うちの猫、何回もトイレに入るのにあまりおしっこがでていない!なんてことありませんか?  

猫は非常に膀胱炎になりやすく、特に多頭飼育でトイレを共用している場合は非常に見逃しやすい病気です。

うちの子は下部尿路疾患用のフードを食べてるから大丈夫と思われているご家族も多くいらっしゃいますが、ごはんだけでは防ぐことができない猫に特有の膀胱炎があります。

それは特発性膀胱炎といわれるものです。

 

特発性膀胱炎ってなに?

特発性というのは原因不明という意味で、その名の通り特に原因がわからない膀胱炎のことですが、主にストレスが原因だと言われることが多いです。

下部尿路疾患は様々なライフスタイルの猫を含めて2~5%程度で発生すると報告されています。

また症状のある膀胱炎のうち50%以上は特発性膀胱炎だと言われています。

そして下部尿路疾患の約50%以上は特発性膀胱炎に続いて起こるという報告もあります。

 

特発性膀胱炎の症状

・血尿

・頻尿

・トイレにいる時間が長い

・トイレ以外での排尿や尿漏れ

・グルーミングが多くなる(ストレスによるもの)

・嘔吐(ストレスによるもの)

といった症状が見られることが多いです。

血尿についてはこちらで解説しています。

特に膀胱から陰部までの尿道が閉塞してしまってトイレに入っても尿が数滴しか出ない、もしくは全然出てないというときは非常に危険ですので、様子を見ずに早急に受診しましょう。

 

特発性膀胱炎の原因

冒頭でもお伝えした通り、特発性とは原因が特定できないという意味です。ほとんどがストレスではないかと考えられています。

猫の特発性膀胱炎は、膀胱自体に問題があるというよりも膀胱に影響をあたえているストレスが原因ではないかと思われます。

また体の内側の要因としては膀胱粘膜のバリア機能の異常、内分泌系の異常、交感神経の乱れなどが挙げられます。

避妊去勢手術をしていることが起因していることもあります。

特発性膀胱炎のほとんどが去勢オスであり、10歳前後までのオスで肥満体型であると発症しやすいともいわれています。

 

特発性膀胱炎の検査

まず尿検査は必須になります。詳しい検査内容はこちらをご覧ください。

レントゲン検査、超音波検査も行うことがあります。

血尿や頻尿の症状があり、尿石や細菌が検出されない場合は特発性膀胱炎が疑われます。

 

特発性膀胱炎の治療

実は治療をしなくても症状が改善することが多いです。猫の性格によっては来院することがストレスとなってしまうこともありますので、獣医師の判断で無理に来院しないようにご案内することもあります。

しかし、症状によっては緊急に処置が必要になります。

尿道閉塞は、尿石症でなくても起こります。膀胱炎による血液とタンパク質の塊が尿道に詰まることがあります。

尿が出ていない様子があれば、早急にご受診ください。

 

膀胱炎の予防

下部尿路疾患の予防にもつながります。

・適性体重の維持…これはストレスによって起こる過食と肥満による運動量の低下が原因のストレスが悪循環になっていると考えられています。

・トイレ環境の見直し…猫たちが落ち着いて排泄できるトイレ環境についてはこちらでご紹介しています。

・新鮮で清潔な水を十分に摂取する。

・ドライフードだけでなく、ウェットフードを与えることで水分を多く摂取する。

・ストレス緩和のためのサプリメントやフェロモン製剤などを使用する。

 

まとめ

たかが膀胱炎と思いがちですが、尿道閉塞になると膀胱破裂や、腎臓の不可逆的ダメージ(治療しても元に戻らないこと)によって命を落とすこともあります。

ご家族がご自宅でできることは注意深く猫たちを観察すること、異変に気付いてあげられること、そしてストレスフリーの過ごしやすい環境を作ってあげることだと思います。

場合によってはサプリメントなどの使用も効果があることもあります。

基本的にはストレス環境の改善がメインになりますが、他にもできることがあります。かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

この記事を書いた人

南 智彦(獣医師 外科部長)
日本獣医がん学会、日本獣医麻酔外科学会に所属し外科部長として多くの手術症例を担当。犬猫からよく好かれ診察を楽しみにして来てくれることも多く、診察しながらずっとモフモフして癒してもらっていることも。見かけによらず大食漢でカップ焼きそばのペヤングが好き。1児の父であり猫と一緒に暮らしている。