尿検査でなにがわかるの?実施するタイミングはいつ?

当院では健康診断を受けていただく際、血液検査とともに尿検査を実施しています。

尿検査は尿の性状や成分などを調べることで様々な病気や兆候を知ることができる検査です。

今回は尿検査の種類、採尿の方法をお話していきます。

 

どのようにして尿が排泄されているの?

尿は腎臓でつくられ尿管を通って尿として膀胱に溜まり、一定量になると尿道を通って排泄されます。

腎臓には「糸球体」と呼ばれるろ過装置のようなものがあり、体を巡る血液は腎臓で老廃物などの体内で不要になったものや余分な水分をろ過して尿をつくっています。腎臓の機能についてはこちらをご参照ください。

 

尿検査とはいったい何をみているの?

検査は大まかに官能検査、尿比重測定、化学的性状検査、尿沈渣に分けられます。

・官能検査

色 混濁度 においを観察します。

犬や猫の尿は通常は淡黄色または黄色でにごりはありません。

赤血球を含む場合は赤っぽくなり、細胞や細菌、結晶を含む場合には濁ることがあります。

また、細菌感染や病気の際にはにおいがきつく感じることや、果実のようなあまい臭いがすることがあります。

・尿比重測定

尿の濃さを調べるもので、一般的に屈折計を用いて測ります。

腎臓は体の状態に応じて水分の再吸収を行う、または多く排泄させることで、体内の水分量を保っています。

腎臓の機能が障害されると尿を濃縮できない、あるいは水分の調節に異常をきたして尿比重は低くなります。

他にも何か氏らの原因で大量の水を飲んでいる場合などに尿比重が低くなります。

また、脱水を起こしている場合は尿比重が高くなり濃くなります。

尿比重に異常があると病気の可能性を考えて、朝一番の尿を採取してもらって再検査をすることがあります。朝一番の尿は最も体の状態を表しているとされ、なかなか病院内では評価が出来ない尿になります。

・化学的性状検査

尿試験紙を用いて実施します。

一般的なものをご紹介していきます。

①pH

pHは弱酸性~中性を維持していますが、食性によって異なり、草食ではアルカリ性、肉食(高たんぱく食)では酸性に傾きます。

正常範囲から外れると尿石症の原因となる結晶ができやすくなります。

また、細菌感染や病気によっても変化します。

②タンパク質

タンパク質は分子が大きいため、腎臓ではほとんどろ過されません。

腎臓の機能低下や炎症により尿中に漏れ出てしまい値が上昇します。

血尿や溶血性疾患の場合にも血液中のタンパク成分が尿中に含まれているため、陽性を示します。

腎機能低下によるものなのか、その他の要因によるものかの鑑別を行うためには、後述する潜血の項目や尿沈渣、超音波検査など複合的に考える必要があります。

また、ストレスを受けた際に一時的に上昇し、陽性を示すことがあります。

③ブドウ糖(グルコース)

ブドウ糖は腎臓でろ過されますが、その後再吸収されて体内に戻ります。

糖尿病などの血液中に糖が多く存在するような場合には、再吸収しきれずに排出されるため値が上昇します。

④ケトン体

ケトン体は脂肪を代謝する際に生成されるものです。

通常はブドウ糖を代謝して得たエネルギーを活用していますが、消化管の異常や栄養不足によってブドウ糖自体が不足する、あるいは糖尿病などでブドウ糖をうまく取り込めないと十分にエネルギーを得ることができなくなります。

この場合は代わりに脂肪を分解して得られるエネルギーを活用するのですが、その結果としてケトン体が過剰となることで尿の中に出てきます。

ケトン体が尿中に出る場合は体の異常を示していることがあり、中でも糖尿病の患者でこのケトン体が出ると、糖尿病性ケトアシドーシスという状態になっています。

糖尿病性のケトアシドーシスは危険な病態で命の危険もある病気の一つです。

長期にコントロールが出来ていない糖尿病の場合はケトアシドーシスを起こすので注意が必要です。

⑤潜血

文字通り「潜んでいる血」の有無を調べます。潜血反応には血液の構成成分である赤血球の有無やその赤血球の構成成分であるヘモグロビンの有無を見る検査の2通りがあります。

