【皮膚科認定医監修】犬や猫の「脱毛」について解説します

犬や猫の毛が抜けることは自然なことではありますが、ご家族の中には「最近毛がよく抜ける気がする」「地肌が見えているけど大丈夫かな」と思われている方もいるかもしれません。

今回は犬や猫における「脱毛」について、正常な生理現象と病気が原因の脱毛について解説します。

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石井 (ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)

石井 (ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)

皮膚疾患に悩むご家族をはじめ、ご来院のみなさまにご相談していただきやすいような雰囲気づくりに努め二人三脚での治療をしています。2児の父で特に好きな犬種はプードル。日頃の運動不足解消のため暑さ寒さに負けず自転車通勤している。

脱毛とは

動物では「脱毛=被毛が自然に、あるいは病的に抜け落ちてしまうこと」を示します。

ヒトでは「脱毛=体毛を意図的に除去すること(美容目的など)」という意味で使われることが多く、同じ「脱毛」という言葉でもヒトと動物で使い方によって少し意味が違います。

正常な脱毛

  • 〈特徴〉
  • ・毛は抜けるが地肌は見えることは多くない
  • ・痒みや赤みなどの皮膚トラブルがない
  • ・しばらくすると毛が生えてくる

代表的は正常な脱毛には「換毛期」と「加齢」があります。

換毛期

犬や猫には「換毛期」と呼ばれる毛の生え変わる時期があります。日本のように四季がある環境では、おおよそ春と秋の年2回起こり、これは気温や日照時間の変化に対応するための自然な現象とされています。詳しくはこちらもあわせてご参照ください。

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加齢

加齢に伴い、新陳代謝が落ち、毛の生え変わるスピードや伸びるスピードが落ちることによって薄毛になったり、毛の色が淡くなったりすることがあります。

明らかに地肌が見えている場合には病気が隠れている可能性があるため注意に必要です。

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病的な脱毛

  • 〈特徴〉
  • ・ふけ、かさぶた、赤みなどの皮膚トラブルがある
  • ・痒みを伴う
  • ・地肌の露出
  • ・不均一など脱毛、特定の部位の脱毛

上記の特徴を伴う代表的な原因を解説します。

感染症

皮膚の表面には常在菌という細菌や酵母様真菌などが存在します。常在菌は皮膚の恒常性を保っておりますが、免疫力の低下などをきっかけに異常繁殖することで皮膚トラブルを引き起こし、脱毛を生じます。

代表的な病気として、細菌が関連するものを膿皮症、酵母様真菌が関連するものをマラセチア皮膚炎、糸状菌が関連するものを皮膚糸状菌症、毛包虫が関連するものを毛包虫症といいます。

犬の膿皮症
犬のマラセチア皮膚炎
猫の皮膚糸状菌症
犬の毛包虫症

皮膚の感染症については以下の記事で詳しく解説しています。

膿皮症

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マラセチア皮膚炎

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皮膚糸状菌症

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毛包虫症

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外部寄生虫

外部寄生虫はお散歩中に感染、もしくは感染動物との接触により感染を起こし痒み、脱毛を起こします。

代表的な外部寄生虫はノミ、疥癬、ツメダニであり、脱毛の部位としてはノミが腰部、疥癬が肘や膝や耳輪部、ツメダニが背部を中心とします。

猫のノミ寄生
犬の疥癬寄生

さらにツメダニ寄生はフケを特徴としており、肉眼でも見つけることができるため「歩くフケ」とも呼ばれています。

犬のツメダニ寄生

アレルギー

アレルギーは痒みを呈し、描き壊したり、舐めたりすることにより脱毛を起こします。

また、皮膚のコンディションが低下することにより毛が抜けやすくなり、発毛もしにくくなる上に、感染症も併発することもあります。脱毛しやすい部位は眼周り、口周り、耳、脇、内股などであり、脱毛が広範囲にわたることもあります。

犬のアトピー性皮膚炎

代表的なアレルギーは花粉やハウスダストなどがアレルゲンとなるアトピー性皮膚炎、食べ物がアレルゲンとなる食物アレルギーがあります。詳しくはこちらもあわせてご参照ください。

【皮膚科認定医解説】犬のアトピー性皮膚炎とは?原因や症状、治療方法について解説します

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猫の過敏性皮膚炎(アトピー性皮膚炎)

内分泌疾患(ホルモン疾患)

