その目のSOS、見逃さないで!犬と猫の角膜潰瘍と緊急事態のサイン

「目をしょぼしょぼさせている」「涙が多い」「しきりに目をこすっている」
そんな様子を見かけたことはありませんか?

これらは、放置すれば失明の危険もある「角膜潰瘍」の初期症状かもしれません。

角膜潰瘍は、軽度なものから元気や食欲がなくなるくらいまで重症化するものまであるため、早期発見・早期治療がとても大切です。

今回は、角膜潰瘍の基礎知識から、見逃してはいけない緊急サイン、診断・治療、予防法について解説していきます。

\この記事を書いた人/
石井 (ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)

石井 (ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)

皮膚疾患に悩むご家族をはじめ、ご来院のみなさまにご相談していただきやすいような雰囲気づくりに努め二人三脚での治療をしています。2児の父で特に好きな犬種はプードル。日頃の運動不足解消のため暑さ寒さに負けず自転車通勤している。

角膜潰瘍とは

角膜潰瘍とは、目の表面にある透明な膜である角膜に傷がついてしまう状態です。

角膜はとてもデリケートで、ちょっとした刺激や熱でも傷つきやすく、進行すると治療の長期化だけではなく、失明や眼球摘出に至ることもあります。

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角膜潰瘍の種類

角膜潰瘍は以下のように分類されます。

  • 表在性潰瘍:角膜の表面(角膜上皮)のみが傷ついた状態
  • 実質性潰瘍:角膜の中間層(角膜実質)まで傷が及んだ状態
  • デスメ膜瘤:角膜の最深部(デスメ膜と角膜内皮まで達し、膨らみができている状態
  • 角膜穿孔:角膜が欠損し、穴が開いてしまった状態

角膜潰瘍の原因

発症しやすい品種

短頭種など、以下のように目が大きく突出してい犬猫で発症することが多いです。

  • チワワ、パグ、フレンチブルドッグ、シーズー、ペキニーズ、キャバリアなど

 

  • ペルシャ、ヒマラヤン、エキゾチック・ショートヘアなど

原因

角膜潰瘍の原因は様々で、異物、外傷、細菌やウイルスの感染症、乾燥や熱、化学物質などが挙げられます。

  • 外傷
  • 目をこする、草むらでの刺激、ケンカ、顔周りのシャンプーが目に入る、ドライヤーによる乾燥や熱など

 

  • 異物混入や化学物質
  • 砂やゴミの混入、シャンプーや洗剤の刺激、ステロイドなどの薬剤や点眼液中の防腐剤など

 

  • まつ毛や眼瞼の異常
  • 異所性睫毛、逆さまつ毛、眼瞼内反症など

 

  • 感染症
  • 細菌、ウイルス(角膜黒色壊死症など)など

 

  • ドライアイ
  • 乾性角結膜炎など

 

  • 基礎疾患
  • 免疫・ホルモン疾患など

 

  • 神経障害
  • 神経の障害や麻痺によって、瞬きができない・涙の量が減少し、角膜潰瘍が起こる。神経原性乾性角結膜炎など

角膜潰瘍の症状

以下の症状がみられる場合には、早急に受診するようにしましょう。

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角膜潰瘍の危険な進行とリスク

角膜潰瘍は初期段階であれば比較的穏やかに経過します。

重症化すると急速に進行し、全身性の感染症や眼球摘出が必要になるなど、緊急性を持つ病態へと変化します。

特に注意が必要なのが「角膜穿孔」です。

角膜穿孔とは潰瘍が角膜の一番深い層を突破し、角膜に穴が開いてしまった状態です。眼内の組織である虹彩や水分(前房水)が漏れ出し、目の構造を保つことができなくなります。

感染を伴う場合、角膜組織が溶けるように急激に悪化します。細菌や好中球が作り出す酵素(コラゲナーゼ)が角膜を溶かし、数時間~数日で穿孔に至ることもあります。この場合、1~2時間ごとの点眼や頻繁な通院が必要となり、入院治療が推奨されることも多いです。エリザベスカラーは必須の装備となります。

眼内にまで感染が進むと、急速に視力を失うリスクがあり、眼球摘出が治療の選択肢となることもあります。眼内感染が重篤化すると、全身に感染が波及する危険性も否定できません。

これらの症状が見られた場合は、直ちに動物病院で診察を受けましょう

角膜潰瘍の診断

角膜損傷の診断では、問診と身体検査に加え、以下のような検査を行います。必要に応じて眼底検査や細菌培養・薬剤感受性検査などの追加検査を実施します。

  • ・フルオレセイン染色検査(角膜の傷が染まる検査)
  • ・スリットランプ検査(傷の深さや範囲の詳細な観察)
  • ・シルマーティアテスト(涙の量を測定)
  • ・眼圧検査(反射性ぶどう膜炎、続発性緑内障などの評価)
  • ・眼底検査
  • ・細菌培養や薬剤感受性検査
  • ・超音波検査
  • など
眼圧測定検査
眼圧測定検査

角膜潰瘍の治療法

内科的治療

角膜損傷の治療では、点眼薬が主な治療方法となります。

特に抗菌薬の点眼が基本であり、これに加えて角膜保護成分を含む点眼薬の併用が推奨されます。必要に応じて、抗炎症作用を持つ点眼薬も使用します。

非感染性の角膜潰瘍には必要に応じてコンタクトレンズによる角膜保護も行うケースもあります。目薬の差し方についてはこちらもご覧ください。

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  • ・抗菌薬点眼 
  • ・角膜保護成分の点眼
  • ・自家血清の点眼
  • ・抗ウイルス薬(猫のウイルス性の場合)
  • ・エリザベスカラー(自傷防止)
  • ・内服薬(重症例や全身状態に応じて)
  • ・コンタクトレンズによる角膜保護(感染がない場合のみ適応)

外科的治療

角膜損傷の外科的治療では、瞬膜フラップ術や結膜フラップ術により角膜を保護したり、眼瞼縫合でまぶたを一時的に縫い合わせる方法があります。瞬膜や結膜を角膜潰瘍部位まで引っ張って保護する術式が主体となり、角膜穿孔が生じた症例では緊急手術による迅速な対応が必要となります。

いずれの方法においてもエリザベスカラーの装着は必須です。

  • ・瞬膜フラップ術
  • 瞬膜を縫い付けて角膜を保護する方法
  • ・結膜フラップ術
  • 結膜を角膜に移植し保護する方法
  • ・眼瞼縫合
  • まぶたを一時的に縫い合わせて保護する方法

角膜潰瘍の予防と対策

角膜潰瘍の完全な予防は難しいですが、日常生活でできる工夫も多くあります。

定期的なチェックによって、涙や目やに、充血の有無を観察すること、定期的なトリミングや診察によって目に毛がかからないようにすることも重要です。異所性睫毛の除去を行うことも大事な予防のひとつです。

また散歩時は草むらや藪への突入を控えたり、自宅でのシャンプーが眼に入らないようにしたり、ドライヤーでの乾燥や熱による影響に配慮することも大切です。

まとめ

角膜潰瘍は、犬や猫にとって命に関わる疾患ではないものの、放置すれば失明や眼球摘出といった重大な事態を招くこともあります。早期発見・早期治療が視力を守る最大のカギです。

日頃から目の健康に気を配り、少しでも異常を感じたら、迷わず動物病院で診察を受けましょう。

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