【動物病院が教える】命に関わることもある犬のフィラリア症とは?症状や予防について解説します

春は予防シーズン!「”しっかり予防しましょう”って言われるけど、実際そんなに重要なの?」と思ったことはありませんか?「いつからいつまで予防すればいいの?」「もし感染していたら?」今回は犬のフィラリア症の原因や症状、治療、予防について詳しく解説します。

\この記事を書いた人/
伊川(愛玩動物看護師)

伊川(愛玩動物看護師)

物心つく頃には動物に触れ合うことが多く、将来の夢は動物関連の仕事に就くことだった。看護師として外科の勉強や、当院をみなさまに周知してもらえるようHP等の内容を充実させることに奮闘中。また、シニア猫との暮らしの経験からシニアになってもより良い生活をできるようお手伝いしております。フェレット大好き、フェレット仲間募集中!

犬のフィラリア症とは?

フィラリア症とは、犬糸状虫(フィラリア)という寄生虫が蚊を媒介にして感染する寄生虫症です。

フィラリアは蠕虫線虫類に分類される内部寄生虫で、犬を含むイヌ科動物を好適宿主(生活や発育がしやすい)とし、犬以外に猫や人にも感染します。かかりやすい犬種というのは特にありませんが、蚊の多い温かい地域や屋外飼育では発症率が高い傾向にあります。

フィラリアの感染経路

フィラリアの寿命は成虫で5~6年、幼虫で1~2年と言われています。大まかに5つのステップを踏んで寄生します。

  • ①蚊が血を吸う
  • フィラリアに感染している犬の血を蚊が吸血し、血液中にいる幼虫(ミクロフィラリア)が一緒に吸い込まれる

 

  • ②蚊の体内で育つ
  • ミクロフィラリアは蚊のお腹の中で約2週間かけて、感染力を持つ幼虫(L3期幼虫)に成長します。

 

  • ③蚊が他の犬の血を吸う
  • 感染力を有したL3期幼虫を宿す蚊が非感染の犬を吸血する際に、L3期幼虫が皮膚から体の中に入り込みます。

 

  • ④犬の体内で寄生し成長
  • 皮膚の下や筋肉の中で約2週間かけて、体内移行幼虫(L4期幼虫)に育ちます。この段階では症状はほとんどありません。

 

  • ⑤血管に侵入し心臓や肺静脈へ移動する
  • L4期幼虫がさらに脱皮してL5期幼虫になると血管に入り込み、心臓と肺を繋ぐ肺動脈内に寄生して成虫に育ちます。感染後約6~7ヵ月で成熟した成虫は30cm程の大きさになり、多数の幼虫を産み増殖、心臓や肺に大きなダメージを与えます。

犬のフィラリア症の症状は?

感染初期には無症状の場合が多く、進行すると心機能の低下に伴い以下のような症状がみられることがあります。

  • ・咳
  • ・疲れやすい(運動不耐性)
  • ・呼吸困難
  • ・体が浮腫む
  • ・腹水や胸水が溜まる

末期になると筋肉量が減り痩せていき、体はさらに弱ってしまい亡くなることがあります。

多くのフィラリアが短期間に肺動脈から右心室・右心房・大静脈に移動した場合、「大静脈症候群」と呼ばれる急性症状を呈します。黄褐色〜コーヒー色の尿症状が現れ、ショック状態となり、呼吸困難、可視粘膜の蒼白、虚脱などの症状を起こし、突然死することがあります。

心臓の構造や機能についてはこちらで詳しく解説しています。

心臓の構造と働き

関連記事

心臓の構造と働き

犬のフィラリア症の治療は?

内科的治療と外科的治療

  • 内科的治療
  • ミクロフィラリアに対してはフィラリア予防薬にも使用されるイベルメクチン系やミルベマイシン系の製剤、成虫に対してはヒ素化合物製剤といった駆虫薬が用いられます。

 

  • 外科的治療
  • 「大静脈症候群」で緊急的な処置を必要とする場合や、大量に寄生されている場合には摘出手術が実施されることがあります。しかしフィラリア症の発症により一般状態の低下や心肺機能の負担がかかっていることも多く、麻酔リスクや手術自体の難しさから適応制限があります。

なぜ予防が重要なのか?

フィラリア症の治療には時間がかかってしまったり身体への負担が大きいこともあるため、そもそも寄生させないことがとても重要です。

感染後成虫にまで成長した場合、薬で駆除をすると血管内に死骸が詰まり、肺静脈の状態によっては重度の循環器不全に陥ってしまいかねません。また、死滅した虫体から異物が血管内に放出されることで激しいアレルギー症状(アナフィラキシーショック)を起こすなど、死亡のリスクを伴います。

役立つ情報を更新中!
ぜひフォローしてください!

スタッフが答えます!
いきなり質問シリーズ

スタッフが答えます! いきなり質問シリーズ

皆さんもぜひ
お家でチャレンジ!

皆さんもぜひ お家でチャレンジ!

