犬や猫の目頭が赤く腫れて内側から飛び出している!その症状、チェリーアイかもしれません!

チェリーアイとは

目頭に赤いできものができている、赤く腫れ上がっている、左右で目の形が違うと感じ、驚いたことはありませんか?

チェリーアイは目頭にある瞬膜腺(第三眼瞼腺ともいう)という組織が外側に出た状態のことをいいます。

外側に長時間露出することにより赤く腫れ上がり、「さくらんぼ」のように見えることからチェリーアイと呼ばれています。

犬のチェリーアイで瞬膜腺が脱出した状態

 

瞬膜の構造

瞬膜は第三眼瞼とも呼ばれ、犬および猫の目頭に観察されるシート状構造の組織です。

瞬膜は主に目の表面の膜である角膜を保護する役割があり、また瞬膜内にある瞬膜腺は涙の分泌を担っています。

目全体に潤いをもたらす涙の35%は瞬膜腺で作られており、瞬膜線に障害が加わると涙の分泌も障害され、目に潤いが保たれなくなることもあります。

正常な目の構造

 

正常の状態では目頭部分に収まり、目立たないためその存在を知らない方も少なくありません。

瞬膜自体を動かす筋肉組織はないため動かそうとして動くものではなく、眼球が後方に動くことによって瞬膜が出る仕組みとなっています。

角膜に傷がつき、痛みが生じている場合には眼球を後ろに引っ張る筋肉の収縮や痙攣が生じて眼球が後方に動いて瞬膜が出てきます。

また、重度の脱水時などは眼球の後ろの脂肪組織なども脱水を生じるため眼球が後方に動き、瞬膜が出ることがあります。

ヒトに瞬膜はなく、犬猫に存在します。

眼の構造について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

その他鳥類や両生類、爬虫類などで発達しており、普段は瞬きの際などに一瞬だけ見える膜なので「瞬膜」という名称になったとされています。

猫の正常な瞬膜

 

チェリーアイの原因

チェリーアイは瞬膜の病気の中で最も多く、見た目の変化が大きいためご家族がいち早く異変に気づき受診する傾向にあります。

チェリーアイのはっきりとした原因はわかっておりませんが、瞬膜または瞬膜腺を固定する結合組織が脆弱化しているために起こると言われています。

先天的な原因の場合には2歳までの若齢動物での発症が多く、主に犬ではアメリカン・コッカー・スパニエル、フレンチ・ブルドッグ、チワワ、ビーグル、ペキニーズなど、猫ではバーミーズ、ペルシャ、ドメスティック・ショートヘアなどが好発するとされています。

その他の原因として外傷や目の炎症や腫瘍などでも発症することもあり、これらの場合にはいずれの年齢でも発症します。

 

症状

目頭からさくらんぼのように腫れあがった瞬膜腺が観察されます。

症状は瞬膜腺の脱出の程度により、無症状なものから目やにが多くでる、目を物に擦り付ける、目をしぱしぱさせるなど様々です。

さらに悪化した場合には角膜炎や結膜炎などを併発することもあるため適切な治療が必要となります。

初めは片目にチェリーアイが認められても数日から数ヶ月後にもう片方の目も発症することは少なくありません。

 

診断

チェリーアイの診断は基本的には視診で行います。

目頭より飛び出している組織が瞬膜と連続性があり、瞬膜腺と判断されればチェリーアイと診断されます。

見た目が似た病気として瞬膜軟骨の変形があり、主に大型犬で認められ、瞬膜が目の外側もしくは内側に反り返って腫れることによりチェリーアイと似た症状となり、注意が必要です。

発症年齢を確認し、先天性、外傷、腫瘍などの原因を検討した上でさらにドライアイや角膜に傷などがないかを検査します。

 

治療

・内科的治療

軽症の場合は眼科用のガラス棒などで脱出した瞬膜腺を整復し、点眼薬や内服薬で炎症を抑える治療をします。

一時的に瞬膜腺は元に位置に戻り、治ったように見えますが多くの場合には再発します。

再発を繰り返す場合や瞬膜腺が重度に腫れあがり整復できない場合やドライアイ・角膜炎などの併発がある場合には外科的治療を行う必要があります。

・外科的治療

過去には飛び出した瞬膜腺を切除する手術もありましたが、切除により涙の量が減ってしまいドライアイになるため推奨されていません。

現在は瞬膜腺を温存する術式が推奨され、ポケット法、アンカー法、瞬膜タッキング法に大別されます。

 

ポケット法は飛び出した瞬膜腺の周囲に切開を入れ、ポケットを形成し、格納する術式であり、一般的多くに行われる術式です。術後に瞬膜腺が再度飛び出してしまったり、縫合糸が角膜に接触し角膜潰瘍になることがあるため、術後に目がしょぼしょぼしないかなどの観察が必要です。

手術前のチェリーアイ

ポケット法による整復でポケット内に入れ込む前の状態

ポケット法による整復でポケット内に入れ込んだ後の状態

 

アンカー法は瞬膜腺を元に位置に戻し近くの縫合糸で組織に固定する術式であり、チェリーアイが慢性化し大きく腫れた場合、ポケット法での術後再発が認められた場合に用いられます。

術後に瞬膜の動きが制限されたり、瞬膜が内側に反ってしまうなどがないか観察が必要です。

 

瞬膜内タッキング法はアッカー法の変法であり、術後の瞬膜の動きの制限が軽減され、内側に反ってしまうことなども改良された術式です。

どの方法でも術後に点眼や内服薬を服用する必要があり、チェリーアイの再発やドライアイなどに注意が必要です。

 

まとめ

チェリーアイの予防は難しいため、目に異変を感じたらすぐに動物病院への受診をお勧めします。チェリーアイが長期間治療されずにいると炎症が強くなり、治療が長くなり、結膜炎や角膜障害などの併発が起こり、さらに重症化することがあります。日頃より目をよく観察し早期治療を心がけましょう。

この記事を書いた人

石井 秀延(ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)
皮膚疾患に悩むご家族をはじめ、ご来院のみなさまにご相談していただきやすいような雰囲気づくりに努め二人三脚での治療をしています。2児の父で特に好きな犬種はプードル。日頃の運動不足解消のため暑さ寒さに負けず自転車通勤している。