【獣医師が解説】猫の乳腺腫瘍(乳がん)とは?原因・特徴・治療を解説します。
「お腹を撫でていたら、しこりがあるような…」それは乳腺腫瘍、いわゆる乳がんかもしれません。
乳腺腫瘍とは、乳腺の組織の一部が腫瘍化して増殖することで「しこり」ができる病気のことをいいます。
一口に乳腺腫瘍と言ってもいろいろな種類があり、良性のものから悪性度や進行度の度合いも様々ですが、猫の乳腺腫瘍はどうなのでしょうか?今回は猫の乳腺腫瘍の原因や治療について解説していきます。

南(獣医師 外科部長)
日本獣医がん学会、日本獣医麻酔外科学会に所属し外科部長として多くの手術症例を担当。犬猫からよく好かれ診察を楽しみにして来てくれることも多く、診察しながらずっとモフモフして癒してもらっていることも。見かけによらず大食漢でカップ焼きそばのペヤングが好き。1児の父であり猫と一緒に暮らしている。
猫の乳腺腫瘍の原因
乳腺腫瘍の発生には、性ホルモンが関わっていると言われています。
そのため、発情前に避妊手術を行うことで発生率をぐんと下げることができます。
猫では避妊手術を実施した時期によって、乳腺腫瘍の発生頻度の低下率は異なることが報告されています。
- 生後6ヶ月未満:91%低下率
- 生後12か月未満:86%低下率
- それ以降:11%以下の減少率
乳腺腫瘍は圧倒的にメス猫に多い腫瘍ですが、稀にオス猫でも発症したケースがあります。猫の乳腺腫瘍の全体のうち0.5~5%以下がオス猫で、そのうちの30%程度は性ホルモン投与を実施している個体での報告です。
乳腺腫瘍の発生率を低下させるだけでなく、卵巣子宮の病気の予防のためにも出産させる予定がない場合には早期の避妊手術が推奨されています。
一般的には生後5〜6ヶ月齢頃が手術の適齢期とされており、AAHA(獣医療におけるガイドラインを策定している海外の機関)では生後5ヶ月齢未満での手術を推奨しています。手術の時期が早すぎても麻酔のリスクがあるため、手術の時期を決める際は体重や乳歯の生え変わりなども診てもらいながら獣医師とよく相談して決めましょう。
猫の乳腺腫瘍の症状
乳腺腫瘍は乳腺に沿ったライン上にしこりができます。
初期段階では米粒ほどの大きさで毛に隠れやすく、しこり以外には無症状であることが多いです。
徐々に大きくなることでご家族が異変に気が付き、受診されることが多くあります。また、進行していくと猫本人がお腹を舐めて気にする行動がみられたり、自壊(腫瘍が破裂すること)して出血や悪臭がするようになります。
さらに進行すると転移などにより、食欲不振や咳といった症状を示すことがあります。

猫の乳腺腫瘍の特徴
乳腺腫瘍には一般的に良性と悪性があります。
猫の乳腺腫瘍は10歳以上のシニア猫での発症が多く、また約85~95%が悪性腫瘍であるといわれています。
悪性の乳腺腫瘍
犬では頭側から数えて3番目ないし4番目の乳腺に発生することが多いといわれていますが、猫ではすべての乳腺どこにでも発生します。また良性に比べると急速に進行します。比較的早い段階で転移をすることが多く、発見時点で約20~42%の猫にリンパ節への転移が見つかったという研究報告もあります。
- リンパ節や肺への転移:約80%
- 肝臓:約25%
その他の臓器への転移も少数ではあるものの、報告はあります。
悪性の乳腺腫瘍では死に至ることもあります。
良性の乳腺腫瘍
乳腺肥大や線維腺腫様過形成(乳腺肥大)などが良性に当たります。比較的若い猫にも発症が見られ、10歳以下の猫での報告が多くあげられています。
転移はしませんが、どんどん大きくなってしまうと痛みを伴うことやQOL(生活の質)の低下を招きます。
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猫の乳腺腫瘍の検査
細胞診検査
しこりを発見したらそれがどんな細胞で構成されるものかを検査し、これによってしこりの正体の目星をつけます。しこりに細い針を刺して細胞を採取し顕微鏡で観察する「細胞診検査」を行います。細胞診検査についてはこちらで詳しく解説しています。
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画像検査
細胞診検査の他にも、肺やリンパ節、肝臓での転移の確認のためレントゲン検査や超音波検査もしくはCT検査などによる画像検査も行います。
レントゲン画像では、転移箇所が白く映って見えます。レントゲンでは映ってこない大きさもありますので、場合によってはCT検査をご提案することがあります。

猫の乳腺腫瘍の治療
乳腺腫瘍の治療方法として最も効果的なのは、外科手術で取り除く方法です。
乳腺腫瘍のみを部分的に切除する方法から、腫瘍がある乳腺やリンパ節までを広範囲に切除する方法もあります。
しかし、猫では犬と比較して乳腺腫瘍が悪性である可能性が高いことから、腫瘍が存在する側の乳腺をすべて切除する術式が推奨されます。
片側の乳腺腫瘍であっても両側とも切除する方が予後がいいというデータがあります。
左右の両側に乳腺腫瘍がある場合、一度の手術で両側乳腺全摘出をせず1か月ほどの間隔をあけて片側ずつ広範囲の切除をします。これは乳腺とともに皮膚も広範囲に切除し縫い合わせる影響で、術後に胸が十分に膨らむだけの皮膚の余裕がないために呼吸が苦しくなってしまわないようにするためです。その他に、抗がん剤治療や放射線治療を行うこともあります。
まとめ|猫の乳腺腫瘍を予防・早期発見するために
先述したように初回発情前に避妊手術をすることで、乳腺腫瘍の発生率がかなり下がるため早期避妊手術が推奨されます。
しかし、ただ早ければ良いというわけではありません。適正な時期に手術を実施するため獣医師にご相談ください。当院の避妊手術についてはこちらでご紹介しています。
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悪性の場合の進行具合は良性に比べて速いため、長期にわたって様子を見ているとどんどん大きくなり手が付けられない状態になってしまうこともあります。腫瘍が大きくなってからでは、転移するリスクを助長させるだけでなく手術の傷も大きく身体への負担にも大きく影響が出ます。
乳腺腫瘍は小さいうちに発見できるように普段からスキンシップをとるように意識し、お腹まわりをよく触って観察することが最も大切な予防といえます。
気になることがあればお気軽にご相談ください。