内分泌疾患は体内のホルモン分泌の不足・過多により体幹部の左右対称性の脱毛を引き起こし、中高齢の犬でしばしば認められ、通常痒みを伴いません。

代表的な内分泌疾患は、甲状腺ホルモンが関連する甲状腺機能低下症、副腎皮質ホルモンが関連する副腎皮質機能亢進症、未去勢・未避妊の犬猫で発生する性ホルモン失調があリます。

犬の副腎皮質機能亢進症

甲状腺機能低下症は体幹部の左右対称性の脱毛の他に尾部、鼻梁部の脱毛、副腎皮質機能亢進症は皮膚の菲薄化、石灰沈着(皮膚が硬くなる)、性ホルモン失調は大腿部尾側、頚部の脱毛などが特徴です。

内分泌疾患については以下の記事で詳しく解説しています。

犬のクッシング症候群 症状と原因、治療方法について解説します。

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犬の毛つやが悪くなってきた、毛がよく抜ける、食欲はかわらないのに太ってきた。それ甲状腺機能低下症かもしれません。

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犬の甲状腺機能低下症

遺伝性が疑われる疾患

遺伝性が疑われる病気での脱毛は犬種、部位、脱毛する毛色などに特徴があり、痒みを伴いません。

代表的な疾患としてはアロペシアX、パターン脱毛症、淡色被毛脱毛症(カラーダイリューション脱毛症)、黒色被毛形成異常症です。

「アロペシアX」は原因不明の脱毛症であり、ポメラニアンに多く認めます。近年ではポメラニアン以外にもプードルやシベリアン・ハスキーなどでも認められ、大腿部尾側や肩甲間から始まり頭部と四肢端の毛以外は脱毛するのが特徴です。

犬のアロペシアX

「パターン脱毛症」はミニチュアダックスフントなどの耳、頚部、腹部など特定の部位での脱毛を認めます。

「淡色被毛脱毛症(カラーダイリューション脱毛症)」はブルーやフォーンなどといった淡色の毛だけが脱毛し、ドーベルマン・ピンシャー、ミニチュア・ピンシャーなどで認められます。

「黒色被毛形成異常症」は黒色の毛のみ脱毛する疾患でミニチュアダックスフント、チワワなどをはじめとする比較的多くの犬種で認めます。

犬の淡色被毛脱毛症(カラーダイリューション脱毛症)

ストレス

ストレスで舐めてしまうことにより脱毛が見られることもあります。ストレスには精神的と身体的があり、精神的ストレスは環境の変化などで生じ、身体的ストレスは痛みなどで生じます。

赤みやフケなどの皮膚トラブルが生じることは少なく、片側性であることも特徴です。

犬の身体的ストレスによる脱毛

その他の要因

手術の際にバリカンをかけた部分の毛が生えてこない、サマーカットしたら毛が生えてこないことを「剪毛後脱毛症」と言います。はっきりとした原因は不明ですが、毛に対する血流障害とも言われています。

犬の剪毛後脱毛症

またステロイドを基材とした軟膏などを長期間にわたり塗っていると毛が薄くなり脱毛してくることをステロイド皮膚症といいます。

犬のステロイド皮膚症

検査・診断

脱毛の原因を調べるにはいくつかの検査が必要であり、検査を絞り込むにはいつから脱毛しているのか、痒みはあるのかなどご家族からの情報が不可欠です。

皮膚科検査

皮膚押捺塗沫検査:炎症の程度や細菌、マラセチアの有無などを確認します

皮膚掻爬検査:外部寄生虫や糸状菌の有無などを確認します

毛検査:毛包虫、糸状菌の有無や被毛の状態などを確認します

ウッド灯検査:糸状菌の有無を確認します

血液検査や画像検査

ホルモン検査を含む血液検査、レントゲン検査や超音波検査などの画像検査をすることにより全身状態の把握を行います。

皮膚生検 皮膚病理検査

皮膚病変の一部を採取し、組織や細胞を確認します。

アレルギー関連検査

除去食試験やアレルギー検査によるアレルゲンの特定を行います。

詳しくはこちらもあわせてご参照ください。

皮膚の検査

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まとめ|脱毛とは?

毛が抜けると言っても生理現象から病気が隠れていることまでさまざまです。

脱毛は見た目の変化だけでなく、体の内側の不調を知らせるサインとなることもあります。

病的な脱毛を早期に気づくことにより病気の早期発見につながり、脱毛の進行を防ぐことが可能です。

少しでも異変に気づいた際にはお早めに動物病院を受診しましょう。

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