胆嚢摘出

当院で実施した外科症例について紹介します。

今回は胆嚢摘出の症例です。

※術中写真が表示されますので苦手な方はご注意ください。

 

プロフィール

犬 トイプードル 去勢雄 10歳5ヶ月

 

来院理由

定期的な健康診断

 

既往歴

胆泥症 膀胱結石症 腎結石症 膵炎 食物アレルギー アトピー性皮膚炎

 

検査

血液検査でALT108→130U/I、ALP1272→2664U/I、GGT37.0→87.0U/I

腹部超音波検査で重度胆泥貯留および胆汁変性所見

 

診断

胆泥症および胆嚢粘液嚢腫疑い

胆嚢破裂のリスクを考慮し予防的にOPE実施

 

外科手術

1.腹部の正中切開

2.胆嚢を牽引するために支持糸を設置

3.胆嚢と肝臓の接着を剥離

4.胆嚢頸から胆嚢管までを露出

5.胆嚢管を結紮後切断し胆嚢摘出

6.腹部および皮膚を縫合

 

手術後の経過

術後状態安定のため予定通り退院

肝臓の数値に関して定期的にモニタリング実施 (術後肝臓数値高いままの子も多い)

現在術後9ヶ月経過時点で体調に問題なし

 

胆嚢疾患について

胆嚢は肝臓で作られた胆汁を一時的に貯留する働きをしています。胆汁は食事が十二指腸に送られてくると十二指腸に排出されて食事に含まれる脂肪の分解に関わります。

胆嚢の病気としては、主に胆石や胆泥症、胆嚢粘液嚢腫、胆嚢炎などが挙げられます。胆石症は胆嚢内に結石ができてしまう状態です。健康診断で偶然見つかることも多く、胆石が胆管などに詰まってしまわなければ症状が認められないことも多いです。胆泥症は胆嚢内の胆汁が泥状になってしまう状態です。進行して胆嚢粘液嚢腫に移行することもあるため定期的な検査は必要です。また、胆泥貯留により肝障害が起こっている場合は、胆汁の流れを改善させる薬や低脂肪食による食事療法を行う場合もあります。胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢のなかにムチンという物質が蓄積して胆汁がゼリー状に固まってしまう状態です。胆嚢粘液嚢腫の場合は、胆管閉塞や胆嚢破裂などによって命に関わる重篤な症状が出てくる可能性もあるため無症状でも胆嚢摘出手術が勧められます。

胆嚢に異常があるからといってすぐに手術が必要ではなく、胆嚢の状態や症状、今までの経過、将来的なリスクなどを考慮した上で、ご相談をさせていただきます。

この記事を書いた人

海野(獣医師)
一人一人に寄り添った診療ができるようご家族様の話に耳を傾け、お気持ちを汲み取れるように心がけています。外科、救急医療分野の技術向上のため多くのセミナーを受講し、腕を磨いている。趣味はバイオリンと映画鑑賞。アクションやSFが好きでスターウォーズのダースモール推し。