犬のスケーリング処置

当院で実施した外科症例について紹介します。

今回はイヌのスケーリング処置の症例です。

※術中写真が表示されますので苦手な方はご注意ください。

 

プロフィール

犬 ミニチュアダックスフント 避妊雌 5歳

 

来院理由

歯石取り(スケーリング)処置

 

既往歴

皮膚炎、食物アレルギー疑い

 

検査

身体検査上、歯周病による出血や動揺歯はみられなかった。

歯肉に軽度な赤みがあり、臼歯を中心に歯石が付着していた。

抜歯の必要性がある場合とない場合では、歯科処置にかかる時間や疼痛の程度が大きく変わる。そのため、ある程度予測するために術前検査として口腔レントゲン検査を行っている。ここでは写真は割愛するが、明らかに抜歯が必要な歯は認められなかった。

処置前の様子。茶色い歯石が付着している。

 

診断

軽度の歯周病

 

歯科処置

処置直前に麻酔をかけた状態で歯のレントゲン撮影を改めて行い、歯および顎骨への影響の程度を画像上で確認する。さらに、歯周ポケットの深さを確かめることで、最終的に抜歯するか否かの判断をする。今回は、抜歯の必要がある歯はないと判断された。

スケーラーを用いてスケーリング(歯石を除去する処置)を行った後、ポリッシング(歯を研磨する処置)を行った。

麻酔をかけた状態で撮影したレントゲン画像。歯根まで観察できるよう、頭部を傾けて撮影する。

抜歯が必要と判断された別の症例のレントゲン画像。歯周病の影響で顎骨が溶けている。

処置後。茶色い歯石はきれいに除去された。

 

処置後の経過

全身麻酔からの覚めは良好で、口腔内に出血や腫れ等はみられなかった。また、自力での歩行も問題なかったことから手術当日の夕方退院しました。

 

歯周病について

3歳以上の犬猫の8割以上が歯周病に罹患しているといわれています。歯周病が進行すると歯がぐらぐらする、抜ける、または膿が溜まった場合根尖膿瘍となり、進行すると皮膚に穴が開くこともあります。また、歯周病は口腔内の問題だけではなく、進行した状態では菌が身体に入り込み全身に影響を及ぼします。

 

歯周病にならないためにはまず、歯磨きなどの日常のケアがとても重要です。

歯周病や歯磨きについて詳しくはこちらの記事もご覧ください。

しかし、たとえ毎日歯みがきをしていたとしても、どうしても歯石はついてしまうものです。一度ついた歯石は歯みがきで取り除くことはできないので、歯石取り(スケーリング)の処置が必要になります。今回紹介した症例は、「生涯歯周病による抜歯ゼロ」を目標に、1,2年に一度スケーリング処置を実施している症例になります。みなさんのおうちの犬や猫も健康な歯を一生保つために毎日のケアや定期的なスケーリング処置を行っていくことが理想的です。

 

歯石取り(スケーリング)の処置は行徳院、新鎌ケ谷院どちらでも可能です。歯みがき等ケアに関しても、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

渡部(獣医師)
幼少期から生き物や自然と関わることが好きで、昆虫や魚類、爬虫類と様々な生き物を飼育している。中でも10年間一緒に過ごした大型犬はもはや「妹」。獣医師として特に腫瘍の分野に力を入れたいと考え、日々勉強に励んでいる。甘党、ディズニー好きという女子っぽさもありつつ実は恐竜好き。