膀胱炎や腎臓での出血などがあると尿中に血液が混ざるため、潜血反応が見られます。

明らかに血液の様な尿の場合はもちろん、目に見えないほどの少量の血液が混じることもあります。わずかでも赤血球やヘモグロビンが尿に含まれていると陽性となります。

また筋肉が損傷するとミオグロビンが血液に大量に放出され、これに反応して陽性となる場合があります。

なお、赤みかかって見えるような明らかに血が混じっているとわかる場合には「血尿」と表現します。

⑥ビリルビン

ビリルビンは胆汁色素とも呼ばれる赤血球が壊れた際にできる成分で、肝臓に運ばれたのちに胆汁に含まれます。

陽性の場合には血液が多量に壊れている溶血性疾患、肝臓や胆管の疾患などが疑われます。

犬では我慢していた後などの濃い尿で陽性となることがあります。

 

・尿沈渣

顕微鏡を用いて肉眼では見ることのできない細胞、結晶、細菌の有無や性状を観察する検査です。

結晶は尿中のミネラル成分などがもとになっており、尿のpHや濃さ、尿路感染など様々な要因によって形成されます。

ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結晶やシュウ酸カルシウム結晶が比較的多くみられます。

ストラバイトは食事や感染によって尿pHがアルカリ性に傾くと形成しやすく、シュウ酸カルシウム結晶はシュウ酸やカルシウムを多く摂取していると形成しやすい結晶です。

また、もともと結晶が形成されていなくても、採尿から検査までに時間が空いてしまった場合や保存環境によって徐々に結晶が形成されてしまうこともあります。詳しくはこちらをご覧ください。

細菌は正常な場合は見られませんが、細菌感染を起こしていると細菌とともに白血球が観察されます。採尿方法によっては細菌が混入してしまうこともあるので、本当に細菌感染をしているのかしっかりと判断が必要です。

その他、赤血球や白血球といった血球成分の有無や膀胱や腎臓の細胞があるかなどを評価します。

 

どのように尿を採取するの?

尿は採取法により性状が異なることがあります。

・自然採尿法

動物が自ら排尿したものを採取する方法で、最も手軽です。

ペットシーツを裏返しておく、トイレ砂を吸収してしまわないものに変え、溜まっている尿を容器に採ります。

もしくは排尿中に紙コップなどの容器で受け止めて採取します。

この方法はご自宅での採尿が可能ですが、ごみや細菌が混入しやすいというデメリットがあります。

・カテーテル採尿法

カテーテルを膀胱まで挿入して尿を採取する方法です。

細菌などの混入するリスクの低い採取方法です。

一方でカテーテルによって尿道上皮といった細胞が多く混入しやすい手法でもあります。

・穿刺採尿法

膀胱に細い針を刺し、直接採尿する方法です。

膀胱にある程度尿が溜まっていないと実施できないことがありますが、細菌混入のリスクが最も少ない方法です。

当院ではこの穿刺採尿法を推奨しています。

前述したように、採尿してから時間が経つほどに性状は変化し、正確な結果を得られにくくなります。

ご自宅で採尿を行う際は、なるべく時間をあけずにご来院ください。

採尿のためのキットをお渡しすることもできますので、お気軽にスタッフへお尋ねください。

 

終わりに…

今回は尿検査についてお話してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

一口に尿検査と言ってもたくさんの情報が得られることがわかります。

また動物への負担が少なく、血液検査などの他の検査と組み合わせて実施することで病気の早期発見につながる可能性もあります。

 

以下の場合には早めの受診をご検討いただき、尿検査の実施を相談しましょう。

・お水を飲む量、排尿量や回数が増えた(多飲多尿:こちらの記事もどうぞ)

・トイレに行くが尿がでていない、または少ない

・尿がいつもと異なる(色、におい、キラキラしているなど)

 

当院では年1回、シニア期を迎える7歳以降は年2回の健康診断をおすすめしています。

症状が出る前の状態でも、定期的なチェックでいち早く病気の発見をして日々健康を維持できるようにしましょう。

この記事を書いた人

舘野 友奈(愛玩動物看護師)
ご家族から声をかけていただきやすい雰囲気作りを心がけています。現在は整形外科部門を中心に強化に精を出している。シェルティが大好きで好きなところを語り始めると止まらなくなる一面も。趣味は推理小説を読むこと。個人的に好きな作家は赤川次郎と西村京太郎。