【初心者飼い主さん必見】犬や猫の避妊手術はいつまでにするべき?メリット・デメリットを獣医師が解説します

避妊手術とは、女の子に対して繁殖をできなくする手術を指します。多くの犬や猫にとって生まれて最初に経験する手術であり、うちの子も経験した!という方や、検討している方も少なくはないはずです。では避妊手術は何歳までにすれば良いのでしょうか?

実は「何歳までに絶対終わらせましょう」という制限はありません。しかし、ホルモンが関与する病気の予防をするために、生後6カ月頃の避妊手術が望ましいとも言われています。

今回は避妊手術について、当院での去勢手術を受ける際の流れと一緒に獣医師が解説します!

\この記事を書いた人/
湯田(獣医師)

湯田(獣医師)

幼少期から生き物や自然と関わることが好きで、昆虫や魚類、爬虫類と様々な生き物を飼育している。中でも10年間一緒に過ごした大型犬はもはや「妹」。獣医師として特に腫瘍の分野に力を入れたいと考え、日々勉強に励んでいる。甘党、ディズニー好きという女子っぽさもありつつ実は恐竜好き。

避妊手術のタイミング

「避妊手術は必ず何歳までに終わらせておきましょう」という制限はありません。

実情は国によって適正時期に違いがあります。獣医療の様々なガイドラインを策定している海外の機関の発表によれば、以下の時期での避妊手術が推奨されています。

  • 犬
  • 成犬時の体重が20kg未満の場合:生後5~6カ月齢
  • 成犬時の体重が20kg以上の場合:9~15カ月齢(成長度合いに応じて)

 

  • 猫
  • 生後5カ月齢頃

体重20kgを超える大型犬は早期に避妊手術を行うと関節疾患を発症する可能性があるとされているため、慎重に実施時期を検討する必要があります。

また手術時に発情を迎えてしまった場合、子宮や卵巣周囲の血管が発達し、出血のリスクが高まるため手術を延期する場合があります。

また生後5カ月齢頃から、永久歯が生えてきます。通常、永久歯が生えて数日から2週間くらいで乳歯は抜けますが、抜けずに残る場合があります。これを乳歯遺残といい、特にチワワやトイプードルなどの小型犬は骨格などの遺伝的素因から多くみられる傾向があります。抜けずに残った乳歯は咬み合わせが悪くなる(不正咬合)、歯垢が溜まりやすく歯周病の原因にもなり得ることから抜歯を行う必要があります。当院では、乳歯の生え代わりの様子を見ながら、自然に抜けていない乳歯は去勢手術時に抜歯を行っています。乳歯の生え代わりについてはこちらをご覧ください。

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避妊手術のメリット

病気の予防

避妊手術によって雌性ホルモンが関与する病気の発症リスクを低減することができます。

  • ・子宮蓄膿症
  • 発情後に免疫力が下がる黄体期に、大腸菌などの細菌が子宮内に侵入し増殖して起こる病気です。特にわかりやすい症状は生理が終わったあと、外陰部から膿がでてきたというものです。しかし、閉鎖型と呼ばれるタイプでは排膿が見られず、食欲低下や吐き気、多飲多尿の症状がみられます。
  • 子宮が破裂して膿が腹腔内に漏れてしまうと腹膜炎を起こし短時間のうちに死亡してしまうことがある怖い病気の一つですが、避妊手術を行えば生涯発症することはありません。
  • 子宮蓄膿症について詳しくはこちらをご覧ください。
避妊していないメスは要注意!犬と猫の子宮蓄膿症を解説します。

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  • ・乳腺腫瘍
  • 犬・猫ともに死因の第一位を占める腫瘍(癌)の1つで、最も発生の高い腫瘍であり、特に8歳以上の高齢の未避妊犬に多く発症します。乳腺腫瘍には良性と悪性があり、大型犬や猫では悪性の比率が高いとされています。特に猫では乳腺腫瘍のうち、およそ8割以上が悪性であると言われています。悪性の乳腺腫瘍は、リンパ節転移や多臓器への転移など、全身に悪影響を及ぼします。
  • 初回発情前に避妊手術を行うことで、犬で99%以上、猫でも90%以上の割合で乳腺腫瘍を予防できるといわれています。
  • 乳腺腫瘍について詳しくはこちらをご覧ください。
【獣医師が解説】猫の乳腺腫瘍(乳がん)とは?原因・特徴・治療を解説します。

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他にも雌性ホルモンが関与する疾患として膣過形成や膣脱、未避妊の犬でみられる偽妊娠などが挙げられます。これらの疾患は、避妊手術によってその発症リスクを大幅に抑えることができると考えられています。