動物に関する情報発信中

動物に関する情報発信中

実際の手術症例を紹介

実際の手術症例を紹介

動物病院の裏側披露

動物病院の裏側披露

スタッフの
こんなおちゃめな姿も!?

スタッフの こんなおちゃめな姿も!?

スタッフが答えます!
いきなり質問シリーズ

スタッフが答えます! いきなり質問シリーズ

皆さんもぜひ
お家でチャレンジ!

皆さんもぜひ お家でチャレンジ!

動物に関する情報発信中

動物に関する情報発信中

実際の手術症例を紹介

実際の手術症例を紹介

動物病院の裏側披露

動物病院の裏側披露

スタッフの
こんなおちゃめな姿も!?

スタッフの こんなおちゃめな姿も!?

\ Follow Us /

INSTAGRAM 早速インスタグラムを見る

フィラリア予防薬ってどんなもの

実はフィラリア「予防薬」と名がついていますが、蚊やフィラリアそのものを寄せ付けない薬ではなく、ミクロフィラリアを「駆虫」する薬です。

蚊の吸血によって皮下から侵入したミクロフィラリアは、体内で約50~70日かけて脱皮を繰り返し体内移行幼虫(L4期幼虫)に成長します。予防薬に含まれる成分は、このL4期幼虫を駆虫することができます。

薬の効果が1ヶ月持続するのではなく、約1ヶ月前に感染したミクロフィラリアを駆虫するために毎月服用する必要があるのです。

フィラリア予防の期間

予防期間は地域によって異なり、千葉県および周辺エリアでは4月から12月までの9か月間予防を推奨しています。

前述したように予防薬の使用はL4期幼虫の駆虫が目的です。

蚊が発生する1ヵ月後~発生終了の1ヵ月後までの期間に予防していることが重要ですので、忘れずに毎月予防しましょう!

フィラリア検査

フィラリア予防薬を使用する春の初めには、感染がないかどうか検査しましょう。

万が一冬の間に成虫に成長し繁殖して生まれた幼虫が体内にいる場合、そのまま予防薬を使用すると一度に大量の幼虫が死滅してショック症状を起こし、最悪の場合死に至ることがあります。通年で予防をしていても年に1度は検査を実施しましょう。

もし投薬を忘れてしまったら…

原則は引き続き投薬を続けます。

投薬をしていない期間に感染してしまったかどうかはすぐに検査しても分かりません。フィラリア検査は感染後に成虫となったフィラリアが産出した幼虫を検出する検査のため、感染から半年以上経過していないと感染しているか判断できないのです。投薬の判断が難しい場合やご不安な場合はいつでもご連絡ください。

完全室内飼育でも予防は必要?

「完全室内飼育なら予防はいらないのでは…」なんて思っていませんか?室内に蚊が入ってくることを完全に防ぐことは難しく、いかに蚊に刺されないよう工夫をされていたとしても、100%防げる保証はありません。

フィラリア症は命に関わる病気ですので、しっかり予防してあげましょう。

なお、フィラリア症の専門学会である「American Heartworm Society」では、通年での予防を推奨しています。

フィラリア予防薬の種類

予防薬には「内服薬」と「スポット」の2種類があります。

  • 内服薬
  • 錠剤タイプとチュアブルタイプがあり、同時にノミやマダニ、消化管内寄生虫等も予防できるオールインワンのものがお勧めです。錠剤タイプは食物アレルギーがある子やお腹が弱い子、普段おやつを食べない子にも好物に包んで与えることができます。チュアブルタイプはご飯が大好きな子やジャーキーといったおやつが好きな子に、おいしく投薬できてお勧めです。どちらも1ヵ月に1回投与が必要です。

 

  • スポットタイプ
  • 首~背中の皮膚に滴下する液体の予防薬です。経口での投薬が苦手な子でも簡単に使用することが出来ます。1か月に1回塗布が必要です。

他にも注射タイプの予防薬があります。1年間効果が持続しますが、副作用が強く表れるケースもあるため、当院では取り扱っておりません。

また、コリー種は一部の予防薬に含まれる成分によって神経症状などの副作用が出るリスクが高い犬種ですが、通常フィラリア予防で使用される場合にはごく低用量であり、問題なく使用できることがほとんどです。

コリー種に限らず、おうちの子に合った予防薬を選択し、不安があれば獣医師と相談して使用しましょう。

まとめ|犬のフィラリア症は予防できる!

フィラリア症はかつては犬の死亡原因第1位に君臨していたとても恐ろしい病気です。昨今では予防をしっかり実施してくださるご家族が増え、フィラリア症による犬の死亡率は以前より減少しました。しかし、温暖化の影響で蚊の出現期間は年々長くなり、フィラリア感染のリスクは常に身近にあります。気づかないうちに感染し、重症化して手遅れになる可能性も決して少なくありません。

犬のフィラリア症は適切に予防をすれば感染リスクを大幅に下げることができます。

しっかり予防をして大切な愛犬を守りましょう!気になる症状がある、お薬や投薬のご相談はお気軽に病院までご相談ください。

記事一覧に戻る