犬の脾臓摘出
この記事の内容
当院で実施した外科症例について紹介します。
今回は犬の脾臓摘出の症例です。
※術中写真が表示されますので苦手な方はご注意ください。
症例情報
プロフィール
犬 トイプードル 去勢雄 10歳1か月
来院理由
元気・食欲の低下
既往歴
会陰ヘルニア
検査
血液検査でRBC3.6×10⁶/ul、Hgb6.8g/dl、Ht20.7%と貧血所見認めた
血液凝固系検査は正常で凝固異常はないと判断された
腹部超音波検査で脾臓由来と思われる腹腔内の大きな腫瘤認めた
貧血の要因が脾臓腫瘤によるもの、かつ腫瘤が大きいため血管肉腫や血腫などを想定
本症例は、腹腔内出血がないこと、貧血の程度も20%で収まっていたことなどから、実施可能と判断し当日中に脾臓全摘出の手術実施
外科手術
1.腹部の正中切開
2.脾臓を確認後体外に露出
3.脾臓に繋がる多数の血管を出血に注意しつつシーリングデバイスを用いて切断し、脾臓を摘出

4.他に転移病変などないか腹腔内を細かく確認
5.腹壁と皮膚をそれぞれ縫合し終了


脾臓の病理組織診断
血管肉腫
手術後の経過
翌日の血液検査で貧血は進行しておらず、術後状態安定していることを確認し退院
術後2週間で貧血は改善傾向、合わせて抗がん剤治療を実施
術後4か月時点で抗がん剤治療の継続、および血液検査や画像検査にて再発の確認を行い現在も元気に暮らしている
犬の血管肉腫について
脾臓は血液をろ過・貯蓄する役割を担っており、体の免疫機能を保つための臓器です。仮に病気が脾臓にあって摘出することになったとしても他の臓器が代替することもできます。
血管肉腫は血管由来の悪性腫瘍であり、中~老齢の犬で多い疾患です。脾臓での発生が1番多いですが心臓や肝臓・皮膚に発生することもあります。
海外の報告では脾臓に見つかったしこりのうち2/3が悪性腫瘍、そのうち2/3が血管肉腫であったと報告されています。日本では小型犬の飼育が多いこと、以前よりも健康診断でしこりが見つかるケースが増えたことなどから、もう少し低い割合ではないかと言われています。
進行が非常に速いため見つかった時点で転移していることが多いことが特徴的です。また、脾臓の血管肉腫は血が止まりづらくなるDICと呼ばれる血液凝固異常がみられることも多く、手術に際しては十分な注意が必要です。
血管肉腫は診断時点でも既に進行しているケースが多く、症状がないまま腫瘍がかなり大きくなっていたり他の臓器に転移していることがあり、治療したとしても予後が厳しい腫瘍と言われています。血管肉腫についてはこちらをご覧ください。
関連記事
血管がガンになる病気 犬や猫の「血管肉腫」って知っていますか?
腹部超音波検査上で腫瘤が見つかったとしても良性・悪性を判断することはできず、腫瘤自体が大きくなり破裂すると腹腔内で出血が起こり、命を落とす可能性もあります。
特に脾臓は血液が豊富な臓器のため破裂や出血がしやすいとされています。極めて緊急度の高い症例のため悪性の可能性や破裂するリスクが少しでも考慮される場合には迅速な脾臓の摘出が必要となり、外科手術後の病理検査で腫瘤の診断を行う必要があります。
今回の症例では腹腔内出血が明らかでないこと、貧血の程度から実施していませんが、手術前に血圧測定することで出血によるショック状態の有無を確認し、ショック状態に近ければ早急な輸液や輸血準備することが必要となります。
脾臓の摘出手術につきましては犬や猫の健康状態、今までの経過などを踏まえた上で獣医師からその動物にとって必要な検査や治療について提案させていただきます。
当院ではセカンドオピニオンを希望される方のご相談も受け付けておりますのでまずはご連絡ください。
役立つ情報を更新中!
ぜひフォローしてください!
スタッフが答えます!
いきなり質問シリーズ
皆さんもぜひ
お家でチャレンジ!
動物に関する情報発信中
実際の手術症例を紹介
動物病院の裏側披露
スタッフの
こんなおちゃめな姿も!?
スタッフが答えます!
いきなり質問シリーズ
皆さんもぜひ
お家でチャレンジ!
動物に関する情報発信中
実際の手術症例を紹介
動物病院の裏側披露
スタッフの
こんなおちゃめな姿も!?
\ Follow Us /
早速インスタグラムを見る