犬や猫に急にできた青あざ、血液が固まらないサインかもしれません!

どこにもぶつけてないのにあざがあったり、ぶつけないような場所にあざがあったりしたことはありませんか?

気づかないうちにぶつけていることはよくありますが、あざがあるような場合はもしかしたらすぐに病院に行った方がいい病気かもしれません!

“あざ”は、生まれつきあるようなあざの母斑、毛細血管の拡張による紅斑、皮下出血が原因でできる紫斑があります。

今回は紫斑について説明していきましょう。

 

紫斑とは

血液が血管外へ漏れでる、いわゆる内出血によって皮膚や粘膜に起こる症状です。

はじめは暗赤色→紫褐色→黄色→褐色へと色合いが変わっていき時間の経過とともに体内へ吸収されていきます。

紫斑はその大きさによって点状(φ1~5㎜)、斑状(φ数㎝以内)、びまん性(大きな面積の出血)に分類されます。

紅斑は毛細血管の拡張によって赤くなっており皮下出血ではないため、軽く押すと赤みがひきます。

内出血を起こして目に見えるようなところにおこる場合は皮下出血、歯肉出血、鼻血など皮膚や粘膜から出血を起こす表在性出血といわれます。

その他にも、見えないところで消化管粘膜や頭蓋内出血も起こることがあります。

 

紫斑ができる原因

自転車事故などの外傷によるものと止血機能に障害が出ている場合があります。

止血機能をつかさどる血小板や血液凝固因子の異常によるものがあります。

血小板や血液凝固因子が非常に少なかったり、正常に働かないことで出血が止まりにくくなり紫斑を起こします。

 

止血のメカニズム

では、出血が起きて止血が起こるまでのメカニズムについてご説明していきましょう。

出血から止血まで、非常に多くの工程が関わっています。大きく分けると一次止血と二次止血に分けられます。

①一次止血

血管が破れて出血が起こると血管が収縮して傷口を小さくします。次に血液中の血小板が傷口に集まってきて血栓を作って傷口を塞ぎます。

これを一次止血(血小板血栓)といいます。

②二次止血

血小板だけの血栓だけでは止血には不安定で脆く十分な強度がありません。

そこで一次止血に引き続いて血液成分の凝固因子というタンパク質が働いてフィブリンが網状になり血小板を覆ってくれます。

そしてフィブリンと血小板が合わさって強度を得て止血が完了します。このことを二次止血(フィブリン血栓)といいます。

二次止血にはⅠ~IX(1~13)の12種類の凝固因子が関与しています(6番は不在)。

これらの凝固因子は順番に反応を起こし、最後にフィブリンがポリマー(網状)になり完了します。

さらに内因系(血管壁の損傷による出血)と外因系(空気や組織液など血管外の物質が血液にふれる出血)に分けられています。

血友病は、この凝固因子のうち第Ⅷ,IX 因子に異常が生じて凝固反応の流れが止まってしまい、出血が止まりにくいという病気です。

二次止血で関わっている因子を表した図です。止血一つにもたくさんの因子が関わっていることが分かると思います。

 

紫斑がある場合に必要な検査

貧血の程度や止血機能を見るためにCBC 検査(赤血球・白血球・血小板の数・ヘマトクリット値など)、血液凝固因子(PT,APTTなど)の検査を行います。

止血機能異常を起こす他の基礎疾患があるか血液化学検査、レントゲン検査、超音波検査などを行い全身の検査を行います。

 

まとめ

紫斑は止血異常によってできる大病の症状の一つで、命にかかわる病気が隠れているの可能性があります。

日常生活の中で、おなかや内股など、皮膚を確認できる範囲でよく観察し、小さな内出血やあざを見つけたら、すぐに受診しましょう!

この記事を書いた人

荻野 直孝(獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。