性行動の消失

避妊手術を行うことで、性的な異性に対する興味が消失します。精神的な安定が得られるようになると、性ホルモンに関連する問題行動の抑制も期待できます。

ただし、手術によってこれらの行動が完全になくなるわけではなく、特に問題行動に対してはしつけやその子にあった接し方がとても重要です。

望まれない妊娠を防ぐ

避妊手術をしていない場合、想定外の交配で子犬子猫が増えてしまうことがあります。責任を持った飼育のためにも、適切な時期に避妊手術を行うことをお勧めします。

避妊手術のデメリット

子孫を残せない

避妊手術は卵巣と子宮を取り除く手術であり、当然一度取り除いた精巣は元には戻せません。

将来設計についてご家族全員で話し合った上で手術を実施しましょう。

全身麻酔の必要性

避妊手術は全身麻酔下で行います。

手術というのは動物の体にとって痛みや負荷は避けられないため、しっかりと麻酔をかけて負担を少なく安全に実施する必要があります。

麻酔中は心電図モニターなどを使いしっかりと状態を確認しながら行っており、若齢での避妊手術では合併症が起こることは非常に少なくなりましたが、100%安全というものでもありません。起こり得ることとしては不整脈、徐脈、体温や血圧の低下、投与した薬剤へのアレルギー反応などが挙げられます。一部の症例では心停止のリスクを伴うものでもあります。

太りやすくなる

ホルモンバランスが変化することによって一日の代謝エネルギー量が減り、太りやすくなります。

体重が増えることによって罹りやすい病気も多く存在するので、避妊手術後は特に食事や運動の管理を行っていきましょう。食事の管理に関して、当院HPで1日に必要なカロリーを計算することができます。ぜひ活用してみてくださいね。食事に関しては、こちらでもご紹介しておりますのでご覧ください。

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去勢手術についてのメリット、デメリットについてこちらで詳しく解説しています。

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当院の手術プラン

避妊手術プラン

当院では、「スタンダードプラン」と「プレミアムプラン」のどちらかをお選びいただけます。それぞれのプランによって、検査内容や手術方法が多少異なります。

  • スタンダードプラン
  • 検査:血球検査、血液化学検査
  • 手術方法:血管を縫合糸で結紮し、精巣を摘出。

 

  • プレミアムプラン
  • 検査:スタンダードプランの項目 +総胆汁酸検査 +血液凝固系検査
  • 手術方法:血管シーリングデバイスという機械を用いて血管を止め、精巣を摘出。縫合糸で結紮するの手術時間の短縮や、稀に生じる糸への生体反応を予防することができる。

※総胆汁酸検査とは、門脈体循環シャントなどの先天性疾患のスクリーニングができる検査項目です。血液凝固系検査とは、止血機能に問題がないか確認する検査項目です。

ただし、犬ではどちらのプランでも皮膚のすぐ下や、皮膚自体を縫合する際には縫合糸を使用します。前者は体内に吸収され、後者は抜糸を行うため、最終的にずっと残り続ける糸はありません。手術プランに関しては、診察や身体検査を行う中でその子に合ったプランをご提案させていただく場合もあります。

当院での手術の流れ

去勢手術は全身麻酔下で行います。全身麻酔をかける上で問題がないか調べるために、手術の約1週間~10日前に選択した手術プランに準じて8時間以上の絶食の状態で術前検査を行います。また、その他に動物の状態によって必要な検査を追加する場合もあります。手術を行う上で問題となる異常がなければ、予定通りの日程で手術を実施します。

原則1泊入院にて術後の経過を観察し、健康状態に問題がなければ手術翌日の夕方頃退院が可能です。

去勢手術後の自宅での過ごし方

退院の際に術創の保護のため、エリザベスカラーまたは術後服を着用していただく必要があります。猫の去勢手術の場合は、術後服では術創をカバーできないためエリザベスカラーのみのご案内となります。

無事に術創が閉じ、抜糸が終わるまではエリザベスカラーや術後服は着けたまま過ごしましょう。

術創をなめてしまったり、犬や猫自身が抜糸をしてしまうと傷の治りに影響を及ぼし、最悪の場合には改めて全身麻酔をかけての処置が必要になることも考えられます。

退院翌日は病院からご様子確認のご連絡をいたします。ご自宅にお帰りになられてからのご様子や術創を気にしていないかなどについてお話を伺い、必要に応じて診察のご案内をいたします。術後3~4日程度は激しい運動は控えていただく必要がありますが、基本的にはいつもの通りの生活をしていただいて問題ありません。

特に問題なく過ごせているようでしたら、手術から10~14日後に再診察を行います。健康状態や術創の確認をさせていただき、術創に問題なければ抜糸を行います。

その他、手術や入院、退院後の管理に関してご不安な点などございましたら当院スタッフまでご相談ください。

まとめ|愛犬・愛猫に合った避妊手術を考えよう

避妊手術には、乳腺腫瘍をはじめとした病気の予防や、性行動・問題行動の軽減、望まれない妊娠を防ぐなど、さまざまなメリットがあります。一方で、全身麻酔のリスクや太りやすくなる可能性、将来子孫を残せなくなることなど、事前に知っておかなければならない点もあります。

また、避妊手術を行う適切な時期は、犬種や体格、成長の状態などによって異なります。「いつ手術を受けたらいい?」「うちの子は去勢した方がいい?」と迷われている場合は、まずは獣医師に相談してみましょう。

当院では、術前検査から手術、退院後の経過確認まで、その子の状態に合わせてサポートしています。手術や麻酔、術後の過ごし方など、気になることや不安なことがありましたら、お気軽にスタッフまでご相談ください。

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