犬や猫でチューブからごはんをあげる方法 ~経鼻カテーテル編~
食欲がなくてごはんと一緒にお薬を飲ませられないとき、内服薬は注射で代用できることが多いですが、ごはんは注射することができません。
病気などが原因で食欲が低下してしまった場合、栄養を取らなければ体力を消耗していくばかりです。では、どうしたらよいのでしょうか。
今回は食欲が低下しているとき、口からご飯を食べられないときでもチューブを通じてごはんをあげられる、経鼻カテーテルについて解説します。
経鼻カテーテルとは?
食欲がない犬猫にごはんを食べさせる方法として、シリンジ(注射器)を使用してペースト状にしたフードをお口の中に入れる強制給餌という方法があります。しかし、嫌がって暴れる、衰弱していて飲み込む力が弱まっている、口腔内に外傷や腫瘍などがあり物理的に食事を摂れない場合などに行う処置として、鼻からチューブを通して胃に流動食を入れる経鼻カテーテルがあります。経鼻カテーテルは、鼻の穴から数mmの太さの細いチューブを入れて、液体のフードなどを胃まで届ける方法です。
他に、同様の目的で首から食道に穴を通す経食道カテーテル、腹部に穴をあける胃瘻(いろう)チューブなどの方法を選択することもありますが、経鼻カテーテルは比較的簡単に設置が可能であり犬猫への侵襲が少ないことがメリットです。胃瘻チューブについてはこちらをご覧ください。
経鼻カテーテルの設置方法
多くの犬猫では全身麻酔を使用せず、必要に応じて鎮静をかけた上で鼻腔に局所麻酔薬を滴下し、数分で装着可能です。
鼻から胃へ通すカテーテルは先端が胃の入り口(噴門部)付近になるようポジショニングします。設置後にレントゲンでカテーテルの先端の位置を確認し、抜けてしまわないよう額や頬あたりに固定します。
設置後は後ろ足で掻いて外れてしまわないようにエリザベスカラーを着用しておきます。カテーテルの劣化や衛生上の観点から長期使用には向いていないため、1週間程度で反対側の鼻へ交換することが推奨されています。
経鼻カテーテルでの食事方法
食事はシリンジを使って行います。経鼻カテーテルのデメリットとして細いカテーテルを通して注入していくため、途中で詰まらないよう流動食を準備する必要があります。
液体状の流動食、ペースト状のウェットフードなど様々なタイプの製品があるので、獣医師と相談して決めましょう。食欲がある場合には普段通りお口から食べられますので、好きなものを食べられる楽しみは変わりません。
フードと一緒に粉剤も注入することができ、投薬が苦手な犬猫にはストレス要因を減らしてあげられます。
自宅で注意すること
主に入院中の食事管理として用いられる経鼻カテーテルですが、場合によってはご自宅で管理していただくこともあるかもしれません。
ご自宅で注意することは、流動食や水が気管や肺に流れて誤嚥性肺炎や窒息を引き起こす可能性があるため、カテーテルの設置箇所がずれていないか確認し、安静時に急がずゆっくり注入することです。
食事の準備方法や1回量、回数、衛生管理の方法などは丁寧にご案内しますのでご安心ください。
ただし、くしゃみや鼻水、カテーテルを固定している部分の皮膚の炎症、嘔吐、咳などの症状がみられる場合やご自宅での管理が難しい場合はすぐに獣医師に相談しましょう。
まとめ
経鼻カテーテルは、犬猫がお口から食事を摂れなくなった際に栄養補給を目的として使用される重要な医療器具です。鼻から食道に挿入され、液体状の栄養を直接胃に送り込むことができます。犬猫の状態や必要とされる期間によって、他の栄養補給方法(食道チューブや胃瘻チューブ)が推奨される場合もあります。
安全に使用していただくには、獣医師の指示に従い適切なケアと観察を行っていただくことが重要です。経鼻カテーテルを通じた栄養補給は、回復を支援する重要な手段となりますが、同時に愛情と忍耐も必要です。健康状態に不安がある場合は、迷わず獣医師にご相談ください。
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