犬のしつけのポイントは上手な褒め方・叱り方

しつけはとても大切です。よく耳にする「オスワリ」「マテ」などは、できると外出先でも役立つ基本コマンドです。

でも…しつけって難しい!その通りです。

重要なポイントは褒め方叱り方です。

今回は犬のしつけ方法ではなく、褒め方と叱り方についてお話します。

 

☆褒め方・叱り方のコツ

①タイミング

ただ褒める、叱るだけでは犬には伝わりません。

例えばトイレトレーニング中できちんとトイレでの排泄が成功したとき、ちょうど飼い主さんは近くにいなかったとします。数分後、飼い主さんがトイレできちんと排泄ができているのを見つけ、「よくできたね!」と褒めながらおやつを与えました。

しかし、犬は何に対して褒められているのかもう分かりません。

反対に、トイレを失敗してしまった場合も同じです。数分後には叱られている理由は分かりません。

ここで重要なのはタイミングです。

その行動をした瞬間に声をかけたり、反応を止めることで、犬は「この行動をすればこうなるんだ」と学習していきます。

叱る際は特にタイミングが重要であり、犬によっては人を怖がるようになったり攻撃的になることがあるため注意が必要です。

②ワード・声色・動き

犬に声をかけるとき、どのようにしていますか?

犬は短い言葉は聞き取りやすく、特に第一音を意識しています。

「オスワリ」 → 「オウアイ」

「マテ」   → 「アエ」

しつけの際は必ず同じワードを使うようにしましょう。

叱る際に「ダメ」「NO(ノー)」「いけないよ」などの多くのワードを使うと犬は混乱します。雰囲気で何となく伝わることはありますが、あくまでも何となくなのです。

ご家族全員でしつけに使うワードは揃えるようにするとよいでしょう。

犬は声色でも雰囲気を感じ取っているので、褒めるときは高めに、叱るときは低めに声をかけるように意識すると伝わりやすいです。

また、別の例として、声をかけずに対応する方法もあります。一緒に遊んでいる最中に勢いよく犬が人に飛びついてしまった時、飛びついた瞬間に手で大きく振り払ったりせず、静かにその場を離れ遊ぶのを止めるという対応です。「飼い主と遊ぶ」という楽しいことが飛びついたことによって消えるということを学習し、次第に飛びつく行動は減っていきます。

人の声だけでなく、音の種類や動きによって伝えることができます。

しつけツールとしてクリッカーを使用するのもよいでしょう。

クリッカーを使用する際、はじめのうちはおやつをセットにするようにし、この音が鳴ると自分にとって良いことがあるということを覚えてもらいましょう。

ごはんが大好きな子であれば、ごはんの際にクリッカーを鳴らすのもよいですね。

③ご褒美

褒めるときはご褒美をあげたい!

犬とのコミュニケーションツールとして、おやつなどのご褒美は大切です。

ただし、与え方には十分注意が必要です。

褒めるときに必ずおやつを使うと、おやつばかり欲しがってごはんを食べなくなったり肥満を誘発するリスクが上がります。

おやつを多用しすぎずワードで褒める、おやつの代わりにごはんの分から10g使うなどがよいでしょう。また、おやつは小さくちぎれるタイプなどがよいです。

この行動は積極的にできるようにしたい!というときは100%おやつが出てくるようにし、行動を強化することも可能です。

 

☆強化

強化とはその行動を積極的に行うようにすることです。

強化には正と負があります。簡単に言うと、正=与える 負=取り除くという意味です。

ご自宅でのしつけで実践しやすいのは正の強化、つまり、目的の行動をしたらご褒美を与えてその行動を増やすという方法です。

褒めるワード、おやつ、一緒に遊ぶなど犬にとってのご褒美は十人十色です。

正(与える)=褒める 負(取り除く)=叱るではないので、行動までの出来事や回数をよく見て対応することが大切です。とても奥が深いですね。

 

☆やってしまいがちな叱り方

これまでもお話したように、犬は人と同じく学習していきます。

まず大前提として、しつけと訓練は違います。犬のしつけや訓練のプロは褒美と罰のタイミングを見極め、時に罰が必要な場合には適切な方法で対応します。

以下のような叱り方は、逆効果となったり、犬が恐怖心を抱いてしまう可能性もあるのでやめましょう。

・マズルを掴む

・叩く

・蹴る

・抑えつける

・怒鳴る

・ダメだよーとゆったり叱る

・名前を呼びながら叱る

 

☆叱り方の一例と対応

どのように叱るかは犬の性格やテンションにより使い分けが必要となりますが、一例として以下のような叱り方があります。

・「NO(ノー)」と短くはっきりと声に出す ※ワードは1つにしましょう

・無視をする、反応しない

叱るだけでなく、まずはなぜその行動をしたのか考えてみましょう。

トイレの失敗 → トイレが汚れていた? 体調が悪い?

いたずらをした → 犬が届く場所にいつもと違う物が置いてあった? など

可能な限り要因を減らすことで、叱る回数も減らすことができます。

 

☆天罰

決して推奨はしていないのですが、叱り方のひとつとして天罰という方法もあります。

天罰とは、人が与えた刺激のように見せず犬にとってマイナスなことが起きるようにすることです。

・大きな音を鳴らす

・嫌いなにおいがする

・嫌な刺激がくる

しっかりトレーニングを習得したプロのトレーナーが行うのはよいのですが、一般の方が行うと恐怖心が強くなったりお部屋が嫌いになったりストレスが強くなることもあるので、基本的には行わない方がいいと思います。

 

犬と一緒に生活する中でしつけはとても重要ですね。

しつこいようですが、これまでお話をしたように犬は学習し、条件付けで物事を覚えていきます。

第一に、しつけは人も犬も楽しくワクワクするようになることが大切です。犬の年齢や性格によって適切な褒め方、叱り方は異なります。しつけは簡単ではありません。時にはしつけのプロや動物病院に相談することもひとつの選択肢ですので、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

藤咲 舞(愛玩動物看護師)
当院の看護主任として日々奮闘中。責任感が強く真面目な性格と自負しており、ご家族からも頼られることが多い。小学校などで子供たちと犬との触れ合いの場を設ける動物介在教育にも力を入れており、休日には愛犬とともに参加している。ご家族やペットのお名前を覚えるのが得意で、スタッフからも「人間カルテ」と言われる記憶力が自慢。