新しい命をお迎える前に知っておきたい犬と猫の妊娠と出産 ~出産編~

犬や猫の出産をご覧になったことはありますか?

多くの方は出産シーンを見たことがないため、どんな過程で子犬、子猫たちが生まれてくるのかイメージが付きにくいかと思います。

前回は妊娠に関してご説明しましたが、今回は犬猫の出産に関してお話します。

\この記事を書いた人/
柏倉(愛玩動物看護師)

柏倉(愛玩動物看護師)

学生の頃から努力家で真面目と言われる性格。一つひとつの仕事に丁寧に向き合い、その動物にとっての最善の看護を提供したいと考えている。文字にもその性格が出るようで、院内でも一二を争う美文字と褒められるのが自慢。趣味はディズニーランドのショーパレード鑑賞。

出産前に

まずは安全な出産をサポートするために事前準備をしましょう。

出産時の必要物品を確認し、出産予定日までに必ず準備することが何よりも重要です。

詳しくはこちらをご覧ください。

新しい命を迎える前に知っておきたい犬と猫の妊娠と出産 ~妊娠編~

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出産の段階

犬猫の出産は3つの段階に分かれており、第1期→第2期→第3期へと進んでいきます。

第1期

出産の準備期間を示します。

出産の約8~24時間前になると妊娠を維持するための重要なホルモンであるプロゲステロンが低下することにより37.5℃以下の体温低下が認められます。個体差はありますが、母犬/猫は食欲が消失し、呼吸回数の上昇、巣作り行動などがみられます。

第2期

出産の期間を示します。

破水がおこり、体温が正常値くらいまで戻ります。破水がみられたら赤ちゃんを出産し、出産したら母犬/母猫は赤ちゃんを覆っている膜(胎膜)を口で破り、胎児を舐めて呼吸を促します。

もし、生まれてきた赤ちゃんが呼吸をしない様子があれば人の介助が必要です。

赤ちゃんを覆っている胎膜を破り、清潔なタオルで子犬/子猫を包み、鳴くまで優しく背中をさすり続けます。また、へその緒は基本生まれた瞬間に母犬/母猫が噛み切りますが、出産の疲れなどで噛み切る様子がない場合があります。その場合はおへそから約1-2cmのところを糸で結び、さらにその1-2cm先をハサミで切りましょう。

第3期

分娩を終え、子宮内に残っている胎盤を排出します。多くの場合赤ちゃんと一緒にまたは出産15分後くらいに胎盤を排出しますが、胎児が複数いる場合は胎盤が出てくる前に、次の胎児が生まれてくることもあります。そのため、胎児と胎盤の数が一致しているか必ず確認するようにしましょう。

子宮内に胎盤が残っており、出産が終了したのにも関わらず胎盤が排出される様子がなければ動物病院に連絡をしましょう。

難産

難産とは人為的な介助がないと分娩ができないことをいい、難産になると母子ともに命が危険になる可能性があります。

そのため難産だと思ったらすぐにかかりつけの動物病院に電話をし、病院へ行きましょう。

診察をして産道を通って分娩するのが困難と判断した場合は、帝王切開で胎児を取り出します。

難産の原因は以下の通りです。

来院の目安

では、どのような症状がみられたら病院に行くべきでしょうか。

出産前~出産後において様々な場面で来院したほうが良いケースがあります。

出産前

  • ・母犬/母猫が痙攣している
  • ・母犬/母猫がぐったりしている
  • ・陰部から異常な分泌物が出ている
  • ・出産予定日になっても陣痛が起こらない

詳しい出産前の来院目安はこちらをご覧ください。

新しい命を迎える前に知っておきたい犬と猫の妊娠と出産 ~妊娠編~

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出産中

  • ・破水してから2,3時間経過しているが分娩する様子がない
  • ・強い陣痛が30分以上あるのにも関わらず分娩しない
  • ・胎児を出産してから次の陣痛が長時間起きない(胎児が複数いる場合)
  • ・母犬/母猫が痙攣している
  • ・母犬/母猫がぐったりしている
  • ・膣から緑色の液体が出てきている

出産後

  • ・陰部から子宮が出てきている
  • ・胎盤が出てこない
  • ・低カルシウム血症の症状がみられる(震え、痙攣、失神、食欲不振、嘔吐など)
  • ・乳房炎、乳汁が出ない、乳房が硬い
  • ・陰部から異常なおりものや悪臭がする
  • ・乳頭の損傷

新生児の異常

新生児が無事生まれてきたら先天性疾患(奇形)がないか確認をしましょう。また、先天性疾患だけでなく、遺伝的疾患の場合は生まれた直後ではなく数カ月~数年の間に発症することもあり、犬種によって発現しやすい疾患もあります。

