犬や猫に噛まれた、引っかかれた!どうしたらいいでしょうか?

皆様は一緒に暮らしている犬や猫に嚙まれたり引っ掻かれたしまった経験はありますか?

自然に治る程度の小さな傷のこともあれば、病院で縫ってもらうほどの大きな傷になることもあります。

今回は犬や猫による噛み傷(咬傷)や引っ掻き傷についてお話ししたいと思います。

 

咬傷事故の件数

犬による人への咬傷事故はどれくらいなのでしょうか?

環境省動物愛護管理行政事務局の調査では令和3年度に飼い犬による咬傷事故は千葉県では188件(うち飼い犬が183件飼い主不明が5件)被害者の多くは飼い主以外となっています。

東京都では128件(うち飼い犬が105件・飼い主不明が23件)被害者の多くはやはり飼い主以外となっています。

飼育頭数に対してのこの咬傷件数であれば少ないと感じるかもしれません。しかし実際には多くの方が噛まれた経験があるのではないでしょうか?

 

咬傷や引っ掻き傷は何が怖いの?

犬や猫に噛まれて怪我をした、襲われて入院した、お亡くなりになったなどのニュースをご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思います。

猫や犬による咬傷や引っ掻き傷はただ傷口から出血するだけではなく、その傷口から別の病気をもらうことがあります。

今回は中でも特に気を付けたほうが良い病気について簡単にご紹介します。

狂犬病

狂犬病ウイルスを保持している動物からの咬傷により感染します。

感染すると致死率は100%ですが、狂犬病予防法により年1回、飼育犬への予防接種が義務付けられているため日本では1957年以降狂犬病の発生はありません。

狂犬病は犬だけでなく猫やコウモリ、ハクビシンなど街中に生息する野生動物も感染する可能性があります。

2006年、2020年には海外で感染して日本で発症した例もあります。

狂犬病についてはこちらに詳しく記載されていますのでご参考ください。

バルトネラ症(猫ひっかき病)

犬や猫による咬傷や引っ掻き傷によりバルトネラ-ヘンセレという細菌に感染します。犬や猫同士ではノミが媒介する病気で、秋から冬にかけての発症が多いと言われています。

人の症状としては丘疹や水疱ができる、化膿する、リンパ節が腫れるなどの症状が出ます。

また稀ではありますが合併症として脳症や脊髄炎、肝腫などを併発することもあり、特に免疫の低下している人は注意が必要です。

パスツレラ症

犬や猫による咬傷や引っ掻き傷でパスツレラ菌に感染します。

犬や猫は保菌していることが多いですが症状はほとんどありません。

しかし人に感染した場合は早ければ数時間で傷口が赤く腫れ痛みや発熱を伴いリンパ節が腫れたり、関節炎を起こすこともあります。時には重症化して敗血症や骨髄炎を起こし死亡することもあります。

パスツレラ菌は咬傷や引っ掻き傷だけでなく接触による呼吸器の症状を呈することがあります。

破傷風

犬や猫による咬傷で破傷風菌に感染することがあります。

感染した場合は法律により届け出を提出しなければならない第5類感染症全数把握疾患です。

症状は筋肉の痙攣や硬直、顔面やのどの痙攣による嚥下困難や呼吸困難などが挙げられます。

1968年以降日本では幼少期に4種混合(ポリオ・ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチンが定期接種となり、追加接種もすべて摂取すれば抗体獲得率は100%といわれています。

国立感染症研究所では10年ごとに破傷風ワクチンを接種することを推奨しています。

 

噛まれた場合、引っ掻かれた場合の応急処置

まずは流水で傷口をしっかりと洗い流しましょう。

表面の汚れだけでなく傷口内部の菌を洗い流すようにしましょう。

その後きれいなガーゼなどで止血します。出血が多い時にはきつめに圧迫止血します。

 

受診するなら何科?

骨折するほどの深い傷や出血が止まらない場合には速やかに外来救急や外科を受診してください。

また骨折ほどではないけれども出血がある場合には皮膚科や整形外科を受診しましょう。

怪我から数日たっていてリンパの腫れや発熱がある場合には内科の受診でもよいでしょう。

傷の度合いにもよりますが受傷後の時間が経過するほどに症状がひどくなり膿がたまったり皮膚が壊死したりすることもあります。「多少の傷だから大丈夫」と思わず受診することをお勧めします。

 

予防法は?

犬や猫に絶対噛まれない、引っかかれないという方法は残念ながらありません。

私たち病院スタッフも多少なりとも引っ掻かれたり噛まれたりすることがあります。

普段私たちスタッフが気を付けていることとしては①動物との適度な距離感を保つ(噛まれる行動をとらない)②怪我をした場合も慌てず適切な応急処置を行う③速やかに医療機関を受診することです。

犬や猫すべてが人を好きだったり、常に機嫌が良いわけではありません。

ですが「人やほかの動物(犬猫)をかんではダメ」と教えることでそのリスクは減らせるかもしれません。

しっかりとしつけを行うと同時に日頃の予防やケアを行い衛生的に保ちましょう。

この記事を書いた人

大森 慶子(愛玩動物看護師)
日々育児と仕事を両立するため健康管理に気を付けている。趣味はサイクリングや登山と休日もアクティブに活動。「正確な仕事は美しい環境から」をモットーに院内の環境整備やマネジメントに関して精力的に動く日々。院内のムードメーカーとしていつもみんなの笑顔の中心にいる。