ヒトとはどう違うの?犬と猫の耳について解説していきます!

当院には毎日色んな犬猫が来ます。

品種によって違いを感じる部位のひとつが「耳」です。

立っていたり垂れていたり、ふわふわしていたり……種類ごとに個性的でとっても可愛いですよね。

でも実は可愛いだけじゃない!犬猫の耳についてお話していきます。

 

耳の役割 聞くこと以外にも……

まずは耳の役割についてですが、すぐに思い浮かぶのは「聞く」ということです。

犬猫の耳は、音を集めやすい漏斗状の軟骨によって形成されています。

また多くの筋肉からなり、様々な方向へ動かすことによってその音がどこから来ているのか調査することができます。

犬猫の聴覚がヒトよりも優れている、というのは有名な話ですね。

ヒトが認識できる音の周波数の範囲が12~23000Hzであるのに対し、犬は65~60000Hz、猫は45~63000Hzとより高い音を聞き取ることが出来るといわれています。

具体的な数字については諸説ありますが、ヒトの4~5倍広範囲の音を拾うことが出来るようです。

犬猫が早い段階から家族の帰宅に気づいてソワソワし始める……という光景を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

次にあげられるのが「体のバランスを保つ」ことです。

耳の奥には平衡感覚をつかさどる内耳という器官があります。後程詳しくご説明しますが、そのおかげでまっすぐ歩くことが出来るのです。

それから、ヒトと異なる役割で言えば「感情表現」です。

耳の動きは犬猫の気持ちを理解するのに大事な点のひとつと言えます。

まず犬が耳をピンと立てている時、こちらは周囲の音を注意深く聞こうとしている状態です。

何か気になることがあるのかもしれません。逆に耳をペタリと下げている時は、リラックスしていたり、甘えていたり…恐怖心を覚えていることも。

猫も犬と同様に耳をピンと立てている時は周囲に注意を向けています。

また不安を感じていたり威嚇している時には、耳を後ろに伏せていわゆるイカ耳になります。

耳の動きも大事ではありますが、それだけで判断してはいけません。表情や行動など、他の要素も含めて犬猫の気持ちを考えることが必要です。

ちなみに耳をピンと立ててと表現しましたが、垂れ耳では一体どうなるのでしょうか。

実は垂れ耳でもピクピクと動いています。立ち耳よりはわかりづらいので、是非じっくり観察してみてください。

さて、立ち耳と垂れ耳も構造自体は同じで耳の形は異なりますが、聴覚には大きな差がないと現時点では言われています。

 

耳の中ってどうなっているの?

それでは今度は耳の構造について説明していきます。先程から耳介や内耳といった言葉が出てきています。では具体的に耳のどの部分を指すのか、画像で見ていきましょう。

耳は大きく「外耳」「中耳」「内耳」に分けられます。

「外耳」は耳介と、外耳道からなります。

人間の外耳道は耳の穴からほぼまっすぐなのに対し、犬猫は耳の穴から縦方向に伸びる垂直耳道があり、その後横方向に伸びる水平耳道があります。

つまり、L字の構造になっています。水平耳道を進むと鼓膜に突き当たります。

そこから先が「中耳」です。

中耳は鼓膜、耳小骨、鼓室からなり、外耳が受けた音の振動を拡大して内耳に伝えていきます。

中耳のさらに先が「内耳」です。

前庭部と蝸牛部に分けられ、前庭部は平衡覚、蝸牛部には聴覚の受容器があります。そして神経を通じて、脳へ伝達していきます。

耳には自浄作用が備わっているので、基本的に耳垢は外耳道から自然に出ていきます。

汚れがあるとつい耳掃除をしたくなってしまいますが、耳道を傷つけたり、かえって汚れを奥に押し込んでしまうと外耳炎の原因になる場合がありますので注意が必要です。

詳しいやり方については、こちらを参考にしてみてください。

 

何だか耳が痒そう そんな時は…

外耳炎はその名の通り外耳道に炎症が起こることを言います。原因は感染や異物、刺激など様々です。

特に犬に多く、その中でもコッカー・スパニエルなどの垂れ耳やミニチュア・シュナウザーなどの耳毛が多い犬種は、湿潤で細菌や酵母の繁殖しやすい環境のため注意が必要です。

・耳を掻く

・頭をよく振る

・耳を触られるのを嫌がる

・赤みや腫れがある

・臭いが気になる

上記のような症状がみられる場合は一度診察にいらしてください。また耳の変化にすぐ気づけるよう、普段の状態をよく確認しておくことも大切です。

 

断耳とは

ここまで立ち耳と垂れ耳の違いについても少しずつお話ししてきましたが、実は生まれた時は垂れ耳なのに耳を切ることで立ち耳にされていた犬がいることをご存じでしょうか。

耳を切り形を変えることは断耳と呼ばれ、ドーベルマンやシュナウザーがその例としてあげられます。元々は狩猟犬などの使役犬が外敵と戦う際に嚙みつかれて損傷しないようにするため行われていました。

しかし現在でも「その方が魅力があるから」「犬種標準の規定になっているから」などの理由で行われている場合があります。

断耳手術は勿論痛みを伴いますし、傷口から感染するリスクもあります。日本では未だ禁止れていませんが、ヨーロッパでは断耳は推奨されず法律として禁止している国も多いです。

立ち耳でも垂れ耳でもそれをその子の個性として受け入れ、可愛がってあげてくださいね。

大事な役割を担っている耳を健康的に保つためにも耳の異常にお気づきの際は当院へお問い合わせください。

この記事を書いた人

興村 江美(愛玩動物看護師)
幼少期に祖母の家で犬と暮らしていたことから動物関係の仕事を選択。現在は院内備品の在庫管理やシニア動物のケアに力を入れており、ご家族へ配布するシニア介護についての資料作りも担当。趣味はハロープロジェクト所属アイドルのコンサート鑑賞で休みの日は定期的にライブに足を運んでいる。