【獣医師が解説】猫も風邪をひくの?猫風邪の症状や原因、治療法について解説します
この記事の内容
突然、愛猫が「くしゃみをするようになった」「鼻水や目やにが出ている」と感じたことはありませんか?実は猫も人間と同じように、風邪を引くことがあります。これを「猫風邪」と呼び、主にウイルス感染が原因で発症します。今回は猫風邪について、原因や症状、治療方法や予防策などを詳しくご紹介します。

荻野 (獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。
猫風邪ってなに?
猫風邪とは、くしゃみや鼻水などの症状がみられる上部気道感染症の総称 です。
原因となる病原体はウイルスや細菌などさまざまで、発熱・くしゃみ・鼻水といった人の風邪と似た症状が現れることから「猫風邪」と呼ばれています。
重症化すると命に関わることもあり、特にウイルス性の猫風邪は感染力が強いため、多頭飼いの家庭では他の猫へ感染が広がるリスクが高くなります。特に免疫力の低い子猫や老猫では重症化しやすいため、より注意が必要です。
猫風邪の原因は?
猫風邪を引き起こす原因は、以下のようにウイルスや細菌、真菌など様々です。
- ・猫ヘルペスウイルス(ウィルス)
- ・猫カリシウイルス(ウィルス)
- ・クラミジア(細菌)
- ・ボルデテラ(細菌)
- ・クリプトコッカス(真菌(カビ))
中でも猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスが2大要因と言われています。
猫風邪はうつるの?
猫風邪は唾液や鼻水に含まれて空気を介して飛沫感染します。多頭飼いの場合は、他の同居猫とのグルーミングや食器の共有によって感染のリスクが高まります。
「うちの子はお外に出ないから安心」なんて思っているそこのあなた!それは非常に危ない思考です。外にいる猫はほとんどと言っていいくらい風邪のウイルスを持っており、外に出たり網戸越しに外の猫に近づいたりすることで感染したり、人間の手や衣服、靴について室内にウイルスが持ち込まれ、感染が成立するというケースもあります。
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猫風邪の症状は?
猫風邪に感染すると、以下のような症状が見られます。早期に気づいて適切に対応することで重症化を防ぐことができます。
見逃しやすい猫風邪のサイン
- ・目やにが多い(拭いても拭いてもでてくる)
- ・目が赤い
- ・1日に何回も連続してくしゃみをする
- ・くしゃみが数日間続く
- ・鼻の周りが黒く汚れている
- ・発熱
- ・食欲や元気がない
- ・鼻水(黄色や緑色)がでている
- ・鼻血がでている
猫風邪は初期段階では軽く見えることがありますが、様子を見すぎると症状が悪化し、目が開かなくなるほどの腫れや、鼻・目の変形、角膜に白い傷(潰瘍)が残ることもあります。
進行するとどうなるの?
治療せずに放置した場合、進行し「肺炎」を起こすなど命に関わる場合もあります。
また、猫風邪では結膜炎や涙目がみられることがあり、炎症が強い場合には結膜がゼリー状に腫れる「結膜浮腫」や、まぶたが腫れる「眼瞼腫脹」へ進行することもあります。



角膜黒色壊死症とは?
症状が悪化した事例として、「角膜黒色壊死症」があります。
角膜黒色壊死症はヘルペスウイルスの感染によっておこる病気で、角膜が壊死して黒くなり、その周囲で炎症が起きて強い痛みを伴う病気です。
一度壊死が起こってしまうと取り除かないといけないことが多く、再発することも多いため長期にわたる治療が必要だったり、外科手術が必要なケースもあります。
何度も再発を繰り返す場合や、点眼や抗生剤の内服で改善しない場合は、角膜黒色壊死症を疑うこともあります。

上の写真は、正常な猫の目と角膜黒色壊死症の目の比較写真です。角膜黒色壊死症の場合、目に黒い斑点があり、そこに向かって血管が走っており、炎症を起こしていることが分かります。
猫風邪はどうやって診断されるの?
猫風邪はいろいろな感染症が複合していることが多く、症状だけでは原因を追究することは困難なため以下のような特殊な検査が必要です。
- PCR法
ウイルス・の遺伝子を検出する方法です。クラミジアでは目のスワブを検体としてクラミジア抗原を検出します - 血液検査
ワクチン未接種の子猫は採血し抗体検査で診断ができます - 真菌培養検査
クリプトコッカスは病理検査を行い、真菌培養検査で診断します
鼻水やくしゃみなど「あれ?風邪かな」と感じたら、まずは動物病院で相談をしましょう。
猫風邪の予防と治療法は?
ウイルスによる猫風邪はワクチンで予防ができます。予防接種をしていれば、感染しても軽い症状で抑えることができます。ワクチンについてはこちらの記事をご覧ください。
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猫風邪に特効薬はなく二次感染を抑えるために抗生剤を使ったり、ウイルスの活性を抑えるためにインターフェロン治療が行われます。結膜炎の症状がある場合は、点眼薬や眼軟膏を使用します。
まとめ|猫風邪になったらどうする?
猫風邪は、経過が長いと治療期間もどんどん長くなってしまいます。
特に子猫や老齢猫は注意が必要です。早めに気づいて、対処してあげることが大切です。
また、外の猫をお迎えするときは、先住猫にうつる感染症のリスクを回避しましょう。おなかの中の寄生虫、ノミ、ダニ、シラミ、ミミダニなどの「寄生虫感染症」や、猫風邪だけでなく「猫エイズウイルス(FIV)」「猫白血病ウイルスの感染(FeLV)」についてもしっかり調べ、感染から守りましょう。詳しくはこちらの記事もご覧ください。
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