「食道のSOS」犬猫が教える病気のサイン~吐出(としゅつ)編~
食べ物や液体を吐き出す姿を見ると、飼い主として心配になるものです。しかし、一言で「吐く」といって見た目は似ていても「嘔吐(おうと)」と「吐出(としゅつ)」は全く異なる症状です。
今回は「吐出」について、飼い主が自宅でできる対処法から受診するタイミングなどについても解説していきます。

石井 (ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)
皮膚疾患に悩むご家族をはじめ、ご来院のみなさまにご相談していただきやすいような雰囲気づくりに努め二人三脚での治療をしています。2児の父で特に好きな犬種はプードル。日頃の運動不足解消のため暑さ寒さに負けず自転車通勤している。
嘔吐と吐出の基本的な違い
吐き戻しは「嘔吐(おうと)」と「吐出(としゅつ)」に分類されます。
まず、口から飲み込み込んだ後、胃や腸に入り、胃腸内で消化が進んだものが逆流して口から吐き出されるのが、一般的な「嘔吐(おうと)」です。
もう一つは「吐出(としゅつ)」と呼ばれ、胃に届く前に逆流して口から出てしまうことを指します。未消化の内容物を吐き戻すのが特徴です。

吐出とは
吐出は嘔吐とは異なり、脳の嘔吐中枢がほとんど関与しません。食道内の内容物をそのまま吐き戻す現象です。
「嘔吐」についてはこちらをご覧ください。
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原因
吐出は食道の問題が主な原因となります。
- 食道炎
- 異物の誤飲による物理的刺激、嘔吐の繰り返しや胃酸や胃内容物逆流、薬剤による炎症などが原因
- 巨大食道症
- 食道の拡張により食べ物を今で運ぶ機能が低下した状態。神経や筋肉の異常(重症筋無力症など)やホルモンの異常(甲状腺機能低下症など)や先天性疾患(大動脈弓遺残など)などが原因
- 食道狭窄
- 腫瘍や瘢痕組織(傷がなおった跡)などにより食道が狭くなった状態
- 食道異物
- 食道内に停滞する異物
「食道」についてはこちらをご覧ください。
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また、短頭種の犬種(フレンチブルドッグ、パグ、ボクサーなど) は解剖学的特徴から食道の問題が多く起こりやすい傾向にあります。子犬や子猫は消化器系がまだ十分に発達しきっていないため、また高齢の子は食道の筋力低下により、吐出を起こしやすくなります。さらに、食事の際慌てて食べてしまう性格の子も、吐出を起こしやすい傾向があります。

受診の目安となる様子や症状
犬猫の吐出や嘔吐において、内容物(どんなものを吐いたのか)や、吐く前後の様子、年齢は原因を知る手掛かりとなります。以下の様子や症状が見られる場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
- ・吐いたものに血が混じっている
- ・異物を飲み込んだ後に吐いた
- ・お腹が膨れている、痛がっている
- ・短い間に何度も吐いている
- ・元気がなくぐったりしている
- ・脱水している(口の中が乾いている、皮膚をつまんでも戻らない など)
- ・皮膚や白目の部分などが黄色くなっている(黄疸)
- ・発作や痙攣(けいれん)を起こしている
- ・吐き気に加えて激しい下痢もしている
- ・子犬や高齢動物の子が吐いている
また、中毒物を食べてしまった後や、ケガをした後に吐いている場合、呼吸が苦しそうなときなどはすぐに救急対応が必要です。様子を見すぎると重症化し、最悪の場合は死に至ることもありますので、早急に動物病院を受診しましょう。

一方で、1日以内に1〜2回程度吐くあるいは吐いた後すぐに元気が戻った場合などは経過を観察することもあります。ただし、元気や食欲が回復しない場合や、状態が悪化した場合には、速やかにかかりつけの獣医師に相談してください。また、判断が難しい場合や、緊急性が疑われる場合には、迷わず早急に動物病院を受診しましょう。
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診断と治療
まずは何がきっかけで発症したのかが重要なため、問診を詳しく行います。いつ、どんなことがきっかけで、心当たりはあるかなど。発熱や疼痛がないか身体検査を行い、吐出が疑わしい場合には下記に検査を行います。
- ・レントゲン検査
- ・バリウム検査
- ・内視鏡検査
- ・CT検査

治療は、それぞれの原因となる疾患の治療により異なります。
食道に構造的な問題がある場合には、外科手術が必要となることがあります。
また、吐出を起こしにくくするために食べ物の形状、固さ、食事の方法、食後に理想的な姿勢を保つための指導など、食事管理の見直しを行い症状や原因に応じてお薬を使用することもあります。
吐出によって誤嚥してしまった場合、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあるため注意が必要です。誤嚥性肺炎は重症化しやすく、命に関わる危険性があるため速やかな治療が必要です。
受診する際に準備しておくとよいこと
問診時に答えられるように、あらかじめ確認しておくと良いポイントがあります。気持ちに余裕があれば、吐いた様子をスマホなどで撮影した動画や、吐いたものの色や状態がわかるものを持参すると、診察の参考になります。確認しておきたい様子は以下の通りです。
- ・いつ、どのくらい吐いたのか
- ・何かきっかけはあったか
- ・吐き戻したときの様子
- ・どんなものを、どれくらい吐いたか
- ・吐き戻し以外に異変がみられるか
また、普段から拾い食いや誤食の癖がある場合には、それも伝えると診断のヒントになることがあります。


自宅でできる応急処置
様子を見ても問題ないと判断できた場合には、自宅でできる対処法があります。
まずは少量の水を与えて、安静にしましょう。症状が落ち着くまで絶食、もしくは食事の量を減らし、消化の良いものを少しずつ与えます。その後、ほかの症状がでてきた場合には、すぐに動物病院を受診してください。また、誤嚥を防ぐために、伏せの姿勢か横向きに寝かせ、喉に吐物が停滞しないように注意しましょう。
吐出の予防として、特に吐出しやすい子に対して、次のような工夫が効果的です。
- ・高さのある食器を使用して、重力によって食事が胃へ流れやすくする
- ・体を起こした姿勢で食事をさせる
- ・慌てて一気に食べてしまわないように、食事のペースを遅くするための特殊な食器を使用する
- ・少量ずつ回数を増やして食事を与える
- ・食後は安静に過ごさせる
さらに、ストレスの少ない環境づくりや、定期的な健康診断も予防には大切です。

まとめ
嘔吐と吐出は、単なる不快な症状ではなく、隠れた病気のサインである可能性があります。両者の違いを理解し、適切に観察することで、ペットの健康問題を早期に発見し対処することができます。心配な症状が見られた場合は、できるだけ早く獣医師に相談することをお勧めします。健康を守るための日常的なケアと注意深い観察が、長期的な健康維持につながります。不安に思うことがあれば、かかりつけの獣医師にご相談ください。