赤ちゃんがいるお家での犬と猫の暮らし方

ペットと赤ちゃんが一緒に暮らす事のメリット

犬や猫を飼っているご家庭で飼い主に赤ちゃんが産まれる場合や、子供のいるご家庭が犬、猫を迎えたいといったことがあるかと思います。

犬や猫を飼う事は子供に良い影響をたくさん与えてくれると言われています。ペットとの触れ合いによって子供の精神面が成長することは一番期待したいですよね。

命の大切さを理解できたり、自分よりも小さい生物に優しくできたり、感受性が豊かになったという声も多いようです。また、お世話をする事で責任感も芽生えます。

その他に赤ちゃんの免疫力の向上という面でも、咳や鼻炎などの呼吸器の感染症にかかる確率が30%低くなる、アトピー性皮膚炎にかかりづらくなるという調査結果もあります。

犬や猫にとっても子供と暮らすことで遊び相手ができ、運動不足解消につながります。

飼い主は子供に対する犬や猫の優しい一面が見られるかもしれません。

 

注意しなければいけない事

動物も人も感染しうる病気を「人獣共通感染症」といいますがそれらに対する予防方法をしっかりと知っておきましょう。

※妊娠中に気をつけたいトキソプラズマ症

母親が初めて妊娠中にトキソプラズマに感染し胎盤を通して胎児にも感染してしまうことを「先天性トキソプラズマ症」といいます。

トキソプラズマに感染している肉を加熱不十分な状態で食すことや、感染している猫の排泄物を触ることで感染してしまうことがあります。

今までに猫を飼育していた妊婦さんはトキソプラズマ抗体を持っていることが多いのですが、初めて猫の排泄物に触れるといったことがある場合は感染しないよう手洗いなどの予防対策をしっかりと行い注意して下さい。

 

一緒に暮らしてみるまで分かりませんが赤ちゃんが犬、猫アレルギーを発症してしまう可能性もあります。アレルギー体質にならない為に小さい頃から一緒に暮らすという意見や、なるべく避けた方がいいという意見もあり実際のところはよく分かっていません。

もしアレルギーを発症してしまってもスペースを別々にしたり空気清浄機を使ったり、掃除をこまめにしたり、犬や猫を定期的にシャンプーして清潔に保つ事でアレルゲンを減らすことができ、子供の成長過程でアレルギーが治ることもあると言われています。

 

また、どんなにお利口な犬でも赤ちゃんと犬だけにする事はしない方がよいでしょう。

赤ちゃんがハイハイで動くようでしたらトイレや食器を触らないようにする為にもベビーフェンスやベビーベットなどを使うのも良いと思います。

しかし、猫に関してはジャンプ力があるので簡単にフェンスを飛び越えることができ、ベビーベットにも登れてしまいます。猫は高い所が好きなのでキャットタワーなど高い所に安心できる場所を作ってあげるとベビーベットよりも高い所にある自分の場所を好んでくれるようになるかもしれません。

その他に犬、猫のしつけも大切です。「アイコンタクト」「待て」「お座り」といった基本的な事はしっかりと出来るようにしましょう。基本的なしつけができていると何かの拍子に興奮状態になってしまっても落ち着かせやすくなります。また、赤ちゃんの怪我の予防や、妊婦さんのお腹に負担をかけないようにする為にも、普段から人に飛びつかせないようにする、お腹に乗せないといったしつけも大事です。

 

飼い始める時期や赤ちゃんに会わせるタイミング

妊娠中に新しく子犬や子猫を飼う場合は、しつけが大変で肉体的にも精神的にも疲労する可能性があるので注意が必要です。

子犬、子猫はまだ落ち着きがなく素早く動き回るので足元の見えづらい妊婦さんが怪我をしてしまうといったことも考えられます。

赤ちゃんが生まれてから飼う場合も出産直後は赤ちゃんのお世話と子犬・子猫のお世話で手が回らなくなってしまうことが考えられる為、飼い始めるタイミングはしっかりと検討しましょう。

 

すでに飼われている場合、赤ちゃんと接触する最適なタイミングというのはありませんが1ヶ月間は赤ちゃんの免疫力などを考えて触れさせないようにするといいかもしれません。

ご家族の意向として出産直後だけはペットホテルやご実家へ預ける方法もあるかもしれませんが、お家に戻った時に突然赤ちゃんがいたら混乱してしまうかもしれません。可能であれば赤ちゃんと犬猫の居住スペースを分けるなど、お家の中で一緒に暮らせる工夫ができるといいかと思います。

猫に関しては警戒心が強く環境の変化があるとよりストレスを感じやすいので、猫だけのスペースを作ったりして適度に距離を置くことが好ましいです。

猫が赤ちゃんに嫉妬して赤ちゃんに危害を加えてしまうのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、飼い主から十分な愛情を受けて育っている猫は自分よりも弱い子猫に対して寛容であることが多いので、赤ちゃんに対しても攻撃的になることは多くはないように思います。

また去勢されていない雄猫は縄張り意識が強い為マーキング行動をしてしまうかもしれないので去勢手術を事前に実施してあげてください。

 

犬、猫にとっては飼い主に構ってもらえない事でストレスを抱えてしまうかもしれないので、赤ちゃんが生まれても可能な限り以前と同様の散歩や大好きな遊びをしてストレスを溜め込まないようにしてあげましょう。

赤ちゃんとペットの同居は気をつける点は多々ありますが子供が成長した時に良いパートナーになってくれると思います。当院にも犬、猫と赤ちゃんの同居を経験しているスタッフがおりますので、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

南 智彦(獣医師 外科部長)
日本獣医がん学会、日本獣医麻酔外科学会に所属し外科部長として多くの手術症例を担当。犬猫からよく好かれ診察を楽しみにして来てくれることも多く、診察しながらずっとモフモフして癒してもらっていることも。見かけによらず大食漢でカップ焼きそばのペヤングが好き。1児の父であり猫と一緒に暮らしている。