うちの犬、うちの猫の体重は大丈夫? ~ペットのごはんと運動の話~

コロナ禍で巣ごもりが多くなってペットと触れる時間が多くなりました。人間もコロナ太りが気になるけど、一緒にいるペットにもついついおやつを与えてしまったり、外出自粛で散歩が減っていませんか?ペットの背中を撫でてみると「あれ?ちょっと肉付きが良くなった?」と思うことも。今回はそんなペットのための体重管理のコツをお話しします。

なぜ体重管理が必要なの?

人と同じように肥満は万病のもとです。

肥満の時に体にどのようなことが起こるのか挙げてみました。

・内臓脂肪で臓器が圧迫されることにより血流や代謝が妨げられ、心臓に負担がかかる。

・代謝が悪くなることで糖尿病や狭心症、脂肪肝につながる。

・首周りの脂肪は気管を圧迫し、呼吸がしにくくなる。

・皮膚のシワで蒸れて皮膚炎になったり、毛づくろいをしづらくなることで皮膚コンディションが低下する。

・脂肪が多いとお腹にしこりがあっても触れない、超音波検査の検出率が落ちるなど健康診断の際の検査が行いにくく、病気の早期発見がしにくいことがある

・体重が増えることで肘や膝の関節、腰に大きな負担がかかる

・重さで立ち上がるのが億劫になったり散歩も行きたがらない、遊ばなくなったりするため、トイレにもあまり行かなくなり排尿トラブルを起こす。

適切な体重管理の方法

(1)体重を定期的に測りましょう

家で定期的に体重を測りましょう。理想としては2週間に1度、少なくとも1か月に1回は測ることをお勧めします。

 

<ご自宅でできる体重の測り方>

抱っこができる場合は抱っこしたままご自身ごと体重計に乗り、その後自身の体重を差し引くとペットの重さが分かります。

抱っこができない場合は病院で測ってもらいましょう。診察の必要がなくても大丈夫。体重測定だけでご来院いただいても問題ありません。病院に慣れる意味も込めて定期的に行くとよいでしょう。

当院では月に1度の定期健診をおすすめしています。体重測定とともに是非ご利用ください。

また測った結果をグラフ化すると体重の変動が一目瞭然となりダイエットの意欲がアップするでしょう。

(2)獣医と相談しながら適正体重を知りましょう

次は体形チェックです。

BCS(ボディコンディショニングスコア)と呼ばれる適正な体形を知るための表があります。

この表とペットの体形を見比べて、今はどれくらいの肥満度(もしくは痩せ)なのかを把握しましょう。

体重や体形は一概に「この犬種なら○kg」という決まりはありません。

年齢や持病、運動量を考慮してその子1頭1頭に合わせた目標体重を病院スタッフと一緒に見つけていきましょう。

(3)一日に必要なカロリーを計算してみましょう

まずは今現在、一日に口にしている食べ物の量を把握しましょう。朝昼夜のごはん、おやつ、ハミガキガムなど一日にどれくらいの量を口にしていますか?おじいちゃんおばあちゃん、お子さんなど家族がいる方はそれぞれが与えているおやつや人間のご飯のおすそ分けなどもまとめて書き出してみましょう。

目標体重が決まったら次は理想体重に近づくためのご飯の調整です。

人の場合は成人男性で1日に必要なカロリーはおよそ2200kcalと言われています。しかしペットの場合は犬種も大きさもバラバラ。年齢や運動量も異なるので、目標体重に合わせたカロリー計算が必要となってきます。

 

<カロリー計算の仕方>

√ルート計算のできる電卓を用意しましょう!目標とする体重で計算します。

体重(kg)×体重×体重で出た数値に√√(ルート)を2回押して最後に×70してください。

これは生きていくうえで基礎となる代謝量の計算式となります。(基礎代謝量:RER)

そこに年齢や運動量などを加味した係数をかけると一日に必要とするカロリーが算出できます。

ここで出た数値がその子にとって1日に必要なカロリーとなります。

 

(4)一日のごはん量を求める

上で計算した一日に必要なカロリーから実際に与えるごはんの量を求めます。ここでは販売されているフードを対象とします。

フードのパッケージには必ず成分表示が記載されています。そこには100g当たりのkcalが表示されています。

一日に必要な給餌量(g)=一日に必要なカロリー数(kcal)×100÷フードの100gあたりのカロリー(kcal)

フードのみで与えた場合です。おやつを与える場合は後述します。

 