生まれてきた直後から新生児の健康チェックに努めましょう。

【新生児でよくみられる先天性疾患(奇形)】

  • 口蓋裂
  • 口と鼻の境界線を作っている硬口蓋の先天的に穴が開いている状態です。ミルクの誤嚥リスクが高く、授乳時は特に注意が必要となり、誤嚥で亡くなってしまうケースが多いです。鼻からミルクが出てきたり、ミルク色の鼻汁が見られるのが特徴です。身体がある程度大きくなったら外科的治療が必要になります。
  • 口唇裂
  • 生まれつき唇の一部が避けている状態です。特に上唇で避けていることが多く、見た目からすぐに判断することができます。唇が避けていることでうまくミルクが飲めないため、ミルクの補助が必要になります。口蓋裂同様、治療法は外科的治療になります。
  • 鎖肛
  • 肛門が形成されてない状態で生まれてきます。排便が見られないことや尿と一緒に便がでる、腹部膨満、食欲不振、嘔吐などの症状がみられます。治療法は外科的治療となります。

【遺伝子疾患】

  • 先天性網膜萎縮症
  • 遺伝子異常により両眼の網膜が徐々に萎縮し、最終的には失明する病気です。網膜萎縮症の初期症状は暗い時間帯の散歩を拒否したり、家具や壁にぶつかる、暗い所だと眼が光って見えるなどの症状がでます。
  • 股関節形成不全
  • 大型犬に多い病気で、後ろ脚の大腿骨の骨頭部分が股関節からずれている/外れている状態になります。後ろ脚を引きずったり、歩くのを嫌がる、走る時にうさぎ飛びのように走るなどの症状が見られます。
  • 膝蓋骨脱臼
  • 膝関節にある膝蓋骨が内側または外側に外れてしまう病気で、通称「パテラ」と呼ばれています。小型犬に多く発症し、膝蓋骨の外れ具合でグレード1~4に分けられます。歩くときに痛みが伴ったり、後ろ脚を蹴るような仕草が見られたり、後ろ脚を地面に付けないような症状が見られます。
  • 犬の膝蓋骨脱臼についてはこちらで詳しく解説しています。
犬の膝蓋骨脱臼 小型犬で歩き方がぎこちないのはこの病気かも??

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  • 大腿骨頭虚血性壊死(レッグ・カルべ・ペルテス病)
  • 小型犬に多く見られ、1歳以下で発症します。何らかの要因により、大腿骨の骨頭部分に血液が供給されず、骨頭が壊死する病気です。症状は片脚で歩く、痛みから後ろ脚を引きずって歩くなどの症状が見られます。疾患が見つかった場合は壊死している骨頭部分を切除する外科治療が選択されます。
  • 詳しくはこちらをご覧ください。
犬のレッグ・ペルテス病

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新生児の管理

胎児の先天性疾患を確認したら体重をはかり、個体識別できるようにそれぞれのカラーのリボンを付けましょう。

また、新生児の管理において初乳を飲ませることは何よりも重要です。

免疫に関与する抗体が初乳にはたくさん含まれており、初乳を十分に飲めば9割ほどの免疫抗体を獲得できると言われています。そのため新生児が生まれた後上手く母乳まで到達できていない様子がみられれば、母乳のところまで誘導してあげましょう。

出産の翌日以降新生児は1日に約10%ずつ体重が増加するため、決まった時間に1日2回体重を測定し、新生児の発育状況を確認しましょう。

また、生まれたばかりの子犬/子猫は自ら排泄することができません。そのため、母犬/猫がお尻回りをなめて刺激をすることで排泄を促します。育児放棄などで排泄を促す行為が見られない場合や排泄がみられない子犬/子猫がみられたら、濡れたコットン等でお尻回りを優しく刺激して排泄を促してあげましょう。

育児放棄

育児放棄がみられたら人の手助けが必要です。育児放棄で見られる母犬/猫の様子として、以下の行動がみられます。

  • ・子犬/子猫に対して興味を示さない
  • ・母乳を与えようとする様子や排泄を促す様子が見られない
  • ・子犬/子猫を異物と判断して噛んだり、踏んだりする行動(排除行動)

育児放棄の原因として、母犬/猫が出産に慣れていないことや帝王切開での出産だった、母犬/猫の飼い主依存が強いなどが考えられます。

育児放棄かなと思ったら、子犬/子猫を母乳のところまで持っていき、母乳を飲ませてあげたり、子犬/子猫のお尻を母犬/猫の口元までもっていき舐めるように促してみましょう。1週間以上たってもお世話をする様子が見られない場合は、人工哺育に切り替てください。

人工哺育に切り替えたら生後1週間くらいは2~3時間おきにミルクをあげます。新生児の必要エネルギーが十分にとれる量のミルクを与えますが、たくさん飲みすぎると嘔吐や誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため、生後1週間くらいの子犬/子猫の1回量は5-8mlを限度として与えましょう。

また排泄補助も同様に2~3時間おきに実施します。柔らかいガーゼやコットンをぬるま湯で湿らせて、お尻回りを刺激します。子犬/子猫の皮膚はとても敏感のため、ゴシゴシ擦るような刺激ではなく優しくトントンと刺激をしましょう。

まとめ

出産編いかがでしたでしょうか。

妊娠や出産は母子ともに命の危険につながる場面が多くあります。そのため計画的な妊娠、出産で安全なお産ができるようにサポートをしてあげましょう。

もし妊娠を望まない場合は避妊手術をすることをおすすめします。避妊手術に関して詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

犬と猫の避妊・去勢手術はした方がいい?メリット、デメリットを解説します。

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