犬と猫の腎臓、おしっこのことなら当院にお任せください! 腎泌尿器科導入までの道のり

当院では 2023 年 10 月より腎泌尿器科外来を導入し、従来よりも専門性の高い獣医療の提供が可能になりました。

今回はその内容とこれからの診療について日本獣医腎泌尿器学会の認定医である荻野にインタビューをしました。

 

日本獣医腎泌尿器学会とはどういう学会ですか?

腎臓病とか膀胱結石、膀胱炎などの腎臓や泌尿器に関連した病気について最新の情報、知見を発信してくれている学会ですね。

定期的に学術講習会といわれるような勉強会を開催しているので、腎泌尿器の病気や検査、治療などの専門的な知識を学ぶことができます。

 

認定医になろうと思ったきっかけは何ですか?

犬もそうですが特に猫は腎臓病で困っているご家族が多いし、自分の家の猫も腎臓病で亡くしているということもあるので、より深く知ることで適切な治療をもっとできないかということを考えて取ろうと思ったのがきっかけですかね。

それにうちの猫は膀胱炎を繰り返していて治療にうまく反応してくれなくて困っていたことがありました。どうにかしないといけないと思って勉強していく中で環境の指導も大事だなって気付いたんですよね。
そういう経験から同じく困っている人がいるなら、その助けになりたいなっていう思いで特に興味をもって泌尿器や腎臓病について詳しく知りたいと思ったのがきっかけですね。

 

認定医になると一般の獣医師とはどういったところが違うのでしょうか?

認定医になるためのプログラムというものがあって、それがすごく多くて全部で30項目あるんですよ。適切なプログラムを定期的に受講しなければいけないんです。

例えば腎臓や膀胱の構造や機能とその異常という基礎的なところから尿検査とかエコーなどの画像検査についてですね。

あとは透析治療と腎移植みたいなそういう細かい部分もあれば、慢性腎臓病とか尿石症についてもプログラムがあります。

それから腎泌尿器の腫瘍や、腎臓膀胱尿道尿管に対する外科的な手技ですね。

そういったところでしっかりと腎臓病など泌尿器に関する異常というものに関して詳しく深く学んでいます。

 

認定医の取得までにどれくらいの期間がかかるのでしょうか?また、苦労した点や努力したところはありますか?

基本的には3~4年くらいかかると思います。僕はすべての学会に参加して最短で取っているので3年で取得しました。

苦労した点はないかな。詳しく知りたいところを勉強したくてしているので全然苦労と思ったことはないです。

 

腎泌尿器科に対して魅力だと感じる点、惹かれた点はありますか?

やっぱり困っているご家族が多いですよね。自分も猫の飼い主ですし腎臓病って本当に猫につきまとってくるなって感じるんです。

死因の中でも多くを占めていて高齢になればほぼ100%腎臓病になりますから、これにどう付き合うかっていうのを特にシニア期になるとすべてのご家族が考えると思うんですよね。

そういう意味でいうと困っている人が多い分野なので…魅力、惹かれる理由というとちょっと変かもしれないけど、困っている人が多いからその分助けになりたいというところが1番メインだと思います。

 

腎泌尿器科導入によってどういった変化があると思いますか?

僕個人が診る犬猫が幸せになるっていうのはもちろんなんですけど、理想的な状況としては適切な知識とか治療法を周囲の先生たちに共有していくことで、病院全体で腎泌尿器科の技術や能力が伸びるというところに期待しているし僕自身が果たす役割だと思っています。

それによって病院が変われば結果的に困っている人と犬猫が助かる機会が増えるので。

僕個人の話ではなく病院全体の獣医療技術を底上げしていきたいと思っています。

 

総合診療と腎泌尿器科でどちらを受診しようか悩む場合はどうしたらよいでしょうか?

もしも悩むなら総合診療を受診してもらうのがいいと思います。必要があれば腎泌尿器科にバトンタッチしていきます。

ただ、より詳しく説明を求めたいとか結構長く他の病院でも取り組んでいるけどうまくいかないとかっていうのであれば、専門外来を受診してもらうのがいいんじゃないかなって思っています。

専門外来とはいえ僕は総合診療でも診ていますし、ハードルは高くないので気軽に専門外来を利用してくださいね。

 

今後の夢や展望はありますか?

ちょっと大げさになっちゃうんですけど、僕も猫を飼っていておしっことか腎臓のことですごく困った経験がありますので、正しい知識をご家族にお伝えすることで困っている人が減るのが1番嬉しいですよね。

 

最後にご家族のみなさまに伝えたいことはありますか?

おしっこの問題で困っているご家族は猫に限らずたくさんいると思うので、何か困ったことがあれば気軽に相談してもらうのが1番いいかなと思います。

腎臓病って治る病気じゃなくて一生付き合っていく病気だし、慢性の膀胱炎ももちろん完治を目指して治療していくんですけど、そうならないケースもあります。それはしょうがないこともあるんですけど、その中でも動物にとって楽であったりとかどういう風にやったらその子たちに合うのかなっていうのを一緒に考えてやっていきたいなって思っています。

おしっこの問題や腎臓病で困っていることがあったら、ぜひ気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

君塚 祥子(愛玩動物看護師)
「猫にやさしい病院」を目標にCATVOCATEを取得し、院内の猫プロジェクトリーダーとして猫のストレス軽減に力を入れている。また歯みがき教室やキトンクラスなど家族向けの教室を開催し、家族とペットの生活をより良いものに出来るよう奮闘中。趣味は野球観戦で埼玉西武ライオンズを応援している。特に栗山巧選手が大好き。