犬や猫にフケが出るのはなぜ?もしかしたら病気のサイン?原因や対策をご紹介します。

背中やお腹にフケがついていることが多いと感じたことはありませんか?

フケといってもその種類はさまざまで、毛についているパサパサしたフケや皮膚表面に付着しているペタペタしたフケ、かさぶたのようになっている大きなフケなどがあります。

今回はフケが出るメカニズムや原因となる病気や予防方法などを解説していきます。

 

フケとは

皮膚は外側より表皮・真皮・皮下組織の3層で構成され、最外層である表皮は複数の層から構成されています。

基底層で作られた細胞が角化層まで押し上げられ、脱落したものがフケであり、この一連の流れをターンオーバーと呼び、動物は3週間、ヒトでは4週間かかると言われています。

過剰なフケが生じている場合ターンオーバーが短縮し、角質層の皮膚コンデションの低下が起こりさまざまなトラブルが生じます。

詳しくはこちらをご覧ください。

 

病気が関連しないフケの原因

フケの原因には病気をはじめとするさまざまなものがありますが、病気だけではありません。代表的な原因を解説していきましょう。

 

緊張 不安

緊張 不安といったストレスが生じたときは急にフケが生じます。

雷が聞こえてきたときや苦手なコースのお散歩など、日常の中にはちょっとしたストレスがたくさん隠れており、ご家族には認知されておらずフケが生じることにより判明することもあります。

ストレスが日常的にかかることは免疫力低下にもつながり、さらなる皮膚トラブルに発展することもあることから日頃からどのようなことに対して緊張や不安を感じているかを把握することが重要です。

 

乾燥

ヒトと同様、冬など空気が乾燥する時期になりますと動物の皮膚も乾燥し、フケが生じやすくなります。

動物の皮膚はヒトの皮膚よりも薄く、乾燥の影響を受けやすいとされていますので、暖房機器の近くで暖を取ることでさらに乾燥を強めることもありますので日頃から保湿剤を使用することにより乾燥を防ぎましょう。

 

不適切なスキンケア

皮膚の表面は適度な皮脂が存在することで乾燥から皮膚を守っています。

そのため、皮脂をとる力が強いシャンプー剤を使用することにより乾燥が強くなり、フケの原因となりますのでその子の皮膚にあったシャンプー剤を選択しましょう。

そのほかにも硬いブラシでのブラッシングや、ブラッシングの際に毛を引っ張りすぎてしまうなど皮膚に負担がかかるとフケの原因になりますので注意が必要です。

 

病気が関連するフケの原因

フケは皮膚病でも引き起こされ、フケの程度により軽症なものから重症なものまであり早期に発見することによって早い段階での治療をすることが可能となります。

フケに関わる病気はどのようなものがあるか解説します。

 

外部寄生虫(ツメダニ、疥癬、シラミ)

外部寄生虫はノミやマダニが代表的ではありますが、フケを主体とする皮膚トラブルを引き起こすのはツメダニ、疥癬(かいせん)、ハジラミとされています。

ツメダニは別名「歩くフケ」とも呼ばれ、非常に強い感染力を持ち、背中や腰を中心に大量のフケを生じ、痒みも伴います。また人にも感染し皮膚炎を引き起こします。

疥癬はヒゼンダニというダニが原因で、非常に痒みが強く、掻きむしることで出血することも多いため、フケと血と炎症物が混ざり合うことにより非常に分厚いかさぶたのようなフケが生じるのが特徴です。

発症部位は耳の縁や肘や膝などといった部位であり、感染力が強く、人にも感染し強い痒みを引き起こします。

シラミは痒みの程度が強いものから軽度のものまで様々であり、ツメダニ同様フケが動いているように見えて発見されることもあります。背中や腰といった体幹部で寄生し、人には感染しませんが、犬から犬、猫から猫といった感染は起こります。

これら外部寄生虫の治療は駆虫効果のある外用薬、内服薬、注射薬などを使用します。

 

膿皮症

膿皮症は何らかの原因で皮膚バリア機能の崩れた皮膚にいる細菌が異常増殖することにより引き起こされる皮膚トラブルです。

膿を含んだ湿疹や黄色のフケ、赤み、かさぶたなどが生じ、痒みが生じることもあります。

治療は抗生剤や外用薬、シャンプーなどを組み合わせ、治りが悪い場合には皮膚バリア機能を低下させる病気が関わっていることもあります。

膿皮症の詳細につきましてはこちらをご覧ください。

 

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌は皮毛や体表に感染する病原体であり、真菌(カビ)の一種です。

免疫機能の未熟な若齢動物や病気を患っている高齢動物に多く、フケ、赤み、円形脱毛(リングワーム)などを特徴でみられます。

治療は抗真菌剤やシャンプー、外用薬など組み合わせ、感染の具合により毛を刈ることもあります。

人にも感染する病気であり、環境中でも生存することから使用していたものの廃棄や消毒などを行う生活環境処置が必要となります。

詳細な情報はこちらをご覧ください。

 

