現役獣医師に聞く!獣医師を目指す後輩に伝えたいこと

動物が好き!獣医師になりたい!獣医師を目指して一生懸命勉強中です!

でも実際の現場はどうなの?自分はちゃんとやっていけるの?等々・・・

希望でいっぱいだけど不安な事もたくさんある。なんていう方も多いのではないでしょうか?

今回はそんな獣医師を目指す方々へ伝えたい事を現役獣医師に聞いてみました。

獣医師を目指した理由は?

小さい頃から犬猫を飼いたかったのですが、両親ともに幼少期に飼育していた犬を亡くした経験から子供たちにその時の悲しみを味合わせたくないとのことで飼育させてもらえませんでした。

今思えば安易だったかなと思いますが、それならば自分が治療をして亡くならない様にしてあげれば良いんじゃないかという考えから目指し始めました。

現在は私の子供に命の大切さを学んで欲しいので猫を飼っています。

これまでの経験や実績と当院で任されていることは?

大学を卒業して数年間1次診療施設で診療していましたが、狭い環境下で獣医療に没頭しているだけでは考え方や知識が偏る可能性があると考え、さまざまな専門診療科がある大学病院での研修医の道を選びました。専門の先生のそばで診断、治療への思考や説明の仕方などをたくさん学ばせていただきました。

その後は、大学病院を離れていわゆる1.5次診療施設へ移りました。紹介症例なども含めて重症の犬猫を診察する機会も増える中で、やはり専門医の先生の元での持続的な研鑽は必要と感じ、週1回は大学病院の腫瘍科に所属して研修を続けています。

当院での診療では特に外科、腫瘍科を担当するとともに、チーム医療として動けるように動物看護師教育にも力を入れています。

動物看護師教育ではモチベーションと自愛の精神を維持できるようにフォローしていきたいと思っています。

力を入れている分野は何ですか?

基本的にはどんな病状の子にも対応できるように全ての分野において診察、治療ができるようにしていますが、特に腫瘍科、外科に関してはより知識と技術を研鑽していくよう意識しています。

犬猫の高齢化が進んでいる中、死亡原因として大きいのが腫瘍です。全身どこにでもでき、命に関わる病気であり、勉強しても追いつかないほど奥深いのでやりがいが大きいと感じます。亡くなった子の家族の心のケアもとても大切です。

学生の頃のイメージと実際に獣医師として働いて感じた違いは?

医療と同様で、獣医療も日進月歩で常に新しい情報や知見がアップデートされていて、生涯勉強をし続ける分野なのだなと感じています。10年前に当然だった治療が今ではやってはいけない治療になっているなんてことがたくさんあるので、いろんな情報にアンテナを張り続けることは学生の頃にイメージしていた以上でした。

学生時代は病気の勉強が主になりますが、実際の診療現場では予防医療や普段の生活での悩み相談のようなことも多く、お医者さん的な立場とともにカウンセラーのような振る舞いも必要だなと思っています。

人の話を聞ける、意見を言えるコミュニケーション力が求められます。

最近では動物看護師さんの授業でカウンセリングも取り入れられているようです。

今までで嬉しかったことは?

病気の子が治療をしたことで元気になってくれて、次の診察時に楽しそうに来院してくれた時にはうれしく思います。ご家族に「この子は病院と先生が好きなんですよ」なんて言われるとにんまりしますよね(笑)。

また、最後を迎えてしまった子のご家族が、先生に巡り会えてよかったといってくださった時は感慨深くなります。

今までで大変だったことは?

犬猫の寿命は決して長くはないため、動物病院にいるとどうしても亡くなる子を沢山みることになります。もちろんご家族と一緒に治療をしてきた私たちも悲しい気持ちでいっぱいになるのですが、そう言う状況の直後に3ヶ月の子犬の診察にすぐに行かなくてはいけない時など、心の切り替えが難しいなと今でも感じることがあります。

体力的に辛かったことで言えば、二夜連続で入院の子を治療し続けた時です。症例の状態によっては24時間つきっきりで看護しなくてはならないこともあり、日中は通常の診療や手術をしながらだったので大変でした。

30代になってからは体力作りのためにジム通いと自転車通勤を始めました(笑)

新人時代にうまく説明ができておらず治療に対するご家族の理解が得られておらずクレームになってしまった時は自分が不甲斐なく悲しくなったことがあります。病気の説明ばかりでコミュニケーションが取れていなかったんだと今は思います。その当時の病院の院長が「まだ新人だけど一番この子のことを診て考えてくれている先生だし、治療方針としても間違っていることはしていませんよ。」って説明してくれて嬉しかった思い出があります。

どんなことにやりがいを感じますか?

僕の中で獣医療の一番のやりがいは、帝王切開で生まれるところから腎不全、心不全、腫瘍などで亡くなってしまう直前まで、その子の生涯を自分が主治医だと言い続けることが出来る仕事だと思えるところです。

まさしくゆりかごから墓場まで診ることが出来る。十医(誤字ではありません)と言われることがあるようにいろんな診療科目の知識を幅広く持たなくてはいけないが、その分、生涯にわたって治療に携われることは獣医師のやりがいにつながることかなと感じています。

あとは、そもそも動物が好きでついた職業なので、犬猫に触れられる仕事という意味では毎日幸せです。

獣医師を目指している学生さんへひとこと!

学生時代と実際に働いての違いでも少し話しましたが、コミュニケーション力をつけることはとても大切です。そのためには学生の間に色んな人と話したり、旅行をしたり、色んな経験をたくさん積んで欲しいと思います。その経験が必ずコミュニケーション力をつけてくれます!

この記事を書いた人

田川 麻衣子(受付)
キャバリアが好きで愛犬とともに地方で行われるオフ会に参加するほど。通勤バッグから小物まで様々なものをキャバリアグッズで統一。当院の顔として常に笑顔と気遣いを忘れない丁寧な接遇がモットー。また当院のHPの作成やSNSの発信などといった広報も担当している。