猫でも犬でも多い尿路結石について解説します。

おしっこの回数が多くなった、おしっこの色が濃い?赤い?

排尿姿勢をとるのにおしっこが全然出てない!

おしっこにキラキラ光るものが見える!

その症状、尿路結石かもしれません。

人間でもなる尿路結石症。その名の通り、腎臓、尿管、膀胱、尿道で結石となり、さまざまな症状を引き起こす病気です。

具体的にどんな症状があるのか、原因は何なのか。なってしまったときの治療法・予防法をご説明します。

 

尿石ってなに?

尿は体の代謝産物やリン、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル成分を含んだものです。このミネラルのバランスが崩れて濃くなりすぎて結晶化して固まり、目に見えるようになったものを尿石といいます。

尿石の代表的なものストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石とシュウ酸カルシウム結石です。他にもシスチン結石、尿酸塩結石というものもあります。

尿のpH(酸性・アルカリ性の傾き具合)が、アルカリ性に偏ると結晶化することが分かっています。

 

尿石症の症状

初期の段階では、結晶という細かい形で顕微鏡レベルの小さいものです。

ストラバイト

シュウ酸カルシウム

この段階でも膀胱や尿道の粘膜を傷つけることがあり炎症が起きます。いわゆる膀胱炎の症状です。膀胱炎になると、頻尿(何回もトイレに行く、排尿や排尿姿勢の回数が多くなる)や、トイレではないところでおしっこをしてしまうという行動の変化がみられます。

さらに症状が進むと、結晶が目に見える形で結石に変わり、尿管や尿道に詰まってしまいます。

ペニスの先端に白くプラグ状のものが詰まっています。

男の子は、犬も猫もおしっこの出口が一番細くなっているために、砂状の結石でも詰まってしまうことがあります。小さい石でもスポッと尿の流れを塞いでしまうことがあるため注意が必要です。

物理的に排尿ができないことを尿道閉塞といいます。尿道閉塞になるとに膀胱が破裂してしまったり、尿管結石のせいで水腎症や急性腎不全を引き起こしたり命を落とすこともあります。

おかしいなと思ったら、すぐに受診しましょう。

 

尿石症の原因は?

①膀胱炎

膀胱炎は、尿石症によっても引き起こされますが、逆に尿石症の原因になることがあります。

細菌感染によって菌が尿素をアンモニアに変換することで膀胱内のpHがアルカリ性に傾くとストルバイトができやすくなります。

犬では細菌感染による膀胱炎が多いですが、猫では逆に特発性(原因不明)の膀胱炎が多いです。

②ごはんの影響

ミネラルウォーターやミネラル分の多い食べ物によるミネラルの過剰摂取。タンパク質が多すぎるごはんでも尿石ができやすくなります。

食事以外にも鰹節などのおやつを食べすぎていることも要因の一つとなります。

しかしながら、同じ食生活をしていても、尿石ができる子できない子の個体差はあるため、体質も大きな要因となっていることでしょう。

③トイレの回数が少ない

トイレの回数が少ないということは、膀胱内におしっこが貯まっている時間が長いことになり、尿中のミネラル濃度が高くなり尿石ができやすいということです。

冬場などに飲水量が減ることでも起きやすいです。

ヒトは気温が高いと意識して水分補給しますが、冬場や寒くなった時には飲水量は少なくなりがちです。それは犬猫も一緒で、行動量が少なくなると飲水量も減るため尿量も減り、結果として濃いおしっこが出来上がります。ということは、結晶やタンパク質も濃くなることで、尿石ができやすくなります。

 

尿石症の診断

排尿異常の症状が出ている場合はもちろんですが、健康診断で見つかることも少なくありません。尿検査で結晶がみられる、レントゲンで結石が見つかることもあります。

ある程度の大きさの結石はレントゲン検査にて発見が可能です。しかし、シスチン、尿酸、キサンチンは唯一レントゲン検査では発見することが非常に難しいです。必ずエコー検査も受けることを推奨します。

中央の白い塊が膀胱結石です。

 

尿石症と診断されたら!治療法は?

どの結石ができているのかによって治療法や経過観察が微妙に変わってきます。

①ストルバイト結石

ストルバイト結石は、尿中のpHを中性(pH6~7)に保つことで溶かすことができます。

マグネシウムなどのミネラルなどの成分が多くあることで尿石ができやすくなるため食餌療法が主な治療となります。

ミネラル成分を調整した専用の療法食があるので、食事療法が可能です。獣医師のOKがでるまでは、療法食以外のもの(おやつやトッピング)はstopすることが推奨されますので、先生とよく相談していきましょう。

②シュウ酸カルシウム結石

シュウ酸カルシウム結石は、一度できてしまうと食事療法では溶けることはありません。自然に体外に出てくるまで経過観察するか、外科手術によって摘出して尿石が新たにできないように療法食で維持していきます。

ストルバイトと同じように、ミネラルを調節してpHも調節してくれる専用の療法食があります。

③その他の結石がある場合

ごくまれに、シスチンや尿酸結石などのめずらしい尿石ができてしまう子もいます。遺伝的な代謝が要因と考えられていまが、できやすい犬種が挙げられます。

尿酸結石にかかりやすい犬種は、ダルメシアン、イングリッシュ・ブルドッグ。

シスチン結石は、ダックス、バセットハウンド、イングリッシュ・ブルドッグ、アイリッシュ・テリア、ニューファンドランドなどにみられる傾向があります。

療法食で溶解・維持がむずかしいため外科的手術を行うことが多いでしょう。

 

尿石症の予防はできる?

普段の生活の中で尿石症にならないように予防する方法はあります。

お水を飲みやすい環境づくり(設置個所を増やす、ぬるま湯にしてみる、流れる水が好きな子もいますね)にフォーカスしてみましょう。無理に飲ませる必要はありません。

おしっこを我慢する時間が少なくなるように気を付けてみましょう。

その他に、トイレ環境の整備も重要な要因となります。猫ちゃんは特に環境の変化に敏感です。安心しておしっこができる環境づくりにもフォーカスしてみましょう。詳しくはコチラをご参照ください。

 

尿石用の療法食をほかの子が食べても大丈夫?

同居犬猫がいるために個別でごはんの管理が難しい場合もありますね。

尿石用の療法食はやや塩分が多めに作られているため、尿石以外の基礎疾患を持っている動物が食べてしまう可能性があるときは獣医師に相談してみましょう。

健康な動物や、シニア用ごはんでも尿石予防に配慮した療法食があるので相談して指示を仰ぐのいいでしょう。

 

最後に。。。

膀胱炎や排尿トラブルがあったら早めに受診をしましょう。尿道閉塞になってからでは死に至ることもありますし、回復しても体にかかるダメージは蓄積していきます。

 

尿石ができるには、ごはんや排泄環境が大きくかかわってきますが、根本的には体質が大きな要因になります。治療によって膀胱炎などの症状は治っても、結石ができない環境づくりができなければ、いたちごっこになってしまいます。

予防が一番の治療になる病気です。

症状がなくても症状が進んでいることもあります。健康診断を受けることや、気になる症状があればすぐに受診することをお勧めします。

この記事を書いた人

荻野 直孝(獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。