猫の胃瘻チューブ設置
当院で実施した外科症例について紹介します。
今回は胃瘻チューブ設置の症例です。
※術中写真が表示されますので苦手な方はご注意ください。

海野(獣医師)
一人一人に寄り添った診療ができるようご家族様の話に耳を傾け、お気持ちを汲み取れるように心がけています。外科、救急医療分野の技術向上のため多くのセミナーを受講し、腕を磨いている。趣味はバイオリンと映画鑑賞。アクションやSFが好きでスターウォーズのダースモール推し。
症例情報
プロフィール
猫 雑種 去勢雄 15歳9ヶ月
来院理由
元気および食欲低下
既往歴
猫伝染性鼻気管炎
歯肉炎
慢性腎臓病
検査
身体検査で脱水および体重減少、鼻汁、鼻腔内の通気低下
血液検査で腎数値の軽度悪化
鼻炎に対して内科治療するも改善なく、腫瘍を疑いCT検査及び組織生検による病理検査を追加で実施
診断
鼻腔内腺癌に伴う食欲低下を疑う
胃瘻チューブ設置までの経過
鼻腔内腺癌に対する放射線治療により顔面の腫れや体調改善傾向
その後元気食欲低下が認められ、皮下点滴・鎮痛剤・食欲増進剤で支持療法実施し一時的に食欲改善が認められたものの、再度食欲廃絶
食欲増進剤による副作用も認められていたため、ご家族と相談し胃瘻チューブを設置
外科手術
1.内視鏡を胃内に挿入
2.胃を十分に膨らませた上で胃瘻増設部位を決定
3.メスを用いて皮膚切開し針を胃内に刺入
4.ガイドワイヤーを胃内に挿入
5.内視鏡に把持鉗子を通し、ガイドワイヤーを掴みゆっくり胃から口腔外へ引き抜く
6.ガイドワイヤーにカテーテルを接続
7.切開部位から出ているガイドワイヤーを引っ張り口腔内から胃内までカテーテルを引き入れ切開部位から体外に引き出す
8.カテーテルを固定
手術後の経過
チューブ設置による合併症は特になく、癌の進行によって亡くなるまでの間チューブからの食事および投薬を行うことで体重管理および投薬の管理が容易にできていた。
犬や猫の胃瘻チューブ(PEGチューブ)について
口や喉などの病気や腫瘍によって食べたいのにご飯を食べられない場合や病気によって十分な栄養が取れなくなっている時などに体の外から胃に直接チューブを設置することがあります。
これを胃瘻チューブと呼び、その中でも消化管内視鏡を用いて設置する胃瘻チューブをPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)チューブと呼びます。当院では内視鏡で設置できるPEGチューブを使用しています。
思うように食べられない状況が続いたり、嫌がる犬や猫に対して強制的にご飯をあげたり投薬をすることは動物にとってもご家族にとってもストレスになります。そのような状況で胃瘻チューブの設置は有効的です。
PEGチューブの設置には全身麻酔が必要になりますが、内視鏡を使用するので傷口は小さく処置も短時間で終えることができるため体への負担は最低限になります。
また使用可能期間はおおよそ半年から1年ほどと長期的に使用することが可能です。
胃瘻チューブ設置後のご自宅での管理についてはこちらをご参照ください。

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胃瘻チューブに対しては抵抗感を示される方もいらっしゃるかと思いますが、チューブからご飯を十分な量与えることができ、チューブを通して投薬も可能になるため動物へのストレスを軽減させ、ご家族も嫌がる動物に無理をせずに家庭での治療を行うことができます。