急にふらふらしたと思ったら目が回っている!?犬や猫の目が揺れていることありませんか?

突然おうちの犬・猫がふらつき出したら・・・突然起こるとびっくりしますよね。

様子をよく見ると目が揺れていたり、ぐるぐると回っていることがあります。

この症状を眼振といいます。

今回は眼振について解説していきます。

 

眼振とは

眼振とは自分の意思とは関係なく眼球が一定方向に小刻みに行ったり来たりと往復運動することです。一般的には目が回っている状態であると表現されます。

電車の中の人が窓の外を見ていると目が揺れているように見えますが、それも眼振の一種です。

 

眼球は脳から来る3本の神経(動眼神経 滑車神経 外転神経)が眼を動かす筋肉(外眼筋)に働きかけて眼を動かしています。

右を向こうと意識することで脳に指令がいき、眼球を右に動かしてから首が右を向きます。

また、頭や首の姿勢が変化すると、位置感覚をキャッチして脳に伝えられ、姿勢や頭の位置に合わせて眼球が正しい位置へ動きます。

眼振にはどのような種類があるの?

まず、眼振は病的眼振と生理的眼振に分類されます。

病的眼振の中にさらに左右に動く水平眼振、上下に動く垂直眼振、この二つが混ざった回転眼振があります。

眼振をよく観察すると、眼球が速く動く方向とゆっくりと動く方向があり、速く動く方向を「急速相」、ゆっくり動く方向を「緩徐相」といいます。

眼振が起きているときの症状としてふらつき、嘔吐などがみられることが多いです。

 

眼振には正常な動物において必ず認められるものもあり、これを生理的眼振といいます。

頭を動かしたり回転させたりしたとき、または周りの景色が速く動いたときに認められます。

前にも書いたように電車に乗っているときに窓の外の景色を見ている人の眼が揺れているのは姿勢を維持するために眼球が追跡運動をしているもので、病気ではありません。

 

原因

病的眼振は前庭障害というものによって起こる神経症状です。

前庭とは平衡感覚をつかさどる器官のことです。

耳の鼓膜の奥にある内耳にある前庭に原因があるものを末梢性前庭障害、脳の中の小脳や延髄にある前庭系の中枢に原因があるものを中枢性前庭障害といいます。

症状は末梢性前庭障害ですが原因不明となるものを特発性前庭障害といいます。

 

原因がどの部位にあるかは眼振の方向によって推測されます。

表にあるように、垂直眼振は中枢性前庭障害に特徴的なパターンです。

これらの障害が起きた時の症状の一つとして眼振があり、他の神経症状が一緒に起こることがあります。

詳しくはこちらもあわせてご参照ください。

 

考えられる病気は何がある?

末梢性前庭障害の原因の多くは中耳炎・内耳炎であり、ほとんどは外耳炎からはじまり、炎症が悪化することで起こります。

他には甲状腺機能低下症といった内分泌疾患や前庭神経に関連した腫瘍性疾患などが挙げられます。

中枢性前庭障害の原因の多くは脳梗塞などの脳血管に関連したものや髄膜脳炎などの炎症性疾患、脳腫瘍などが挙げられます。

特発性前庭障害は原因が明らかではなく犬では老齢犬で、猫では年齢関係なくみられることが多いです。

 

検査・診断

視診・触診にて他の神経症状がないか神経学的検査をもとに症状の確認を行います。

外耳炎の有無を確認するために耳鏡で耳を鼓膜までよく見ます。

肝性脳症などの神経症状を起こす他の病気や甲状腺機能低下症など内分泌疾患の確認のために血液検査も行われます。

耳の構造の変化を見るためにレントゲン検査を行うこともありますが、より詳細に調べるためCT検査やMRI検査を行うこともあります。

MRI検査では一緒に脳炎や脳梗塞、腫瘍などの脳の障害についても確認します。

 

治療・対処

治療は原因疾患によるため診断を行った後、それぞれの疾患に対する治療を実施します。

犬で起こることが多い外耳炎が引き金になることもあるため日頃から耳のケアは大事になります。

もし、ふらつきが見られたり、眼の動きがおかしいな、と感じたら病院を受診しましょう。

この時、可能なら動画にとって診察時に見せていただけると診察の助けになることもあります。

また、眼振症状がある子はふらつきによって物にぶつかったり、段差から落下することがありますのでおうちで注意してあげてください。

この記事を書いた人

小安 瑛加(獣医師)
ご家族様が相談しやすい診療を心がけ、診察受けてよかったと思えるような獣医療を提供できるよう日々邁進中。趣味は美術館、博物館に行くことで非日常感が味わえる独特な空間が好き。実家では猫を飼っていて帰省するたび猫を吸っては猫アレルギーを発症させている。