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は花粉やハウスダストなどの環境アレルゲンに対してアレルギー反応を起こしやすい体質をもつ動物が生じる皮膚病です。

皮膚の中でも動きのある柔らかい皮膚の部位で生じやすく、目周り、口周り、前足後ろ足の付け根、耳などに起こるのが特徴です。

アトピー性皮膚炎は皮膚から水分が逃げやすく、乾燥しやすいため治療は保湿剤や保湿成分を含むシャンプーなどのスキンケアが大切です。

他にも内服薬や外用薬や注射薬などを組み合わせて治療を行います。

好発犬種は、柴犬、シーズー、フレンチブルドッグ、ウエスト・ハイランド・ホワイトテリアなどが挙げられます。

診断や治療法について詳細はこちらをご覧ください。

 

脂漏症

脂漏症は表皮のターンオーバーが異常となり、皮脂が多くなったり少なくなったりする皮膚病です。

皮脂が多くなる場合には黄色のフケがかさぶたのように塊で生じたり、少なくなる場合にはカサカサとしたフケが生じます。

フケだけではなく、赤みや痒み、皮膚の肥厚や色素沈着を伴うこともあります。

シャンプーや保湿剤などを使用し皮脂分泌をコントロールすることが大切であり、症状によっては内服薬や外用薬と組み合わせることもあります。

好発犬種は、シーズー、アメリカン・コッカー・スパニエルなどが挙げられます。

 

脂腺炎

脂腺炎は免疫疾患とも言われていますが詳細な病態は明らかにされていない皮膚病で、脂腺が炎症により破壊され、ターンオーバーが異常となり背中を中心とした体幹にフケが多くなり脱毛などを生じます。

フケは細かいカサカサしたフケから毛にまとわりつくかさぶたのようなフケまで様々です。

治療は内服薬やシャンプーが中心であり、秋田犬やスタンダード・プードルなどが好発犬種です。

 

皮膚リンパ腫

皮膚リンパ腫は皮膚にできるがんの一種です。

症状は初期であればカサカサとしたフケですが、重症となると赤みや痒みを生じて鼻や口唇、肉球などの色素が抜ける色素脱と言われる状態になります。

発症は中齢から高齢であり、治療は化学療法ですが、予後が悪いため早期発見・早期治療が大切です。

 

ステロイド皮膚症

ステロイド皮膚症はステロイドを含む外用薬の長期使用により引き起こされる皮膚病です。

皮膚が薄い場所に発症が多く、症状は皮膚の菲薄化、フケ、皮膚の表面が剥がれる(表皮剥離)などの症状があります。

治療は外用薬を休薬し、保湿をすることでスキンコンディションを整えることができます。

 

フケの予防と対策

適切なシャンプー剤の選択

皮脂を落とす力の強いシャンプー剤、保湿成分入りのシャンプー剤など現代のシャンプー剤は多岐にわたります。

カサカサしたフケが気になる場合には低刺激のシャンプー剤や保湿成分入りのシャンプー、皮脂が多めのペトペトしたフケの場合には皮膚を落とす力の強いシャンプー剤をおすすめします。

まずは現在のフケの状態や皮膚の様子を獣医師が確認した上で適切なシャンプー剤の選択をしましょう。

 

保湿剤の使用

軽度のフケは乾燥によるものが多く、保湿剤を使用することにより皮膚に潤いをもたらすことで改善が見込めます。

保湿剤は予防にも役立ち、スキンコンディションを良い状態で保つことで皮膚トラブルの予防にも有効であるため、皮膚トラブルがない動物でも日頃より保湿剤を使用することで皮膚病を未然に防ぐことができます。

 

環境整備

ストレスによるフケが考えられる場合にはストレスを軽減する環境整備が大切です。

ストレスはフケだけでなくさまざまな体のトラブルと引き起こすとされていますのでストレスの少ない生活を心がけましょう。

 

まとめ

フケは獣医師が診察時に気づくというよりもご家族が発見し受診されるケースが多く、内臓の病気よりも発見しやすいため日頃より動物をよく観察することが大切です。

フケといってもさまざまな原因がありますのでフケが多く感じたり、それに伴う痒みや脱毛などがある場合には早めに動物病院を受診しましょう。

皮膚の症状にお悩みの際はぜひ当院の皮膚科診察をご受診ください。

この記事を書いた人

石井 秀延(ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)
皮膚疾患に悩むご家族をはじめ、ご来院のみなさまにご相談していただきやすいような雰囲気づくりに努め二人三脚での治療をしています。2児の父で特に好きな犬種はプードル。日頃の運動不足解消のため暑さ寒さに負けず自転車通勤している。