甘くておいしいチョコレートが犬や猫にとっては実は危険?! チョコレート中毒

ひとの身近にあるチョコレート。誤食することがないように手の届かないところに置いておくのが最適ですが、万が一食べてしまった!ということがあった場合、どういう症状が出てどのような処置や治療が行われるのか見ていきましょう。

甘い匂いで誘惑してくるおいしいチョコレート。なぜ人間は大丈夫なのに、犬猫にはチョコレートがだめなのでしょうか。人間では分解できるテオブロミンやカフェインなどのメチルキサンチンを犬猫では分解するスピードが非常に遅いため体内に長時間残り中毒症状が起こります。

チョコレートの種類によって含有量も異なり、少量でも中毒を起こし死に至る場合もあるので油断はできません。チョコレート入りのパンやケーキは、チョコレートがどれくらい使われているのかはっきりわからないため注意しましょう。

成分が吸収されるまでに約1~2時間、体の中には3~4日残ると言われています。

 

チョコレート中毒の症状

チョコレートに含まれるテオブロミンという成分が中毒症状を起こします。嘔吐、下痢などの消化器症状や興奮、痙攣などの神経症状、不整脈がみられ命を落とすこともあります。

テオブロミンの致死量はおよそ100~200mg/kgと言われていますが、1/5程度の量でも症状が出ることもあり、個体差もあるため一概に言うことはできません。テオブロミンの量はチョコレートに含まれるカカオの量によって変わってきます。ハイカイアオのチョコレートはミルクチョコレートの4倍近く含まれていることがあり、少量でも非常に危険です。

治療

チョコレートでの中毒症状は解毒薬がありません。食べてから1時間以内に吐かせる、活性炭などの吸着剤を飲ませる、痙攣や不整脈を止める薬の投与や点滴、場合によっては胃洗浄入院管理によって点滴をしながら経過観察が必要になることもあります。

 

どれくらい食べたら危ないの?!

チョコレートに含まれるカフェイン量はコーヒー、紅茶、コーラに含まれる量よりも少ないためテオブロミンの量で見ていきましょう。

テオブロミンの致死量の目安は、犬の体重1kg当たり100~200mgと言われていますが、20mgでも症状が出る場合があります。

市販の板チョコはおおよそ50gで販売されています。チョコレートの種類によってかなり差があることがわかりますね。

 

食べてしまった時の対処法

ほとんどの場合は盗み食いによる事件が多く、食べられないための注意が必要ですが、もし食べてしまった場合は病院に連絡をするようにしてください。チョコレートを食べた時間とチョコレートの種類と量を確認しておき、今の状態とあわせて伝えます。

電話の後は獣医師の指示に従い応急処置や病院の受診をするようにしてください。受診のときには食べてしまった残りや包装紙を持参したり、正確に伝えることが適切な治療へとつながります。

中毒になってしまってからでは命を落とす可能性もあるので、誤食を疑う場合はすぐに動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。

 

予防と対策

チョコレート中毒を防止するためには、ワンちゃん猫ちゃんが食べられないような環境作りが最も大切になってきます。お留守番中にテーブルの上にあるチョコレートを見つけて食べてしまった、食べてはいけないという知識がないお子様やご年配の方が誤ってあげてしまったというケースも多くみられます。チョコレート製品を食べられないようにしっかり管理することが大事です。

チョコレートはにおいも強く比較的容易に発見されます。犬や猫が開けられないような場所に保管しておくなどの対策をとりましょう。

この記事を書いた人

荻野 直孝(獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。