため、猫を複数頭飼育している場合は注意が必要です。

・猫ウイルス性鼻気管炎

感染経路:感染した動物がくしゃみや咳をし、それの飛沫を吸い込むことで感染します。

症状:涙や鼻水、くしゃみがみられ、子猫で重症になることがあります。重症化すると肺炎や呼吸困難、角膜炎を引き起こします。感染率が高く、猫の上部気道感染症候群の原因の一つです。

<猫のノンコアワクチン>

・猫白血病ウイルス感染症

感染経路:感染した動物に咬まれたり、唾液を介したりして飛沫感染します。

症状:元気がなくなる、食欲が落ちる、下痢や嘔吐の症状がみられ、口の中に潰瘍ができることがあります。貧血、肺炎を引き起こしたり、免疫機能が低下するため歯肉炎になったり、感染症に感染しやすくなったりします。完治する治療法はなく出た症状に合わせて治療を行います。

・猫クラミジア感染症

感染経路:感染した動物がくしゃみや咳をし、それの飛沫を吸い込むことで感染します。

症状:主に眼に症状が出ることが多く、涙や目やにが出たり目の充血、腫れがでたりなど結膜炎の症状が出ることがあります。そのほかに鼻水が出る、咳やくしゃみをするなどの症状もみられます。猫の上部気道感染症候群の原因の一つです。

・猫免疫不全ウイルス感染症

感染経路:感染した動物に咬まれたり、唾液などの体液を介したりして口から感染します。

症状:発熱や下痢、口内炎などの症状が現れ、免疫が抑制されることによってほかの感染症に感染しやすくなります。完治する治療法はなく出た症状に合わせて治療を行いますが、進行が比較的遅いため感染してから症状が出るまで時間がかかることもあります。

また、現状のワクチンでの予防効果ははっきりしていません。

 

ワクチンはいつ打てばいいの?

初めてのワクチンは生後8~9週齢で接種することが推奨されています。子犬、子猫に感染すると重篤な症状を示し、最悪の場合死に至る感染症もあるのでしっかりと予防をしましょう。

1回目のワクチン接種から約4週後に2回目のワクチンを接種、2回目のワクチンから約4週後の生後14~16週齢またはそれ以降に3回目のワクチンを接種し、3回目のワクチンから12か月後に接種します。

その後はコアワクチンに関しては3年に1回、ノンコアワクチンに関しては1年に1回接種します。

 

何週齢から接種できるの?

ワクチンが接種できるようになる期間には個体差がありますが、移行抗体の能力が低下する生後8~12週齢と言われています。移行抗体があるときにワクチンを接種しても十分な効果は発揮されません。

 

何種のワクチンを選んだらいいの?

何種類のワクチンを接種したほうが良いのかはご家族の生活環境やライフスタイルによって変わってきます。当院で取り扱っている犬のワクチンは5種ワクチンと7種ワクチンがあります。

5種ワクチンは犬ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス(2型)感染症、犬パルボウイルス感染症、犬パラインフルエンザウイルス感染症の予防ができます。

7種ワクチンは5種ワクチンに含まれるものに加え、犬レプトスピラ病のカニコーラ型とイクテロヘモラジー型が予防できます。普段キャンプに行ったり、川で遊んだり、牧場へよく行ったりする場合は7種の接種をお勧めしておりますが、そのような場所に連れて行かないようであれば、5種ワクチンで十分です。

当院で取り扱っている猫のワクチンは3種ワクチンです。3種ワクチンは猫汎白血球減少症、猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎の予防ができます。また、5種ワクチンでは3種のワクチンに含まれているものに加え、猫白血病ウイルス感染症、猫クラミジア感染症が予防できます。

しっかりとワクチン接種をして、予防できる病気にはかからないようにすることが大切です。

 

この記事を書いた人

増子 奈那(愛玩動物看護師)
SNS管理の中心スタッフとして当院の最新情報などを発信している。より多くの方に親しみをもってもらうためInstagramのリール動画作成に注力中。可愛い動画を投稿しているので一度見てみてください。一緒に暮らしているダックスフンドのオールくんはとても人懐こく、どこでもお腹を見せてくれるみんなの人気者。趣味はバウンドコーデ。