フィラリア症

フィラリア症は蚊を媒介して感染する犬糸状虫(Dirofilaria Immitis)の感染によって起こります。蚊の中では顕微鏡でなければ見えない程小さな虫体であった犬糸状虫は、蚊の吸血時に犬の体に入り込み血液中で次第に成長し、約6-7ヶ月後には繁殖可能な状態になり大量に子虫(ミクロフィラリア)放出します。犬糸状虫は心臓から肺に向かう血管である肺動脈内に寄生し、5-6年の寿命があると言われています。犬の肺は犬糸状虫がいることで炎症が起こり、ミクロフィラリアや成虫の死体が詰まることで徐々に傷んでいき不可逆性に機能が落ちていきます。また、肺の状態が悪くなると二次的に心臓にも負担がかかります。犬糸状虫の治療後、体の中から犬糸状虫がいなくなった後も肺血管の異常だけが少しずつ悪化し重度の肺高血圧症となることもあります。

原因

適切なフィラリア症予防ができていない場合に感染が起こると発症します。

好発品種

好発品種はありませんが、蚊の多い地域や屋外飼育では発症が多くなる傾向があります。

症状

感染初期には無症状の場合が多く、進行に伴い咳や運動不耐性、呼吸困難などがみられるようにます。
さらに病気が進み心機能が低下してくると、体が浮腫んだり、腹水や胸水が溜まったりすることもあります。末期になると筋肉量が減り痩せていき、体はさらに弱り亡くなります。
短期間で多くの犬糸状虫が本来の住処である肺動脈から右心室、右心房、大静脈に移動した例では『大静脈症候群』と言われる急性症状を呈し、黄褐色〜コーヒー色の尿色を示し、ショック状態となり、呼吸困難、可視粘膜の蒼白、虚脱などの症状に見舞われる場合があり、早急に対応しないとそのまま亡くなるケースもみられます。

治療

成虫駆除とミクロフィラリアの駆除、ボルバキアの駆除を組み合わせて行います。
成虫駆除の方法には駆除薬を使用した方法や、外科的な摘出などがあり犬糸状虫の寄生数や患者の状態によって適応に制限があります。また、駆虫薬を使用する際にはより効果をしっかり出すために、ミクロフィラリアの駆除とボルバキアの駆除を先行させて行う場合があります。
生体内でこれ以上犬糸状虫が増殖しないようフィラリア予防薬によるミクロフィラリアの駆除も行います。この治療のみでも幼虫だけでなく成虫の寿命を短縮するとされていますが、時間がかかることや組織的な悪化は続いてしまうため推奨されていません。
犬糸状虫は体内にボルバキア(Wolbachia pipientis) という微生物と共生しており、この微生物は犬糸状虫の生殖能力に関わっており、犬糸状虫体内のボルバキアに対し抗生剤を使い減少させると犬糸状虫の繁殖能力をなくすことができます。また、このボルバキアは犬糸状虫に対する犬からの炎症反応などにも関与していると考えられておりボルバキアの駆除は症状の緩和や肺の状態の維持にも繋がります。
上記治療に加え、運動制限が有効であるとの考え方もあります。

見通し

犬糸状虫の寄生数や寄生期間、それに伴う患者の心臓や肺の状況によって異なります。

予防

蚊の発生から1ヶ月後から発生終了1ヶ月後までの間の予防が重要となります。
現在は従来通り1ヶ月に1回内服する予防薬以外にも、滴下タイプのものや、1年に一回の注射タイプのものなど様々あり、ご家族の生活や本人の性格などを踏まえ確実に予防できるものを利用することをお勧めします。