人間とは違うの?犬や猫のおしっこが出来るまでを解説します。

以前「健康のバロメーター(指標)」として、こちらで食事をしてから便ができるまでの過程を解説しました。

便と同様に尿も健康状態を知るのに重要な指標となります。

なるべく早い段階で異常に気付くためには、健康な状態での排尿回数、尿の色などを知っておくことがとても重要です。

それでは、今回は尿が身体の中でどうやって作られているのか、どのようにチェックをしたら良いのかについてお話ししていきます。

 

尿ができるまで

口から摂取した食べ物・飲み物は食道を通り、まず胃に運ばれます。

胃に運ばれた物は消化酵素を含む胃液によって、栄養が吸収しやすい状態に消化されていきます。

その次に胃から小腸へ。この小腸で栄養素と水分のほとんどが吸収され、血液中に取り込まれていきます。

小腸の中には腸柔毛と呼ばれると呼ばれる突起がたくさんあります。これがあることによって表面積が大きくなり、栄養素や水分を吸収しやすくなっているのです。

吸収された栄養素と水分は血液とともに全身をめぐり、体内で産生された老廃物を回収しながら腎臓へ向かいます。

腎臓では血液から老廃物や余分な水分を取り除くろ過が行われます。

少し細かくお話をすると、腎臓にはネフロンと呼ばれる構造があり、ネフロンは糸球体、ボーマン嚢、尿細管で構成されます。糸球体に血液が運ばれるとろ過され、ボーマン嚢に水分が染み出てきます。これが尿の元となる原尿です。原尿は尿細管を通り、必要な物質と水分は再吸収され再び体内を巡ります。

この再吸収により99%の水分が体内に戻り、残った1%だけが不要な老廃物を含んだ水分、つまり尿になります。

その後作られた尿は尿管を通って膀胱に溜まり、やがて尿道から排出されていきます。

犬猫の腎臓は腰よりもやや頭側にあり、背骨を挟んで左右にひとつずつ存在します。尿を生成するだけでなく、様々な役割を担っています。

腎臓の詳しい働きについてはこちらも併せてご覧ください。

 

健康チェック!正常な尿とは?

ここまで尿が作られて排泄されるまでをお話しました。それでは、健康の確認のためには尿のどのような点に注意したら良いか、チェックポイントをご紹介します。

 

色 混入物

正常な尿は淡黄色~黄色をしています。尿の色は水分量や含有物によって変化します。透明に近い色をしていれば、摂取している水分量が多いと考えられます。

腎臓の機能が低下することで再吸収が十分に行われず、必要な水分まで排泄されている場合にもほとんど透明の尿をします。

反対に濃いオレンジ色なのであれば、体内の水分量が不足していたり、ビリルビンという成分が出ていることがあります。ビリルビンは正常ではほぼ尿中には検出されません。ビリルビン尿は肝不全や溶血性貧血が原因で、血中ビリルビン濃度が高くなっている場合にみられます。

また赤血球を含む場合は赤くなり、濁りがみられる場合には細菌や結晶を含むことがあります。血尿が出た際は尿全体が赤いのか、一部だけが赤いのかどうかが泌尿器のどの部分から出血しているかを予測する大事な観察ポイントとなります。赤い色の尿についてはこちらをご覧ください。

左側が正常な色の尿、右側は薄い黄色の尿です。

 

量と回数

一般的に正常な尿量は1日で体重1㎏あたり25ml~40mlと言われています。50mlを超えてくると多尿と言えます。

水を多く飲み、尿を多くするといった多飲多尿症状がある場合は糖尿病やクッシング症候群を始めとした、様々な疾患が原因である可能性があります。

その反対に尿の量が少なくほとんど出ない場合には、腎障害により尿を作る機能が低下していることがあります。

個体差もあるかと思いますが、普段より排尿の量や回数が増えたり減ったりしていないか、飲んでいるお水の量もあわせてチェックしてみてください。

 

排尿痛

排尿時に鳴いて痛そうな様子がみられたり、排尿姿勢をとってから尿が出るまでに時間がかかることはありませんか?

原因はいくつか考えられますが、多く見られるのが膀胱炎や尿路結石です。尿が通る道が結石などで詰まってしまうことで尿が出ず、排尿痛や頻尿で異変に気付かれることが多いです。

このような症状がみられたら早めに受診しましょう。

 

いつもと違う変化にいち早く気付くためには、日頃からよく観察しておくことが大事です。尿の状態や動物のご様子に違和感を感じましたらお気軽にご相談ください。

動物病院では採取した尿を詳しく調べます。詳しい検査項目についてはこちらの記事をご参照ください。

 

最後に…

今回は尿ができるまでと尿のチェックポイントについてお話ししました。

尿は身体の不調に気付く大事なポイントになります。排尿を我慢してしまうことで不調を起こしてしまう場合もありますので、トイレの環境はよく整えておくようにしましょう。

特に猫ちゃんはトイレの環境が原因で排泄しないことがあります。こちらをご参考にしていただき、快適な環境を作ってあげてください。

この記事を書いた人

興村 江美(愛玩動物看護師)
幼少期に祖母の家で犬と暮らしていたことから動物関係の仕事を選択。現在は院内備品の在庫管理やシニア動物のケアに力を入れており、ご家族へ配布するシニア介護についての資料作りも担当。趣味はハロープロジェクト所属アイドルのコンサート鑑賞で休みの日は定期的にライブに足を運んでいる。