耳がパンパン?知っておきたい犬猫の耳血腫


南(獣医師 外科部長)
日本獣医がん学会、日本獣医麻酔外科学会に所属し外科部長として多くの手術症例を担当。犬猫からよく好かれ診察を楽しみにして来てくれることも多く、診察しながらずっとモフモフして癒してもらっていることも。見かけによらず大食漢でカップ焼きそばのペヤングが好き。1児の父であり猫と一緒に暮らしている。
耳血腫とは
耳血腫は、耳介(じかい)軟骨と皮膚の間に血液が溜まり、腫れを引き起こす疾患です。
耳介とは耳の外側にある部分で、薄い皮膚と軟骨からなる繊細な構造をしています。この耳介の内部には多数の細い血管が走っており、何らかの刺激によってこれらの血管が破れると、血液が内部に貯留し、腫れや膨張が生じます。
症状は軽度の場合、触らないと気づかないようなわずか数mm程の膨らみから、耳介全体がパンパンに膨れ上がるような重度のものまで様々です。

耳血腫の原因について
耳血腫は、さまざまな要因によって耳の中の血管が傷つき、血液がたまることで起こります。以下に主な原因をご紹介します。

外耳炎からの進行
最も多い原因は外耳炎です。
耳ダニや細菌・真菌の感染、またはアレルギーやアトピーなどが引き金となって、耳の中で炎症が起こります。強い痒みが生じるため、犬や猫は頭を振ったり、耳をこすったり、掻くなどの行動をとります。これにより、耳介の内部の血管が損傷し、耳血腫ができてしまいます。耳の疾患についてはこちらもご覧下さい。
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外傷による発症
転倒や衝突、ドアに挟まれるなどの物理的な衝撃によって耳介内の血管が傷つき出血することがあります。また、他の動物との喧嘩で噛まれたり、引っかかれたりすることも耳血腫の原因になります。

耳血腫の症状と気を付けたいポイント
初期の段階では、かゆみや熱っぽさ、痛みを感じることが多く、耳を触られるのを嫌がるようになります。
早期に発見するためには、日頃から耳の様子をこまめにチェックすることがとても大切です。
耳を優しく触って、熱っぽさや腫れ、ぷよぷよとしたふくらみがないか確認してみましょう。
血液が溜まると、症状は徐々に進行していきます。頭を振ったり、耳を掻いたりすると、さらに刺激が加わり、血液の溜まり方もひどくなってしまいます。進行すると耳介はどんどん膨らみ、重みで垂れ下がることもあります。触ると熱感やブヨブヨした水分の貯留感を確認できるようになります。
耳血腫自体は命に関わる病気ではありませんが、痛みや不快感が長く続くため、放置すると動物に長期的な苦痛をもたらします。
自然に治ることもありますが、治癒には時間がかかり、最終的に耳はしわしわに縮んで硬くなり、変形してしまうことがあります。これは柔道やボクシング選手の耳のように変形する「カリフラワーイヤー」と呼ばれる状態です。
また、耳血腫になりやすい犬種や猫種にも特徴があります。以下のような子は特に注意が必要です。
- ・大型犬(耳が大きく、振る力も強いため)
- ・垂れ耳の犬種(耳の中が蒸れやすく、細菌が繁殖しやすい)
- ・耳の中に毛が生えている犬種
- ・軟骨異常のある猫種

具体的な犬種、猫種には以下が挙げられます。
- ラブラドール・レトリーバー
- ゴールデン・レトリーバー
- コッカー・スパニエル
- アメリカンカール
- スコティッシュフォールド など
また、夏場は細菌やマラセチアなどの真菌が増殖しやすいため、発症リスクも高くなる傾向があります。

耳血腫の診断と治療方法
耳血腫の診断
耳血腫は耳の中に液体(主に血液)がたまって腫れているため、動物病院ご家族も気づきやすく、での視診や触診(見たり触ったりする検査)でわかることがほとんどです。耳が膨らんでいたり、重みで垂れ下がっているのが特徴です。
耳血腫の治療方法
まずは、耳血腫の原因となる外耳炎や寄生虫感染などの治療を行います。併せて耳にたまった液体を針で抜き取る処置を行います。
一般的には全身麻酔の必要なく、外来での対応が可能です。

しかし、液体は数日で再び貯留することが多く、治療には1~3カ月ほどかかることが一般的です。再発防止のため、以下のような対策も併用します。
- ・耳に包帯を巻いて患部を圧迫する
- ・抗生剤やステロイド剤の内服や注射
- ・インターフェロンなどの薬剤を耳に直接注入する
何らかの理由で抜去ができない、処置後の経過が思わしくない、頻繁に通院できない、耳の形状をできるだけ正常に保ちたいという場合は全身麻酔下での外科的治療を行うこともあります。この治療では、耳介の皮膚を切開して貯留液を排出し、袋状の空間ができないように耳の内側を縫い合わせます。
発症から時間が経過すると、本来の耳の形状を保持することは難しくなります。
外耳炎が原因となるケースが多いため、日頃からの耳の観察が最重要となります。日頃から耳垢の量や色、耳の臭いをチェックし、異常がみられた場合は早めにかかりつけの獣医師の診察を受けましょう。

まとめ
耳血腫の症状に気づいたら、放置せず、できるだけ早く動物病院に相談しましょう。
この病気を放っておくと、犬や猫に強い痛みや不快感を与えるだけでなく、耳が変形したまま元に戻らなくなることがあります。さらに、炎症や感染が悪化し、治療が長引いてしまうケースも少なくありません。
たとえば、以下のような様子が見られたら、「たいしたことない」と自己判断せず、軽症のうちに受診することが大切です。
- ・耳をしきりにかく
- ・頭を何度も振る
- ・耳を触ると痛がる、嫌がる
耳血腫が疑われる場合は、まずは獣医師に相談し、今後の治療方針や注意点についてしっかりと説明を受けましょう。早めの対応が、耳の健康と快適な生活を守ることにつながります。