飼育している犬や猫が突然倒れた!こんなときってどうすればいいの!?

一緒にお散歩をしていたら、突然倒れた!窓際に行ったら突然倒れた!というご家族の声を時々耳にします。

慌てずに対処できるように、常日頃からわが子の普通がどういう状態なのか知っておくことが重要です。

 

突然意識を失って倒れてしまう原因には様々な原因が複雑に関わっています。

低血糖、脱水、脳内の病気、心臓の病気、血流の異常、不整脈、血圧の異常、中毒、代謝の異常、腫瘍など、実に様々な原因が考えられます。

普段から、お家の子の持病や癖、何が普通なのか知っておくことが一番大事です。

 

倒れる原因は、脳自体の障害と脳以外の障害に分けられます。

脳自体の障害となるものには脳炎、脳腫瘍、脳梗塞など、脳以外の障害では血液成分の異常や心臓の疾患などがあります。脳自体の障害はMRI検査が必要になりますが、脳以外が原因の場合は血液検査や超音波検査などで診断できることが多いでしょう。

 

「倒れる」という単語には、失神と発作の二種類が含まれます。

 

失神とは?

突発的に倒れてしまう一時的な意識障害のことを「失神」と呼びます。

脳の活動にはグルコース(ブドウ糖)が必要ですが、幼齢の時期の体調不良による低血糖や糖尿病治療でインスリンを使用している動物でも低血糖を起こすことがあり、意識が消失して脱力状態になり失神してしまいます。

もう一つは、心臓や神経系の調節に異常がある場合です。腫瘍や心嚢水(詳しくはコチラ(心臓腫瘍 心タンポナーデ | 市川市・浦安市の動物病院『ALL動物病院行徳』皮膚科/眼科 (wizoo.co.jp))をご覧ください)によって心臓が物理的に圧迫されたり、不整脈、心筋梗塞や大血管の狭窄や心臓壁の欠損などによって心拍出量が低下し、脳への血流が少なくなる(脳虚血)の状態になると失神します。

心臓に異常がない場合、健康な動物でも十分に起こり得る失神もあります。これを神経調節性失神といいます。

これは様々な検査を行っても原因を特定できないことが多く、精神的なストレスや、恐怖、不安、痛み、激しすぎる運動などが原因とされています。これらのような原因で神経系のバランスが急激に傾くと脳への血流が減少して失神が起こります。

血圧を下げたり、不整脈のお薬を飲んでいる場合でも失神は起こることがあります。お薬の飲み始めや季節の変わり目で体調を崩しやすい時期には特に注意して観察してあげましょう。

 

発作とは?

一見同じ意味に聞こえがちな、失神と発作は実は全然違う症状を指します。

発作とは、てんかんで起こる全身性の痙攣や意識障害を主な症状のことです。てんかんというのは、病気の名前であり発作(てんかん発作)はてんかんの症状を意味します。

てんかんの発作には全身性の発作(大発作・全般性発作)や意識が消失しないままの軽度の発作(小発作・部分発作)など様々な症状がみられます。脳の神経細胞に勝手に電気が走ってしまうことによって起こります。

発作には予兆があったり、部分発作のあとに全般性発作が起こったり、また繰り返しおこったりします。

・落ち着きがなくなる。

・うろうろするのが止まらない。

・よだれをだらだら垂らす。

・口をくちゃくちゃする(チューイングガム発作)

・手足や顔の一部がピクピクする。

・全身をガタガタとけいれんする。

・のけぞって四肢を突っ張るような状態になる(後弓反張)

・手足をバタバタさせて止まらない。(遊泳運動)

・自分のしっぽを追いかけ続ける。etc,,,

同じ方向に回り続ける行動(旋回運動)と壁に向かって頭をつけてしまう(ヘッドプレッシング)行動が見られます。

 

これって発作なの?というような症状もありますね。

発作が起きると一時的に意識がなくなってしまうこともあり、思うように体が動かないため、飼い主さんがけがをしてしまうケースも少なくありません。容易に触ったり押さえつけたりするのはやめましょう。

発作は数秒~数分で治まり、何事もなかったかのように過ごすこともありますが、しばらくうろうろしたりもします。

ひどい症状になると、発作を短時間のうちに何度も起こしたり(群発発作)、発作が止まらない(重積発作)ということもあります。

全身がガタガタ振動するような発作は、筋肉の振動を伴うため体温の上昇が起きます。40℃以上の高熱が続くと脳や内臓のタンパク質が変性して死に至る場合や、回復しても後遺症が残ることもあります、いつもと違う!もうどうしたらいいかわからない!というときは、動物病院へ連絡しましょう。

てんかん発作は脳の神経細胞に勝手に電気が走ってしまうという過剰な興奮によって起こります。この影響が脳に損傷をもたらすと言われています。

脳の虚血や発作による損傷は、さらに症状を悪化させるだけでなく、さらに発作が起こりやすくなったり後遺症が残ったり生活の質(QOL)も悪くなってきます。

症状がひどくなる前に動物病院に受診するようにしてください。

 

診断と治療

失神もてんかんも診断には検査が必要です。

歩く様子や反射などの神経学的検査、血液検査、心機能の検査、MRI検査などが挙げられます。

治療は原因によって異なりますので、全身的な検査をしっかりと行い診断をつけてから治療を進めていくようにしましょう。

 

おすすめは動画を撮って日記をつけること!

発作や失神の頻度はその子その子によって異なり、症状も様々です。

病院に行こうと思ったら治まっていたり、前回いつ起こったか忘れてしまったりしていることも多いでしょう。

獣医師側の立場でも、いつどういう状況で起こったのかという情報はとても重要ですし、とてもありがたいものになります。

可能な限りでいいので、情報をメモしておくイメージで日記をつけておくと、どんな時に症状が出るのか気づくことができるきっかけができます。

日記の一例です。日時と天気などの状況、普段との違いなど気になることはメモでまとめておきましょう。

気持ちと状況に余裕がある場合は、動画を保存しましょう。

動物病院へ行った際に先生に診てもらうと、言葉よりもうまく伝えることができる有用なツールになります。

 

すぐに動物病院へ行かないといけない症状!

失神や発作が、一回きりで落ち着いている場合は、緊急的に治療を受ける必要はないことが多いです。

しかし、緊急を要する場合もあります。

息をしていない、苦しそう。

舌が青かったり白い。

意識が全くない。

呼びかけても反応がない。

発作や失神が10分以上続く。(いつもより長く止まりそうにない)etc…

 

緊急薬を常備されている飼い主様もいらっしゃいますが、それだけでは絶対安心とは限らず、注意が必要です。

上記のような症状がみられる場合は、速やかに病院へ連絡しましょう。

この記事を書いた人

荻野 直孝(獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。