犬と猫の手術で使うエリザベスカラーと洋服の違いを解説します。

「エリザベスカラー」は皆さんご存じでしょうか

パラボラアンテナのような形をした、首に着ける保護器具のことです。

一度は見かけたことがある、もしくはペットが使用したことがあるという方も多いのではないでしょうか。

最近ではエリザベスカラーに代わりエリザベスウェアという洋服を使用する方も増えてきています。

それではエリザベスカラーはどのような時に使うのか、エリザベスウェアとの違いとは一体何なのかについて今回はお話していきます。

 

カラーっていつ使うの?

主な目的は傷口の保護です。手術後や怪我をしてしまった時など、傷口を舐めたり噛んだりしないために使用します。

傷口を舐めることで縫った糸が外れたり傷口の感染を起こすことがあります。

また目や耳など顔周りに疾患がある場合には手足で掻いてしまわないようにするなどの用途もあります。

糸が取れてしまうと場合によってはもう一度縫う必要がありますし、感染症を起こしてしまえばさらに辛い思いをすることになります。

目や耳も搔いてしまうことで、症状が悪化することもあります。

カラーをしていると何だか不自由そうだし、かわいそうに思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、動物は舐めたり掻いたりといった行為を自分で我慢することはできません。

早く治してあげるためにも、カラーは必要なのです。

 

カラーには周りの人が怪我を防止するといった使用方法もあります。

病院での診察時など患部に痒みや痛みがある場合に触られるのが嫌で人に噛みつこうとすることがあります。

また犬や猫は恐怖を感じた時に攻撃行動が出ることがあります。

しっかり診察を行うため、またご家族や病院スタッフの怪我を防ぐためにカラーを着けることがあります。

 

ウェアっていつ使うの? カラーとの違いは?

続いてはエリザベスウェアについてです。

着用部分の皮膚の保護するために使用され、傷口を舐めることを防止します。

その他特殊なものとして、胃瘻チューブを設置した子用のものがあります。

胃瘻とはお腹に開ける小さな穴のことで、そこから繋いだチューブで直接胃にご飯や薬を流し込むことが出来ます。

こちらのウェアはそのチューブをしまっておくためのポケットが付いています。

胃瘻チューブをしまうポケットがついています。

 

カラーと同じく、手術後などに着用することが多いですが、違いは一体どこにあるのでしょうか。

まずひとつめは動きの制限です。

カラーを着けると首回りの動きが制限され周囲が見えづらい、音も聞こえづらい状況となります。

また傷口を舐めないようカラーから鼻先が出ないようにしているので、食事や飲水のしづらさ、匂いの嗅ぎづらさがデメリットとなります。

ウェアであれば動きの制限はあまりかかりませんのでストレスの軽減が期待出来ます。

ただ、洋服を着ること自体がストレスになる子もいますので、注意が必要です。

ふたつめは保護可能な範囲の違いです。

ウェアも皮膚や術創の保護を目的としていますが、足先や尾までカバーするのは困難です。しかし、エリザベスカラーは首以下の保護が可能ですし顔周りを触ることも防ぐことが可能です。

 

カラー、ウェアどちらもメリットとデメリットがあります。

今の身体の状態やその子の性格、使用する目的や普段の生活環境などを考慮しながら、獣医師と相談の上でどちらにするか決めていきましょう。

その他お洋服について詳しく紹介した記事も掲載しておりますので、こちらも併せてご覧ください!

 

カラーの種類

カラーにはプラスチック製の物以外にも、布製やクッション製の物などがあります。

布製やクッション製は首に当たる部分が柔らかく、メリットとしてストレスの軽減という点があげられます。

見た目も可愛く種類が豊富というのも、ご家族にとっても嬉しい点かと思います。

反対にデメリットとして、素材が柔らかいため口や鼻が傷口に届いてしまう可能性が高いこと、激しく動いた際には首から外れやすいことなどがあげられます。

プラスチック製のメリットは強度があり壊れにくいこと、透明なものにすれば視界がクリアであること、あるいは比較的外れにくいことです。

汚れてしまっても洗浄しやすく、衛生面でも良いと言えるでしょう。

しかし布製に比べ重さがあり素材が硬いため行動が制限される可能性があるというところは、デメリットとしてあげられます。

いずれの種類であってもメリットデメリットどちらもあります。その子の性格や体格、生活環境に合わせたカラーを選びましょう。

 

カラー着用時のポイント!

実際にエリザベスカラーを使用する際のポイントを解説します。

(1)緩くてもきつくてもNG!指3本分!

カラーをしめる時、可哀想だから…と緩くしすぎてしまうとすぐに取れてしまいます。かと言ってきつすぎると呼吸がしづらくなってしまいますね。ベストはヒトの指が3本入るくらいです。

(2)どうしても緩い時には…

購入したのはいいけれど鼻や口が出てしまう、カラーについているホックの位置だと指3本分にならない!という場合もあるかと思います。

まず鼻や口が出てしまう時には、首にタオルを巻き、そこからカラーを着けるようにしましょう。

ホック位置が合わない時には、テープを使用して固定することをお勧めします。

(3)食事のポイント!

食事がしづらくなるので、お皿を台の上に固定したり、お皿を重ねたりして高さを出すことで食べやすくなります。

食事の際にご家族が見てあげられる環境であれば、その時は外していても大丈夫です。

カラーのせいで食欲不振にならないよう注意してあげてください。

(4)お手入れ

食事をしたりお散歩に行ったりすると、カラーは汚れます。

衛生管理のためにも汚れているなと思ったら、水分を含ませたタオルなどで優しく拭いてください。

 

ウェア着用時のポイント!

続いてはウェア着用時のポイントです

(1)体格や雌雄差

ウェアには様々な種類があります。犬用と猫用、それから雄用と雌用。それから体格によってサイズの違いが。カラーよりもサイズの調整がきかないため、しっかりその子に合うものを選びましょう。

(2)毛玉防止

服の素材やその子の毛の長さや質によっては、ウェアの中で毛玉が出来る可能性があります。素材を確認するのは勿論、ウェアを着て生活する際には、定期的に脱がせてブラッシングする時間を作りましょう。

 

最後に…

今回はエリザベスカラーとエリザベスウェアについてお話しました。いかがでしたでしょうか。

ご不安なことや気になることなどございましたら、いつでも当院スタッフまでお声がけください。

この記事を書いた人

興村 江美(愛玩動物看護師)
幼少期に祖母の家で犬と暮らしていたことから動物関係の仕事を選択。現在は院内備品の在庫管理やシニア動物のケアに力を入れており、ご家族へ配布するシニア介護についての資料作りも担当。趣味はハロープロジェクト所属アイドルのコンサート鑑賞で休みの日は定期的にライブに足を運んでいる。