おしり周りが汚れている!陰部から血まじりの膿がでている!血尿との違いについて

陰部はデリケートな部分です。オスメス問わず、出血などの異変があれば不安に感じますよね。

犬や猫のメスは子宮へ繋がる膣と尿道の出口が同じです。陰部からおりものが出ているのを発見しても、子宮からの出血や膿なのか、血尿なのか見た目だけでは判断しにくいです。

中~高齢の避妊していないメス犬で陰部から排膿をしていたら、子宮蓄膿症を思い浮かべる方も多いと思いますが、陰部からおりものが出る症状があるのは子宮蓄膿症だけではありません。

今回は陰部からの出血と排膿の違いについて、症状別に解説していきます。

 

オスの出血と原因

まずは、オスの陰部からの主な出血の原因をまとめてみました。

腎臓、尿管、膀胱、尿道からの出血

陰部からの出血としてまず血尿症状が挙げられます。その中でも腎臓・尿管・膀胱・尿道といった腎泌尿器臓器における尿石症が原因として挙げられます。

オスは膀胱から体外まで繋がる尿道がメスに比べて細く長いです。特に先端は先細りの構造になっており、尿石症の結晶や炎症などにより剥がれた粘膜の細胞屑などが詰まりやすく尿道閉塞には非常に注意が必要です。小さな結石が粘膜を傷つけることで出血し血尿がみられます。尿石症について詳しくはこちらをご覧ください。

また尿石症だけでなく腎泌尿器の各臓器に腫瘍ができた場合も症状の一つとして血尿があります。

陰茎からの出血

クッションやぬいぐるみへのマウンティングを長時間続けることによって陰茎の先端が傷つき、出血することがあります。このような摩擦傷ではじわじわと少量ずつ出血しますが、喧嘩などで大きな傷になると陰茎の壊死に至ることも少なくなく、陰茎ごと切除する処置になる場合もあります。

また、包皮が炎症を起こすことでも出血や排膿がみられます。

前立腺からの出血

細菌感染、肥大、腫瘍、嚢胞などが原因で出血が起こります。前立腺炎の多くは前立腺肥大に付随して起こります。尿道から細菌が入り込み感染すると炎症を引き起こします。

犬で多くみられますが、猫ではほとんど前立腺は肥大しないと言われており前立腺炎は稀です。

陰茎、前立腺からの出血は、予防策として去勢手術が有効です。手術を行うことで前立腺の退縮や性的興奮が抑制され、これによって予防効果が期待できます。

 

メスの出血と原因

・子宮、膣からの出血

メスの外陰部からの出血は、特に注意が必要です。発情出血以外での子宮からの出血は子宮蓄膿症であることが多く、悪化すると死亡するケースが少なくありません。

犬は発情出血開始後1~2か月で発症することが多く、多飲多尿や食欲不振、不正出血、外陰部からの排膿に気付いたらなるべく早く受診しましょう。子宮蓄膿症に関しては避妊手術で防ぐことができます。子宮蓄膿症について詳しくはこちらをご覧ください。

その他膣炎では膿様物が排出され、膣の腫瘍では陰部から出血が見られます。

また、メスでもオスの出血と原因で挙げたような腎泌尿器の疾患による血尿症状は起こりえます。

 

排膿と血尿の違い

陰部からの排膿と血尿の違いとして区別しやすいのはニオイです。血尿は尿に血液が混ざって排泄されるため、尿のニオイを感じます。排膿の場合は明らかに生臭く、風邪をひいたときの黄色っぽい鼻水を溶かしたような見た目で血液が混ざっていることがあります。

ニオイでは判断が難しいことも多いので、スマートフォンなどで排泄物を写真で撮影し、可能であれば液体のまま持参して病院を受診しましょう。血尿について詳しくはこちらをご覧ください。

 

血まじりの“何か”が排泄された際の検査

どこから出血しているかによって治療方針が変わるため出血部位と原因を確認するために下記のような検査を行っていきます。

・問診、視診、触診

・尿検査

・血液検査

・レントゲン検査

・エコー検査 など

 

血まじりの“何か”が排泄された際の治療

原因疾患に対する治療を行います。

膀胱炎の場合は抗生剤や消炎剤の投与、腎臓の炎症では食欲がなくなる場合があり入院して点滴治療を行う場合もあります。

外傷による出血が確認できる場合は、止血処置を行います。

子宮蓄膿症と診断された場合は、外科的に卵巣と子宮を切除する手術が第一選択となります。

こちらは血尿あり来院した症例から採取した尿です。

こちらは子宮蓄膿症の犬の子宮に溜まっていた膿です。

 

陰部から出血する病気の予防

普段の様子との違いに気付くことが大事です。

・食欲、元気の有無

・嘔吐、下痢、発熱の有無

・陰部を気にする、よく舐めている

・尿の量と回数、水を飲む量

・排尿異常の有無

・発情出血がなかなか終わらない

・下腹部に疼痛がある など

いつもと違う様子に気付いたら、なるべく早く受診することをおすすめします。大事なわが子が重篤な状態になる前に、定期健診などかかりつけの獣医師への相談がとても大事です。

 

番外編

犬猫には肛門腺という臭腺が存在しますが、これは個体差や高齢、炎症などによって破裂することがあります。

お尻のあたりから異臭がする、お尻を床にこすりつけながら歩く、よく舐める、出血している、ただれているなどの症状が見られれば受診しましょう。肛門腺破裂についてはこちらをご覧ください。

この記事を書いた人

南(獣医師 外科部長)
日本獣医がん学会、日本獣医麻酔外科学会に所属し外科部長として多くの手術症例を担当。犬猫からよく好かれ診察を楽しみにして来てくれることも多く、診察しながらずっとモフモフして癒してもらっていることも。見かけによらず大食漢でカップ焼きそばのペヤングが好き。1児の父であり猫と一緒に暮らしている。