腎臓はどんな働きをしているの?意外と知らない役割をご紹介します!

腎臓とは

犬猫の腎臓は腰よりも頭側にあり、背骨を挟んで左右に1つずつあります。形はソラマメに似たような形状をしています。腎臓の大きさは個体によっても違いますが、背骨の2.5~3.5倍が正常な大きさと言われています。

腎臓は表面に近い腎皮質(じんひしつ)と内側の腎髄質(じんずいしつ)の2層構造で構成されています。

腎臓にはネフロン(腎単位)という特殊な構造があり、犬では80万個、猫では40万個存在しています。

ネフロンは毛細血管と呼ばれる細かい血管が球状に絡まった糸球体(しきゅうたい)と、その糸球体を包む袋状のボーマン嚢(のう)、そして尿細管がセットになって構成されています。

また、腎皮質にある糸球体とボーマン嚢の2つをセットで腎小体と呼びます。腎髄質には尿細管と集合管があります。

身体から運ばれてきた血液は腎臓でろ過されます。ろ過によって栄養素と水分は体内へ運ばれ、不要になった液体や老廃物は尿となって体外へ排出されます。

腎臓は尿を生成する役割がよく知られていますが、他にも様々な機能が備わっています。

どの機能も重要で、正常に機能しなくなると身体に負荷がかかります。

 

腎臓のはたらき

腎臓には様々な機能がありどの機能もとても大切な役割を担っています。

どのような役割があるのか1つずつ見ていきましょう。

①老廃物の排泄

食事によって吸収された栄養素が分解されエネルギーとして利用されますが、その際に体内で利用されない老廃物が産生されます。

この老廃物を尿毒素といい、体内には不要な物質であるため、腎臓でろ過され尿となり体外へ排出されます。

腎臓の機能が低下してしまい、血液をろ過できず老廃物を体外へ排出ができなくなってくると尿毒症という命の危険が伴う病気を発症してします。

腎臓の機能が低下することで引き起こされる症状は様々ですが、尿毒症に陥った場合は既に腎臓の機能が正常の10分の1程度になっており全身に毒素が回っている状態なので早急な処置が必要です。

急性または慢性な腎臓障害を患っている犬猫で病態が悪化すると発症する可能性があります。

②水分量の調節

腎臓は余分な水分や電解質、老廃物を尿として体外へ排出するのと同時に、必要な水分や電解質を再吸収し身体の環境を一定に維持する働きをしています。

水分の出入りを調節し、身体の水分量をコントロールするポンプのような働きがあります。

腎臓の機能が低下してくると多飲多尿という症状がみられるようになります。

尿を濃縮できなくなるため薄い尿を大量にするようになります。そのため水分不足になり水をたくさん飲むようになります。

慢性腎臓病の初期症状で見られ、腎臓の機能も正常の4分の1まで低下しています。

③電解質のバランス

血液や体液に含まれるナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのことを電解質と呼びます。

5大栄養素のミネラルに属し、細胞の浸透圧の調節、筋肉細胞や神経細胞の働きに関わるなど身体にとって重要な役割を果たしています。

腎臓はこれらの電解質の量を一定に保つ働きをもっています。腎臓の機能が低下し電解質のバランスが崩れるとむくみが出たり、高血圧や心不全に陥る可能性があります。

④血液のpH調節

腎臓は血中の酸とアルカリのバランスをとってpHを一定に保つ役割があります。犬猫の血中のpHは7.35-7.45の狭い範囲で調節されています。

腎臓の機能が低下すると酸の排出が上手くいかなくなり、体内は酸性に傾いた状態(アシドーシス)に陥ってしまいます。

軽度であれば症状がないこともありますが重症化してくると、嘔吐や倦怠感、元気消失が見られます。

反対に、体内がアルカリ性に傾いた状態(アルカローシス)に陥ると、無症状なこともありますが痙攣や吐き気、筋肉のけいれんや手足先のしびれなどが見られます。

⑤血圧の調整

腎臓はレニンという血圧を調整するホルモンを分泌しています。

血管を収縮するアンジオテンシンⅡというホルモンに働きかけて血圧を一定に保つ役割を担っています。一定まで血圧が上がると、腎臓からレニンの分泌が減少し血圧の上昇は止まります。

腎臓の機能が低下すると血圧調整に関わる体内の余分なナトリウムと水分が排出されず、体内を循環する血液量が増加します。これにより、心臓から送り出される血液量(心拍出量)と手や足先など細かい血管にかかる圧力(末梢血管抵抗)が増加します。

そうすると細かい血管の集まりである腎臓にさらに負荷がかかり、ますます腎臓の機能が低下するといった悪循環に陥りやすくなります。

⑥ビタミンDの活性化

骨を丈夫にする活性型ビタミンDというホルモンを分泌しています。

ビタミンDは食品に含まれる栄養素ですがそのままでは活用できません。

肝臓と腎臓の尿細管で酵素の働きを受け、活性型ビタミンDに変化します。活性型ビタミンDは腸からのカルシウム吸収を促し、丈夫な骨をつくります。

⑦エリスロポエチンの分泌

腎臓はエリスロポエチンと呼ばれる血液(赤血球)の産生を促すホルモンを分泌しています。

大量に血液が送り込まれる腎臓には、血液中の酸素の状態を感知するセンサーがあります。このセンサーが酸素不足を感知すると、酸素を運ぶ血液を増やすため尿細管の周囲からエリスロポエチンが作られます。

エリスロポエチンは骨の中にある骨髄と呼ばれる血液を製造する組織に作用して血液を作るよう指令を出します。

腎臓の機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が低下して十分な血液がつくられなくなるため貧血を起こしやすくなります。

 

最後に

小さな臓器ではありますが、様々な役割を果たしており、身体になくてはならないものです。また、多くの役割があるため腎臓病になるということは命に関わることもあります。

腎臓は一度障害を受けると、回復することはなく機能は失われたままです。また腎臓の半分以下の機能が失われるまで症状は出ることはありません。

早期発見のためにも定期的な検診が必要です。何か気になる症状がある、なんとなくいつもと様子が違うなどありましたら一度動物病院に相談をしましょう。

腎臓病の詳細に関してはコチラをご覧ください。

この記事を書いた人

伊川 恵美加(愛玩動物看護師)
物心つく頃には動物に触れ合うことが多く、将来の夢は動物関連の仕事に就くことだった。看護師として外科の勉強や、当院をみなさまに周知してもらえるようHP等の内容を充実させることに奮闘中。また、シニア猫との暮らしの経験からシニアになってもより良い生活をできるようお手伝いしております。フェレット大好き、フェレット仲間募集中!