犬や猫の歯のクリーニングってどうやるの？その流れや重要性について解説します！

2025年6月02日

歯が汚れていて歯のクリーニングを勧められたけど、実際には何をするんだろう？歯石取りや歯を抜く判断はどうしているの？そんな風に思ったことはないでしょうか。

今回は歯科処置の流れ、そしてその重要性を解説します！

Contents

1 歯石
2 歯科処置の流れ
3 抜歯する場合
4 術後のケア
5 まとめ

歯石

歯垢が石灰化したものを歯石といいます。犬や猫は食事から約7～8時間で歯の表面に歯垢が付着し、そのまま約2～3日経過すると石灰化が始まります。

人では約2週間で歯石化するといわれ、犬猫のほうが変化のスピードがとても速いことがわかります。

歯石の表面はざらざらで歯垢がつきやすく、歯石が付いた状態を長い間放置すると口臭やよだれといった症状が見られます。このような状態を歯周病と言い、犬猫の3歳以上の80％以上が歯周病に罹患しているといわれています。

歯周病菌は歯肉に炎症を起こす歯肉炎や、歯根を溶かして顎の骨が薄くなることにより、骨折を引き起こしてしまうこともあります。

歯肉炎とは歯石がたまることで歯肉が破壊され、炎症が起こっている状態をいいます。

軽度では無症状のことが多いですが、歯肉の赤み・口臭・痛みによる食欲低下、よだれといった症状がでます。重度の場合には炎症が歯の根本まで広がり、歯肉に隠れていた歯根部分が露出します。

細菌の塊である歯垢が付くことで細菌増殖がおきて歯根部分で化膿してしまい、これを根尖膿瘍といいます。さらに膿がたまることで眼や鼻の周りが腫れ、時には皮膚に穴が開き、膿が流れ出てしまうこともあります。

歯周病が進行した状態です。目の下の皮膚に穴が開いています。

また口腔内の状態によって0～4のグレードに分けられています。詳しくはこちらをご参照ください。

口の中を家で見るのは苦手、という子もいると思いますので、現在の口の中の状態が気になるようであれば獣医師へお気軽にご相談ください。

歯科処置の流れ

処置前にはグレードに基づき歯の最終評価をします。歯科処置はG1からでも対象になり、早めの除去をすることで歯肉炎や歯周病になりにくい健康な歯を維持することができます。歯石グレード4を放置すると、前述したような根尖膿瘍や、顎の骨の骨折をする可能性が高くなります。当院では麻酔下で処置を行うため、事前に血液検査や画像検査など手術前検査を実施しています。

麻酔をかけたらまずは口腔内を肉眼で確認し、歯科レントゲンを撮影します。正常な歯はレントゲン画像上だと白く映り根本までみることが可能です。中度～重度の歯周病の場合、歯の根本が溶けて黒く隙間があるように映り、歯肉が後退して正常な歯よりも歯根が露出していることがわかります。こういった場合は抜歯を行う必要があります。

レントゲン撮影のみで抜歯の判断をするのではなく、プロービング検査や実際の歯のぐらつき度合などをふまえて複合的に判断します。プローブという器具をいれて歯周ポケットの深さを測る検査をプロービング検査といいます。歯周ポケットの深さを測ることで歯周病がどの程度進行しているか判断する目安となります。

右の写真では5メモリまで深さがあります。

歯の状態を確認できたら歯石除去（スケーリング）を行います。当院では超音波スケーラーを使用しており、歯自体を傷つけずに細かい歯石を取り除くことができます。

スケーリング後には専用のジェルを使って歯のわずかなざらつきを研磨するポリッシングを行い、歯垢が付きにくい状態を維持できるようにします。

左：歯石のついた状態、右：歯石を除去した状態

抜歯する場合

抜歯は強い痛みを伴うため、手術中や術後に痛みによる影響がなるべく低減できるよう、当院では鎮痛剤と局所麻酔を併用しています。

歯の周囲には歯根膜と呼ばれる部分があります。歯根膜は歯と骨を強固につなぐ役割を持っているため、歯は簡単に抜くことはできません。そのため先端の形状や角度の違うエレベーターを歯の大きさや位置によって使い分け、歯根膜をはがして歯を抜きやすくしてから抜歯鉗子で抜きます。

最後に抜いた部分に歯の残存がないか確認して終了します。

様々な形状をしたエレベーター

大きい歯は歯根膜をはがすだけでは抜けないためいくつかに分断することで抜歯しやすい状態にします。

抜歯をしたあとは歯茎の縫合を行います。その場合には抜歯した位置の周囲の歯肉を切開して広げ、抜歯跡を覆うようにして縫合します。

術後のケア

術後に気を付けることは主に食事とお家でのケアの2点です。

食事

スケーリング後のご飯は基本的に普段通りのものを食べることができます。抜歯や縫合をした場合には2～3日は口の痛みや違和感があり、ご飯を食べないことや縫合箇所が開いてしまう可能性があります。ご飯はウェットフードやドライフードをふやかしてあげるなど柔らかいものがおすすめです。

ホームケア

歯科処置後もお家でのケアがとても大切です！歯磨きをしない状況が続くとあっという間に歯垢が付き、いつの間にか歯石に変わってしまいます。きれいな歯の状態を保つためにも、家での歯磨きは継続して続けましょう。抜歯した場合には口に痛みが残っていることも多いため、無理に歯磨きはせずに回復に合わせて徐々に再開していきましょう。