(5)ごはんやおやつの食べ方を見直してみましょう

ごはんは1日何回与えていますか?おやつの量は決まっていますか?大抵の方は1日2回もしくは1日1回となる方が多いと思います。そしてその合間に袋に入っているおやつを与えたり人間のおかずのおすそ分けをしたり…

でもそれだと一日に食べている量が分からないばかりでなく、ダラダラ食べてしまったり、逆に一気に食べてしまったりするのでダイエットとは程遠くなってしまいます。

ごはんは1日2回、おやつは1日に必要なカロリーの10%にとどめるようにしましょう。ごはんの回数はその子の消化能力にもよります。内臓疾患のある子、幼齢や高齢の子に関しては消化能力が低いので一日に必要なごはん量を数回に分けて与えるのが良いでしょう。

おやつは1回量が多いよりも回数が多いほうが犬や猫にとっては喜ばれます。なるべく低カロリーのものを選び、小さくちぎったり、細かく砕いたりして少量を頻回に、もしくはトレーニングのご褒美として与えると満足感が得られやすくなります

食事をがつがつと一息に食べてしまう場合は食べにくい器の形状に替えてみるのよいとでしょう。

またカロリーの低いダイエット用のフードを与えることで通常のごはんよりかさが増えるので満足感が得られます。通常の食事でダイエットが難しい場合は獣医師が推奨するダイエット用のフードに切り替えることもお勧めです。

 

(6)運動量を見直しましょう

毎日長距離の散歩に行くのはなかなか難しい方も多いかと思います。可能な範囲で継続して行うことは運動不足解消や基礎代謝の上昇、さらにはコミュニケーションの充実にもつながります。

犬の場合は体の大きさや犬種、年齢や体のコンディションに合わせて継続して行うのが良いでしょう。

小型犬なら1回20~30分を1日2回、中型犬なら1回30分を1日2回、大型犬なら1回1時間を1日2回を目安にするとよいでしょう。

夏場の散歩は熱中症の危険があるので散歩途中で水分補給をすることと、地面の温度が十分に冷めた時間に行きましょう。また冬場は寒さで関節が硬くなりがちなので、けが防止のためにマッサージやストレッチを行ってから行きましょう。

コリー種やテリア種など元来の運動量がおおい犬種では普段の散歩に加えドッグランや砂浜などを利用して筋肉をつけるのもおすすめです。また、普段の散歩コースに坂道を加えると消費カロリーのアップとともに足腰の筋力アップにもつながります。

猫の場合は散歩に行くことは難しいので家の中で好きなおもちゃで一緒に遊びましょう。ねこじゃらしで追いかけっこやジャンプ遊びでも構いません。

円柱のペットボトルに5mm~1㎝程度の穴をあけ、おやつやドライフードを入れて、ねこが遊びながら転がすと1粒ずつでるようなしくみのおもちゃを作り食器の代わりにそのおもちゃでフードを上げることもお勧めです。

普段あまり遊ばない子にはごはんやおやつの置く場所を工夫してみましょう。例えば小分けにしたごはんやおやつを棚の上やキャットタワーの上など上下運動できるように高低差を利用した場所に置くと運動もかねることができます。老齢の子、足腰が悪い子、ジャンプ自体ができない子は無理のない範囲で設置しましょう。また棚の上に設置する場合は落下の無いように安全にも気を付けましょう。

 

ペットと一緒に運動をしたり、遊ぶことでお互いストレス解消につながったり信頼関係が深まります。また散歩を継続することでご自身の運動不足解消にもつながるかもしれません。

 

まとめ

急激なダイエットは禁物です。1か月に体重の5%程度の減量を目標にすると体に負担なくできるでしょう。また、過剰なダイエットは筋肉量が少なくなったり疲れやすくなったりすることがあるので注意しましょう。当院ではダイエットについての相談も承っておりますのでお気軽にご相談ください。

家族であるペットの健康を考え、無理なく楽しく長続きが出来るように体重管理をしましょう。

もしよろしければダイエット用の体重記録はコチラよりダウンロードしてお使いください。

この記事を書いた人

大森 慶子(愛玩動物看護師)
日々育児と仕事を両立するため健康管理に気を付けている。趣味はサイクリングや登山と休日もアクティブに活動。「正確な仕事は美しい環境から」をモットーに院内の環境整備やマネジメントに関して精力的に動く日々。院内のムードメーカーとしていつもみんなの笑顔の中心にいる。